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« 『経営法曹研究会報』84号 | トップページ | 山野晴雄さんの小林節氏評 »

2016年5月13日 (金)

定年後再雇用の賃金差別は違法!?

これは結構インパクトのある判決でしょう。

http://www.asahi.com/articles/ASJ5F4V1RJ5FUTIL02V.html(同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決)

横浜市の運送会社に勤めるトラック運転手の男性3人が、定年後に再雇用された後、業務内容が全く同じなのに賃金が下がったのは「正社員と非正社員の不合理な差別を禁じた労働契約法に違反する」として、定年前の賃金規定を適用するよう求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。佐々木宗啓裁判長は、再雇用後の賃金規定は同法に違反すると認めたうえ、元の賃金規定を適用するよう会社に命じる運転手側勝訴の判決を言い渡した。

トラックの運転手、ということで、ニヤクコーポレーションと似ていますが、こちらは定年後再雇用のケース。再雇用されたら賃金が下がるのはあまりにも常識化されていて、それゆえに未だに高年齢者雇用継続給付というのがあるわけですが、その常識に疑問を突きつけるような判決と言えましょう。

判決は「定年前と同じ業務をさせながら賃金水準を下げることで、定年後再雇用を賃金コスト圧縮の手段とすることは正当とは言えない」と述べた。弁護団によると、定年後に再雇用された人の賃金格差をめぐり、同法違反を認めた判決は極めて異例という。

ニヤク事件もそうでしたが、トラックの運転手ということで定年後も仕事の中身が全く同じであるというのは日本の企業としてはむしろ特殊事情という面はありますが、それにしても、「定年後再雇用を賃金コスト圧縮の手段とすることは正当とは言えない」というのはインパクトのある判示です。

実は一昨日、東大公共政策大学院の授業で高齢者雇用を取り上げ、年齢に基づく人事管理を基軸とする日本の企業に年齢差別禁止なんてことが一体どこまで可能なのか、という問題をめぐって受講生の皆さんと結構議論になりましたが、まさにそれを論ずるのに適切な事件と言えましょう。

ただ、いつもいいますが、新聞報道で判決をあれこれ論じるのは危ないので、あとは判例雑誌に載ってからということにしましょう。

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コメント

今朝の日経朝刊記事で知りました。一審の東京地裁判決ですが、世界的な同一価値労働同一賃金の流れの中、おそらく控訴しても判決は揺るがないでしょう。以前から濱田氏が説かれている通り、新卒採用、メンバーシップ型雇用契約、正社員と非正規、女性の問題、年功賃金、御用組合、終身雇用、人事異動、定年、再雇用といった一連の戦後型日本的雇用慣行は全て互いにリンクしあい、数珠のように強固に繋がっています。今回の判決のは、濱田氏が述べるように、これらの連鎖にクサビを打ち付けるインパクトを持つのみならず、さらなる隠されたタブー「中高年 年齢差別」というテーマを掘り起こす可能性もあろうかと思います。今後の展開に注目したいです。

もしかして、この論理を貫くと年功賃金も違法ってことになりますか?

本ブログで指摘されてきた日本型労働慣行に穴をあけた判例として時間軸みますと確かにインパクト性ありにまったく異論はありませんし、これがすべての職種に対しても帰結するレギュレーション化に到達することを望みますが、逆に適用される職業群がこれにより明確化されたものと捉えられると、訴訟自体がそれを織り込み済みで成された条件闘争(というんですかねえ。門外漢なもので間違っているかもしれませんが)っぽくも感じられます。判決をシニカルにみているのではありませんよ。
どうも合理性と不合理性の狭間を埋めただけの裁判官も存外に乗り越えやすいものだったような感じもありますし、訴訟弁護側もそれを察知し同期しているようなプロとプロ、原告、「三方よしの時へのシンクロ」のようでもあります。一歩でも前進と言われたらそれに抗うことはできませんが、それが見たいものしか見ない(見えない)ものに矮小化されないことを誰がこれから先を担保していくのでしょう。ちょっと悲観的すぎましたかねえ。

Kochan氏の懸念もわかります。仮に、最終的に判決がこれで確定すれば、適用場面は限定的であれ同ケースの今後のガイドラインには最低なるでしょう(定年後再雇用する際、職務が「全く」変わらないときは賃下げできないと)。問題はそこから先、この判決が依って立つ思想の持ちうるインパクトを私たちがどう受け止め、どこまでわが国で適用していきたいと考えるかでしょう。例えば「今回、同一労働同一賃金は定年前後を問わない。つまり、年齢を問わない⁈ すると、定年以前の正社員の年齢給や職能給も今のままでよいのだろうか?」とか。あるいは「そもそも「年齢」を基準にした「定年」ってどうなんだっけ?」等。
あくまでも定年後再雇用時の「限定的」な適用ルールに止めるのか。あるいはそこから発生しうる論点を議論し、雇用改革を念頭に「新しい労働社会」へとさらに進み出すのか、進み出たいと思うのか? が問われざるを得ないという意味で、この事件はインパクトを持ちうるのです。

海上さん、ありがとうございます。
その先(すぐそこ)にある懸念は、まずはそうした合意形成過程を経験したことがない国民性と申し上げますといささかステレオタイプな安易なコメントに相似しがちで誤解を生じさせる危険も認識しつつ、オピニオンにはいわば苦手意識すら持つような、その代替性としてのセンチメントに親和しやすい、自身が当事者となる場合は騒動を回避したがる性向があるからなあと思われるからです。あんなに簡単に所属によってその指導に従い投票行動を起こしてしまう「実績」は否定しがたいものがありますから。
それとやはり需要側の産業構造がすでに対応不可なグローバル環境と相まってそのように思われてならないのです。
所詮三面等価原則により3セクターが相互ラグを持って発展しうるメカニズムであるとすれば、あるセクターのみではいかんともし難いなあと思うわけです。たとえば仰るような連動する気配が見える状況が少しでも認められれば、今回の凡例がたとえ小さな出来事でもバタフライ効果よろしく期待できる同期状態に至るとは思っております。が、今はまだあるセクターないでのリソナンス状態とみる方が無難かなと思います。
ご教示ありがとうございました。

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