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2016年3月 5日 (土)

Tomoaki Itoさんのブクレコレビュー

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 Tomoaki Itoさんが、ブクレコという書評サイトで、拙著『働く女子の運命』を丁寧に評しています。

https://www.bookreco.jp/review/204217

 労働官僚出身で、労働法制や制度の歴史で著書の多い著者の最新作。「女子はなぜ〝活躍“できないか?」(あえて”活躍”にカッコをつけているところが今っぽい)を主題に、小手先だけに留まっている女性の登用・活用策を批判している。

 女性の社会進出が進まない根本的な原因として著者は男尊女卑的な考え方や文化的な背景以上に、労働者への給与システムが欧米的な「職務給」(仕事の内容や責任、労働に対する単価があらかじめ決まっていて、同一労働同一賃金=ペイ for ジョブ)ではなく、一家の主人たる男性に対して扶養家族の生活給まで含めて包括的に払う「職能給」になっていることに原因を求めている。女性は家庭に入り、一家の主人を助ける事を前提にしており、女性の仕事は家計の補助的なものに限り、長く務めることはないがないが故に低い給与体系に抑えて構わないという論理・・・・根は深く、古いようにも見えるが、実は戦前までは日本は「職務給」的な賃金体系であるところがあり、「一家丸ごと面倒見る」制度は、戦時中の「報告・産業戦士」を動員するために編み出された制度であるという。その後、戦後の労働運動の激化の中で、組合側がむしろ積極的に「職能給」を求めるようになり、今日まで続いている。

 タイトルに「運命」とあるように、女子の社会進出はそう簡単に進むものではない。「男女雇用機会均等法」は、単に一部の女子を「男のレール」に乗ることを認めたに過ぎず、男並みの働き方(無条件の服従)をして初めて「均等」が享受できるという実情と、「一般職女子」が派遣労働に置き換わる中で、女性の立場はますます厳しいものになっているとの指摘は鋭い。

 「年功序列」「知的熟練」という、歳を重ねれば自動的に待遇が良くなる日本的なシステムに警鐘を鳴らす著者。ただ、高すぎる教育費や、生活費、充実しない介護負担などに手を入れずにいきなり「同一労働同一賃金」の名のもとに昇給を止めてしまうことは、ともすれば人件費を安く抑えたい経営者側の意図と相まって社会を混乱に陥れかねないという点にも目を配りたい。とはいえ、正社員のみが優遇され、大量の非正規労働者(特に女性)を出している今、この問題提起にどう答えるか、それぞれの立場で議論を進める土台になるのではないかと思う。少なくとも、「女性管理職登用率」やら「育休取得率」といった小手先の数字を目標に立てて「総活躍」と言うよりは遥かに身がある議論になると思う。

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