マタハラの正味の真水部分
本日、労政審雇用均等分科会に育児・介護休業法その他の関係の省令やら指針やらの案が諮問されましたが、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000128636.html
その「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針案要綱」というのをみると、本ブログで何回か取り上げてきた、解雇でもなければ不利益取扱いでもない純粋のマタニティ・ハラスメントの正味の真水部分がどういうものであるのかが書かれています。
いうまでもなく、1985年の男女雇用機会均等法で妊娠を理由とする解雇は禁止され、2006年の均等法改正で妊娠を理由とする不利益取扱いも禁止されているのですから、それらは今回の改正で初めて規制の対象となったところのマタハラじゃない。
いや、ものごとを知らないマスコミがそれらをマタハラ、マタハラと口々に呼ばわるのは別に構いませんが、一国の法体系の秩序を守る観点からすると、「妊娠したからクビだ!」ってのを、マタハラと言ってはいけない。それでは、個別労働紛争は全て、解雇事案も労働条件の切り下げ事案もことごとくパワハラで済んでしまう。さすがにそれはまずいでせう。
というわけで、この指針案をみていくと、正味のマタハラというのは「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があって、その典型例は、「解雇その他不利益な取扱いを示唆」することのようです。なるほど、示唆!確かに示唆は示唆であって、解雇でもなければ不利益取扱いそれ自体でもない。
具体的にはどんなのでしょうね。
「課長、私妊娠したんですけど」
「おやおや、それではキミがいつまでうちの会社にいられるかボクにも分からないねえ」
みたいな会話でしょうか。
これにあわせて、育児休業をとることに対する嫌がらせ(「イクハラ」とでもいいますか)も育児介護休業の指針の改正に入っています。
あとそれから、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針の一部を改正する告示案要綱(案)」というのをみると、なぜかLGBTの話も出てきます。
被害を受けた者の 性的指向または性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となることを明記すること。
いや、相手が誰であれセクハラがセクハラであるのは当然だと思いますが。
何でこんなのが入っているのかというとですな、も一つ資料がついていて、
ここに、パブコメに対する意見が載ってて、これを見ると、LGBTに対するいじめ・嫌がらせをセクハラに入れろという意見があったようです。
いやさすがにそれは無理でしょ。セクハラはセクシュアルな嫌がらせだからセクハラなんであってね。「このお釜野郎がぁ!」とか「おねえはやだねえ」みたいなのは、LGBTハラスメントではあっても、セクシュアルなハラスメントではない。一国の法体系の秩序を守る観点からすると、それまず名を正さんか。
(追記)
で、なぜか新聞報道にかかるとこれが、
http://mainichi.jp/articles/20160628/k00/00m/040/038000c(厚労省 LGBT差別はセクハラ 指針改正し明記)
厚生労働省は27日、労働政策審議会の分科会を開き、職場での性的少数者(LGBTなど)への差別的な言動がセクハラに当たることを、男女雇用機会均等法に基づく事業主向けの「セクハラ指針」に明記することを決めた。LGBTへの偏見や差別をなくし、働きやすい環境をつくるのが狙い。来年1月に施行する。
という風になっちゃってるんですが、いやどういうやりとりがあったかは分かりませんが、アップされている資料の指針案を見る限り、
被害を受けた者の 性的指向または性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となることを明記すること。
というのは、相手がレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー等であっても、セクシュアルな行為をしたり雰囲気を作ったりしたら、セクハラはセクハラだよ、と言っているだけです。例えばこんなのでしょうか。
「なんやお前、女のくせに男みたいなカッコして。男やいうならこうしてもええやろ」
と胸をわしづかみにする
「課長、何をするんですか、セクハラです」
「あほ、セクハラいうのは女にこうするこっちゃ、お前女やないんやろ、心は男ですいうてるやないか、ほんでどこがセクハラやいうねん」
これに対し、その性質がセクシュアルでない差別やハラスメントが突然変異を起こしてセクハラになるなんてことを言っているわけではないように読めます。
こっちは上のマタハラとは逆に、セクハラじゃない正味の真水のLGBT差別部分というのがこの指針の文言上は明確に対象外であるにも関わらず、なぜか新聞記者の脳内ではごっちゃになってしまっているようです。
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