『経済セミナー』4・5月号の鶴・早川対談
『経済セミナー』と言えば、大学の経済学部や商学部に入った学生の読む雑誌とされていて、4・5月号の特集はまさに「1年生の日本経済入門」なんですが、いやいや、その巻頭対談がなかなか凄いです。
http://www.nippyo.co.jp/magazine/maga_keisemi.html
【対談】鶴光太郎×早川英男「日本経済の中長期的な絵姿を問う」
「なぜ賃金は上がらないのか」という節で、鶴さん、ここまで言ってます。
鶴 賃金が上がってくれないことは政権が一番ピリピリしていることなのです。連合が去年の秋に2%という話をして、これを政権の方は名目成長率3%の目標なのだからそんなのではダメ、労働組合はもっと高めの数字を言ってもらわなければ困るのに、早々と2%という数字を言うのでは、安倍政権はもう労働組合を相手にできないということのようです。
早川 だから、政労使会議もやらないとか言っているでしょう。
鶴 もういいから、賃金の話は企業側とだけ話しますということ。これも天と地が逆さまになるような話で、政府が賃上げをやれと言っているのに、労働側が政府の要求に対応できない。こんなことだったら労働組合は意味がないと言って外されてしまうというようなことが日本で今起きていて、こんなことの起きた国がこれまで世界中であったのかと思うと、少々愕然とするのですけれども。
そのあと、「いまバックラッシュが起きている」、「ジョブ型正社員をデフォルトに」では、むしろ早川さんの方が議論を引っ張っている感じです。
最後の「なぜ経済成長が必要なのか」の中から、ある種のエコロハスな人々が忘れている大事なことを抜き出しておきましょう。
早川 要は経済成長がなぜ必要なのかということだけれど、日本の場合、経済の水準自体はそんなに低いわけではない。だから「ゼロ成長でもいい」といっている人もいるわけだけど、成長が必要な理由は主に財政から来るのです。これだけのスピードで高齢化が進んでいる中で、いわゆる賦課型の社会保障システムを維持していくためには、どうしても経済成長が必要なのです。・・・
なぜか日本では、成長ばっかり言う人に限って、社会保障を敵視したりする傾向があったりするので話が余計ややこしくなったりするわけですが・・・。
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大学ビジネスのドル箱両学部生にシンクロする若きジェネレーションが言えばそれなりの価値はありますが・・・受給年齢者層の言葉にはなんとも説得力に欠けますでしょうねえ。
でもその若きジェネレーション研究者ほど、このような発言には残念ながら大方理解を示さずそっぽを向きますね。
教授会から学長はじめの執行部に人事権等を握られた「近代大学経営」では苦労の末のポジションを失いかねませんし、実学ビジネスマン社会とは雲泥の価値中立こそが至上命題で時間を止めることではじめて抽象化できるエレガントな科学主義が堪能できますから社会保障なんてそもそも思考の論外なのです。社会に自分はまだ存在しておりませんから。
ややこしいんですよ、今の優秀な若者は。というか実はそのパラドクスで、情報社会で余裕もないのでしょうし、また抗う場合の長い受験競争で勝ち得たポジションの損益を計り、ここは教えられることに従い、疑う術を放棄する犠合理性を大学生活中に会得するように思えます。
こんな対談をする勇気ある若者は・・・いないなあ。日評も罪は深いなあ。
投稿: kohchan | 2016年3月30日 (水) 19時26分