最賃の地域間格差
一昨日、東大公共政策大学院の講義で賃金処遇法政策を取り上げ、最賃と同一労働同一賃金という二つの大きな話をしたわけですがそのうち最賃について、10年前の第一次安倍内閣以来の最賃大幅引き上げ政策で、10年前は東京と沖縄は約100円の差だったのが、今では約200円の差になっているという話をしました。
大幅引上げと言っても、Aクラスではより大幅に、Bクラス、Cクラス、Dクラスとなるにつれて(もちろんかつてに比べればべらぼうに大幅ですが)より小幅になってくるので、結果的に地域最賃の地域間格差が拡大してくるのです。
先日の「ニッポン一億総活躍プラン」で、年3%をメドに全国加重平均1000円を目指すと書かれているので、ではその通り毎年3%ずつ挙げていくと何年にいくらになるのかを、各クラスの代表都県と全国加重平均で素朴な計算をしてみたのが次の表です。
素朴というのは、単純に2015年の数字に1.03を掛けていっただけだからで、数字自体にこだわらずに全体の傾向を見てください。
全国平均で1000円を突破するのは2023年で、最低の沖縄が1000円に達するのは2028年です。
その年の東京は1332円で、沖縄の1018円とは300円以上の差がついています。
この数字がどれだけリアルかどうかを考えると、大企業が多くてお金が溢れている東京の方がまだあり得て、地方がこのペースで上がっていくと地場の中小零細企業が耐えられないだろうと考えると、実際にはもっと格差がつく可能性すらあります。
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最低賃金に見合う仕事があるといいなぁ。
投稿: ちょ | 2016年6月10日 (金) 21時51分
この種の議論にへばりついた(失礼しました)日本社会に存在する各種の格差を、科学界にはびこる仮説を成立させるためのようなチャンピオンデータ利用のごとく外的にはある都合のよい抽出された先進国並にと、内的には所得総額と快適性に便益を集約してしまい本来会計上相殺されるべき各リビングコストと拘束時間の人間の減価償却的な差損を見える化し比較してはじめて冷静な議論につながるものと思います。そうした巨視的な教養が日本にあるのかこそを史実に学んで同時的に考えたいものです。そうした提案が昨今始まっていることは喜ばしいことではありますが、全体がついていく資質はすでに試され済みでも、個別的に創り上げそれを容認しあう社会を築く資質の源泉となる教育は時間軸として「今」は「過去」にさかのぼることを鑑みますと昨今の大学議論等々からしても当分は厳しい道のりであろうかと思います。
投稿: kohchan | 2016年6月11日 (土) 09時04分