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2016年4月 7日 (木)

ジョブ型社会の「訓練」、メンバーシップ型社会の「研修」

なにやら世間で「研修」をめぐって話題になっているようですが、特定企業の問題はともかく、「研修」というそれ自体世界共通であるはずの概念が、なぜ日本ではかくも極めて特異な形態を取るのかという観点から物事を見るくらいの余裕はあっても良いのではないかと思われます。

「研修」を和英辞典で引くと「training」とあり、これをもう一度英和辞典にかけると「訓練」になります。

ふむ、「研修」とは「訓練」であったか。

ところが、なぜかこの極東の一島国では、「訓練」にはアカデミックな「教育」様よりも格下の職業技能に関わる代物というイメージが付着している一方で、英訳すれば同じになるはずの「研修」には、人格を陶冶し、一騎当千の強者にして見せます、みたいな格上のイメージが付着しているんですな。

ジョブのスキルがないから就職できない若者を「訓練」して使い物になるようにしてやるという欧米の発想からすると、スキルなどという枝葉末節なんかではなく、人格の根源を叩き潰して蘇らせる新興宗教まがいの「研修」はほとんど想像の外でしょうが、それこそ社会の基本ルールがジョブではなくメンバーシップである社会であればこそ、そこで評価されるのもスキルなどという下賤な代物ではなく全身全霊を挙げて会社に尽くすロイヤルティなのであってみれば、そこに全精力を傾注して若者を「使い物になる」ようにしてやろうというのは、少なくとも社会的文法(ソシオグラマー)には忠実に沿ったものと言ってあげてもいいのかも知れません。

そして、いうまでもなくそういう社会的文法を見事に下支えしているのが、大学で教えているのは「無用の用」なんだから、会社に入ってから徹底的に鍛えてやってくださいといって送り出している「文科系」の諸先生方なんですが。

まあ、そういう社会学的考察は、しなくても別にいいんですけどね。

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コメント

日本語でいう「研修」に一番近い英語は orientation です。よくビジネス文書で trainning とか education とか訳されていますが、あれではニュアンスが違います。

その通りですね、くみさん。
はまちゃん先生解説通りに諸先輩から脈々と紡がれてきた”我が社の所作”を駅伝型にて継承と同期の仲間意識を築き上げ、”実技訓練”は配属先でのOJTでねって。でも、もはや許されないことを知りながらも、「予算も使い放題、むちゃくちゃな要求されても、そのウラで面倒見がよかった上司や先輩との仕事の時間を忘れた熱中時代こそ生産性は高かったなあ」という時代があったことも斟酌しなければならないでしょうねえ。それで今の福祉国家ニッポンがあるのも解釈として成り立ちますからねえ。変な喩えで申し訳ありませんが、ロールズも「正義論」の普遍性を否定したように、大学も実社会もランキングのように数値化できない文化的な付加価値も踏まえて日本社会に適する方法論の議論が巻き起こればいいですね。
国際会計基準然りで、統一というか価値観共有というか、法の支配というか、要はルールを作ったもの勝ちの世界に安易に乗っかって継ぎ接ぎ政策を続け、そこは行くも地獄残るも地獄であったとはならないようにしないとですねえ。日本の今の立ち位置ってそうでしょ。恐怖心インフレーションなんですよねえ。

「研修」ですが、うちの業界では以下のように定義されております。

教育公務員特例法
第 21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。

「研究」+「修養」=「研修」なので、“training”とは似ても似つかぬ概念になっております。民間企業にある『人格の根源を叩き潰して蘇らせる新興宗教まがいの「研修」』とは異なりますが、「聖職」であるべきとの過去の経緯もあり、より一層「人格陶冶」という要素が前面に出ております…。

訓練にしろ研修にしろ海外では job description に応えられる能力があって採用される(だから技術者は自腹で技術を磨く)ようなので、普通の新人はジョブ型が羨ましいなんて思わない気がしますね。

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