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2016年5月23日 (月)

八代尚宏『シルバー民主主義』

102374 八代尚宏さんから新著『シルバー民主主義 高齢者優遇をどう克服するか』(中公新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/05/102374.html

急激な少子高齢化により、有権者に占める高齢者の比率が増加の一途にある日本。高齢者の投票率は高く、投票者の半数が60歳以上になりつつある。この「シルバー民主主義」の結果、年金支給額は抑制できず財政赤字は膨らむばかりだ。一方、保育など次世代向けの支出は伸びず、年功賃金など働き方の改革も進まない。高齢者にもリスクが大きい「高齢者優遇」の仕組みを打開するにはどうすべきか。経済学の力で解決策を示す。

同じ中公新書で出された『新自由主義の復権』と同じように、いかにも挑戦的なタイトルですが、そしてこのタイトルだけ見ると、ある種の「ワカモノ論者」のように、ワカモノが損しているぞ、トシヨリが得しているぞ、叩け叩け、みたいな本だと誤解されかねない感もありますが、もちろんそんな内容ではありません(そういう匂いは若干ありますが)。

むしろ、高齢者内部での格差が拡大していることをきちんと指摘し、高齢者世代内部での再分配の必要性を説くところは、冷静な議論を展開していると言えます。

年金を中心に医療/介護など社会保障が本書の中心であるのは当然ですが、わたくしからすると最後の「第8章 企業内のシルバー民主主義」が、拙著『日本の雇用と中高年』(ちくま新書)と重なる論点が多く、興味深く読めました。

これは先日東京地裁の判決で話題になっている定年後再雇用の処遇問題をはじめとする、その全ての局面にわたって年齢が中核的基準になっている日本型雇用システムを、その根幹からラディカルに批判する視座に立っており、賛成するにせよ反対するにせよ、きちんと八代さんの議論と正面から向かい合う必要があることを意味します。

この章からいくつかの一節を引用しておきますが、いずれも日本が雇用システムの矛盾が中高年に現れるという事実を鋭く指摘しています。

・・・もともと管理職としてふさわしいものが登用されていたとすれば、55歳でそのポストから一律に外されることは合理的ではない。これは企業内労働市場で、最も重要な役割を果たすべき管理職が、具体的な仕事能力と結びついた「職種」ではなく、労働者の「処遇」のためのポストと化しているためである。労働者の処遇を金銭ではなく職場のポストの配分で行う、職場でのシルバー民主主義は、管理職年齢に当たる高年齢者の増加とともに、企業内の人材の効率的な配置との矛盾はいっそう深まることになる。・・・

・・・これは定年退職者だけでなく、中高年労働者の過剰問題にも現れる。欧米の雇用問題が主として未樹訓練の若年者の高失業であることに対して、日本では熟練中高年が雇用調整の主たる対象となる(濱口2014)。この雇用問題の違いの要因も仕事能力とかけ離れた年功賃金であり、高齢者にとって有利すぎる賃金制度が、逆にその雇用機会を制約している。それにもかかわらず、高齢労働者の目先の既得権に配慮し改革が進まない。政治面のシルバー民主主語と瓜二つである。・・・

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