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2016年5月24日 (火)

『図説 労働の論点』

14627高橋祐吉・鷲谷徹・兵頭淳史・赤堀正成編著『図説 労働の論点』(旬報社)をお送りいただきました.ありがとうございます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/1087

働くことをめぐって現在問題になってる29の項目を象徴的なグラフや表を用いながら分かりやすく解説する。就職活動に翻弄されているかのように見える現代の若者たちが、自らの人生を左右することになる労働問題に興味を持ち、その理解を深めてもらうことを目的とする。

労働問題の入門書という風情ですが、実は極めてメッセージ性の強い本です。

上記4人の編著者に加えて、石井まこと、須田光照、神部紅の3人が執筆している項目は下記目次の通りですが、いずれも今日の労働の在り方、労働政策の方向に対して極めて批判的なスタンスから書かれています。

その意味では、既に金子良事さんが評しているように、

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-430.html

左派か右派かという区分よりも、労働の暗部に焦点を当てるのか、光の部分にも焦点を当てるのかといったバランスで考えると、本書は圧倒的に暗部に焦点を当ててい・・・

るわけですが、同じように現状批判的な労働問題の論じ方、たとえば木下武男さんやPOSSEの人たちの議論とは、もう一つの軸では鋭く対立しています。それは、たとえば第3章の「年功賃金は時代遅れなのか」の項目によく現れていますが、成果主義と年功賃金を対立させて後者を称揚する議論になっています。ただ、そこで例えば成果主義が子育て世代に優しいなどという為にするふざけた議論を叩いて済ませているのはいささか物足りない感があります。そんなたわけた議論を叩いただけで済む話ではないはずですから。また、欧米もホワイトカラーは年功的だという小池和男氏の議論をそのままもってきて年功制を正当化するのは、少なくとも賃金の決め方と上がり方を峻別すべきという遠藤公嗣氏の議論以後は底が浅いのではないかと思います。ジョブ基準ではなくヒト基準であるという賃金の決め方をそのままにして、年功制を薄めるために成果主義を恣意的に(それこそ成瀬氏が言うように賃金を抑えるために)導入したからこそ、訳の分からない状況になっているわけで、年功制万歳で済む話ではなかろうと思います。

これはたとえば、第2章でブラック企業を取り上げているところで、ブラック企業現象の要因として経済優先の雇用政策とか、人件費削減頼みの経営とか、労働組合の不在とか、教育機関の責任とかが指摘されている割に、今野晴貴さんらが指摘する日本型雇用の無限定性の悪用という面を取り上げていないところにも現れているように見えます。

一方で、第4章では「クミアイ」に否定的で「ユニオン」に肯定的という面が強くでており、ここは木下武男さんらの議論と極めて波長が合っているのですが、そこのところのリアリティについては、私はむしろ慎重にならざるを得ないところがあります。まあ、ここの記述はまさにユニオンの活動家である須田さんや神部さんも書かれているので、当然のスタンスではありますが。

はじめに-働くことと生きること
第1章  「働く」ことを見直す
 1 「働く」ということ
 2 「働けない」ということ
 3 「働かない」ということ
 4 終身雇用はどう変わったのか
 5 増え続ける非正社員
 6 急がれる地位の改善
第2章  若者の働き方を考える
 1 キャリア教育の落とし穴
 2 広がる「名ばかり」正社員
 3 若者と転職
 4 フリーターという働き方
 5 まん延する「ブラック」企業と若者
 6 やりがいかそれとも労働条件か
第3章  ワーク・ルールを学ぶ
 1 働く、そして暮らす
 2 エンドレス・ワーカーでいいのか
 3 「不払」残業はなぜまん延しているのか
4 長時間労働の悲劇
 5 ホワイトカラー・エグゼンプションは必要か
 6 安全で健康に働く権利
 7 賃金はどう決められるのか
 8 年功賃金は時代遅れなのか
 9 最低賃金で暮らすことは可能か
 10 女性はなぜ差別されるのか
11 「同一労働同一賃金」と「同一価値労働同一賃金」
第4章  ユニオンを活用する
 1 職場の不満やトラブルをどうするか
 2 労働組合はどこへ行ったのか
 3 「クミアイ」と「ユニオン」は違うのか
 4 パワハラ、セクハラとユニオン
 5 若者たちとユニオン
 6 労働組合はどのように生まれたのか
おわりに-ディーセントな働き方が未来を拓く

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