人事は日本型雇用を守りたいのか@『Works』No.136
リクルートワークス研究所から『Works』No.136 をお送りいただきました。丸ごと同研究所のサイトにアップされています。
http://www.works-i.com/publication/works/backnumber/w_136
前に132号で「シリーズ雇用再興」の第1弾目「日本型雇用によって失われたもの」では、わたくしも登場しておりますが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/works132-ae94.html (リクルート『Works』132号は日本型雇用特集)
今回は架空の人事リーダーとWorks編集部、有識者の対話で進行するという設定で、「気鋭の労働法学者」として登場するのは大内伸哉さんです。
そのまとめで、編集長の石原直子さんが語っている言葉はなかなか重いものがあります。
本誌132号の「シリーズ雇用再興」第1回から第2回の今号まで8カ月。その間にも日本を代表する大企業による不正やそれに端を発した組織再編のニュースは、続々と流れてきた。そのなかで不正にかかわってしまった人々のことを思う。おそらくほとんどの人は、私利私欲のためではなく「会社を守る」ために動いていたはずだ。だが、「会社」のためにやってきたことは、「社会」からは到底許されないことであったし、結果として会社を傷つけることになった。また、自らも傷つき、大きな代償を支払った人も少なくないだろう。
「企業は社会の公器」と言われるにもかかわらず、「会社を想う」ことと「社会を想う」ことがこんなにも両立しないのはなぜなのか。ここでも、会社と個人をあまりにも分かちがたく結びつけてしまう日本型雇用というシステムのなかで、何かが歪められていると感じずにはいられない。
このシリーズはまだ続けるようで、
・・・シリーズの第3回では、改めて、雇用の安定に代わるライフセキュリティの可能性を、探索する。
だそうです。
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前号に引き続き大変読み応えのあるリクルートワークスさん発行の秀逸な特集記事です。圧巻は人事リーダー30人が集まって実施されたワークショップ…。以下、いくつか気になった見出しやワーディングを引用しますー「もっと自由に働きたい個人は本当に増えているのか?…個人はどのような働き方、生き方を希求しているのか?…自分で自分の人生をハンドリングしたい個人…社会の先端の「変な人」が確実に増えている…喜んで地方に行く優秀な人たち…「自由に働きたい個人」を企業はマネジメントできるのか?…多様性を守るのか質を守るのか…自律した大人であれば厳密な管理は必要ない…多様な個人を誰がどのように評価するのか?…市場性によって給与を決定、相対評価はしない…多様な働き方を許容することで日本的なよさが失われないか?社員の自律性を削ぐのは手厚い保護…会社とは何か?会社と個人が約束すべきことは…会社というバーチャルモンスターにしばられない…新しい人事のありようとは。それは実現できるのか?…人事制度をなくす。人をゆるやかに囲む…働く個人の代表としての人事リーダーへの期待…会社の人間である前に一人の働く個人として…」
最後に、標題の「人事は日本型雇用を守りたいのか?」という大きな問いに戻って引用者なりに今回のディスカッションによる集合知を表現するとすれば「本音はノー。守らずに済むのであれば。特に個人の立場としては…。その一方で、人事管理という現実的な観点からは、有効な代替案が見つかるまでの当面の間は現行の集団的人事管理の仕組みを手放すわけにはいきませんね…」といったところでしょうか。
投稿: 海上周也 | 2016年6月15日 (水) 06時04分