日本型雇用システムに踊らされる働く女子の運命@Amazonレビュー
Amazonレビューにまた『働く女子の運命』の書評がアップされています。評者は「Tsukutahito」さん。
女性の「活用」は叫ばれて久しいのに、日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?
この問題に、労働政策研究・研修機構の主席統括研究員であり、日本の雇用問題を扱うプロフェッショナルといえる濱口桂一郎氏が、真正面からの主張を繰り出す。
女性の「活用」は、一般的には男性側の意識の問題が大きいとされる。「一家の大黒柱」や「一家を養う」という考えは依然根強いし、女性は「家庭を守るもの」という考えに支配されている男性は少なくない。また、家事や育児を「女性の仕事」と考えて、非協力的な男性も多い。こうした考えが女性の「活用」の阻害要因になっているという主張であり、それはそれで事実であろう。また女性の側の意識の問題もあるという言説も一般的だ。女性が「責任あるポジションまではつきたくない。私らしく働きたい」と考えるため、「活用」が遅れるというものだ。これも一理ある。しかし、本当に当事者の意識だけの問題で、こうまで進展しないものであろうか。
その根底には、メンバーシップ型といわえる日本型雇用システムがあるというのが、氏の主張である。日本の歴史的な雇用状況の変化を概説し、労働問題を明確にすることで、「意識」の問題だけで、働く女子の活躍を推進することの困難さを明確にしている。
日本特有ともいえるメンバーシップ型の雇用システムを、今後いかに現実に適用していくのか。この方向次第で働く女子の運命も(勿論男性、シニアと置き換えてもいいだろう)また踊らされてしまう。
本書の本筋を的確に浮かび上がらせていただいています。
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hamachanの本を読みながら「もう一つの歴史」の可能性に思いを馳せてしまいます…。1960年代まで日経連は「職務給」を掲げ、「三種の神器」はジョブ型契約へ「近代化」されるべき制度(古い精神)と捉えていたはずが、1973年の石油危機をきっかけとした経営環境の激変により、会社にとっては従業員を柔軟に配置展開でき、労組にとっては長期雇用が保障されるという労使の利害関係が一致した結果、ジョブ型志向が駆逐され、以後メンバーシップ型(それを支える職能属人給)へ大きくシフトしていった経緯が詳細に記述されています。歴史にifはありませんが、もう一つの「日本」の可能性もありえたのかもしれません…。そっち(パラレルワールド)の世界ではジョブ型契約のもとで職能別労働組合と外部労働市場が発達し、各社とも緊張感ある労使関係のもとで労働者一人ひとりが自己責任のもとで生涯にわたりスキルや専門性を磨いていく…。そこは、現実世界で70-80年代に経験した、あの誇らしい製造業中心の経済成長までは達成できなかったかもしれませんが、いまのわが国のかたちとはだいぶ違った日本が、―「正社員」との格差や長時間残業が少なく、女性進出もアジアで一番進んだ活力とメリハリのある日本(ある意味、北アジアのフツーの先進国)―がありえたのではないかなぁと想像したりしています…。
投稿: 海上周也 | 2016年6月 7日 (火) 17時50分