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渋谷龍一『女性活躍「不可能」社会ニッポン』

Show_image 旬報社の古賀さんより、渋谷龍一『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/1081?osCsid=s1oclllptqghk7mre7qn502ji0

「あなたはそんなに安い賃金がいやならなぜ辞めなかったんですか。」

世間知らずな弁護士の言葉に冷静さを失いそうになった……

だが気を取り直して、私はなぜ辞めなかったのだろうか、と自問した。正直に思うままの回答は、傍聴している臨時社員たちが自然にうなずく全員の気持ちだった。

「一緒に苦楽を共にして働く素晴らしい仲間がいるからです。」

弁護士は二の句が継げず黙ってしまった……(本文より)

日本社会における不合理な非正規問題に挑んだ女性たちの壮絶なたたかいの記録。

というのが、私の目から見ても本書の面白いところです。

労働法をかじった人なら誰でも知ってる丸子警報器事件ですが、非正規労働者の処遇問題のリーディングケースで、せめて8割というモノサシを示した裁判例、というラベルだけではわからない、実に波瀾万丈の労使紛争の物語がその背景にあったというのは、労働法研究者にとって必読のストーリーと言えるかも知れません。

この会社、もともとは青年団長出身の委員長率いる正社員組合との対立が前史としてあったんですね。その中で社長側はやたらに管理職を増やしていき、管理職と臨時社員をあわせて過半数に届く頃合いを見て、正社員以外だけで「協友会」というのを作らせて、労組を潰そうと企んでたんですね。

ところが、臨時社員を集めた食事会で、社長が「何か不満はありませんか」と聞いたところ、「よくやっているというなら、どうしてこんなに正社員と待遇が違うんですか」といわれ、社長は激怒して出て行ってしまった、とか。

そこで正社員労組は臨時社員たちをオルグしていき、臨時社員加入を会社側に通告。役員曰く「委員長よ、臨時社員は組合には入れないんだよ、知らないのか」。その役員が六法全社を抱えているのを見て噴き出す。「やっぱりこんな会社なんだ、労組がもっと良い会社にしてやる」・・・。

という、なんだか冗談みたいな話も交えて波瀾万丈の労使紛争が行き着くところまで行き着いたのがあの有名な裁判だったというわけです。

ただ、実はこれは第5章。それ以外は、第4章も愛知県の戦うパート女性のストーリーですが、その前はやや肩に力が入りすぎた「論」をぶちすぎている感があります。

いやいっていることは私ももっともだと思います。主婦パートは主婦だというだけでどうでも良いことのように扱われているのはけしからん、と。

08720528 これは、前に本ブログで取り上げた本田一成さんの『主婦パート 最大の非正規雇用』で主張されているのとほぼ同じです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-7a89.html

この本のメッセージは題名その通りです。最近、非正規労働問題というと派遣労働者が中心で、フリーターなど若者問題ばかりが取り上げられますが、主婦パートという最大勢力を忘れるなよ、そこに最大の問題点が潜んでいるんだよ、というメッセージでしょう

でも、だからといって、上級者とか何とかという言い方はどうかな、という気はしました。

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コメント

この「丸子警報機主婦パート事件」って、労働側を意図的差異化し対立させる古典的手法ですよね。
その昔の資本対総労働と呼ばれるものも、史実を簡単に振り返ること労さえいとはなければ、同じ構図があったはずでしょ?
けっして資本の論理だけではありませんよね。現存する左翼医療団体のとある法人も、その誘惑の因果は様々あれど同じ手法を使った史実がありますから、イデオロギー問題でもないのでしょうね。「経営」がもつサガなのではとも思われます。
そういう意味ではいまだにイデオロギーで片づける学問と手法と組織にこそ問題の源泉があるのかもしれませんねえ。わかりやすいですよね。それがとくに入社したての無知な、あるいは不満でも働かざるを得ない事情を抱えた人たちの組織忠誠心=労働所得依存集団を築くにはもってこいの賢い強迫観念創造手段ですね。
史実をすっ飛ばして要素還元化されたインスタント時代のツケは、今回も地震然り、大学問題の近視眼的論者然り、多種多様に「見たいものしか見ない社会」が出現したとも言えないですか?カルブレイスではありませんが。

投稿: kohchan | 2016年4月22日 (金) 07時32分

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