『労働調査』5月号
労働調査協議会の『労働調査』5月号は「アジアにおける最近の労働事情」が特集です。
http://www.rochokyo.gr.jp/html/2016bn.html#5
1.最近の中国における労働事情-「個別的」労使関係から「集団的」労使関係へ-石井知章(明治大学商学部・教授)
2.変化する中国の産業構造と労働市場-深刻化する労働供給制約の克服への課題-厳善平(同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科・教授)
3.韓国の非正規労働者対策と労働運動 呉学殊((独)労働政策研究・研修機構・主任研究員)
4.アセアン経済共同体とベトナムの労働運動 香川孝三(大阪女学院大学・教授)
5.労働力大国インドの行方?改革と現実 木曽順子(フェリス女学院大学国際交流学部・教授)
JILPTの呉学殊さんが韓国の非正規問題など興味深い記事が並んでいますが、ここではやはり石井知章さんの中国論を。なにしろ、「「個別的」労使関係から「集団的」労使関係へ」という大変興味をそそるサブタイトルがついています。
短い文章ですが、とりわけ最後の「おわりに」の次の二つのパラグラフは、中国労働問題の研究者としての石井さんの思いが凝縮されているように感じられます。
・・・たしかに、「労働契約法」の実施が「集団的」労使関係の構築、および規制に関しての前提条件となり、中国において重要な法的・制度的枠組みを築いたのは事実である。現在、ネット上での連帯は、既に「工会」という組織を必要とせずに「集団的」行為を可能ならしめているものの、他方、習近平体制は、「和偕社会」という名目で、労使関係の敵対的性格を隠そうとする傾向を強めている。しかも、さまざまな使用者団体の設立など資本側には「結社の自由」が大幅に認められているものの、他方、労働側には官製工会たる中華全国総工会による独占的な「団結権」のみが許され、それ以外の労働者集団に対する「結社の自由」は認められていない。
だが、ビジネスや産業に関与する「市民的結社」で小さな仕事の経験を積む中で、やがて大きな仕事を共同で遂行する能力を身につけたとき、「市民的結社」は「政治的結社」の活動を容易にする一方、逆に「政治的結社」がこうした「市民的結社」を発展させ、完成させる可能性を持ちうる。その際、最大の鍵は、資本側と労働側とを問わず、「市民的結社」の経験を積んでいき、そのことが政府に承認された結果、自立的な「政治的結社」としての政治性がこの「市民的結社」に付与されるか否かにある。したがって、「外部」からの行政的働きかけが、「上から」の国家権力を媒介としながらも、現行法に基づく「合法的」なものとして、労働者による「政治的結社」を果たしてどこまで正当化できるかが問われている。
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