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2016年3月23日 (水)

「妊娠したから解雇」と言ってくれる親切な使用者ばかりじゃないが

判決文は見当たらないので、一番詳しそうな弁護士ドットコムから、

https://www.bengo4.com/roudou/n_4441/ (妊娠告げた2カ月後「協調性ない」とクビになった中国人女性が勝訴 「解雇無効」判決)

会社に妊娠を告げたら2カ月後に解雇されたとして、東京都内のカバン会社に勤めていた中国人の女性が、解雇の無効と未払い賃金の支払いを求めていた裁判で、東京地方裁判所は3月22日、解雇を無効とするとともに、未払い賃金(月給21万円×17カ月分)を支払うよう会社に命じる判決を出した。

というところだけ見ると、妊娠故の解雇を無効としたように見えますがさにあらず。

会社から告げられた解雇理由は、「協調性が無く、注意および指導しても改善の見込みがない」「会社の社員としての適格性がない」というものだった。しかし、女性はこのような解雇理由に全く心当たりがなく、2014年12月、解雇の無効などを求めて提訴した。

弁護団は、カバン会社の解雇は、妊娠を理由とする解雇を禁じた男女雇用機会均等法9条や、客観的に合理的な理由のない解雇を禁じた労働契約法16条に違反するとして、解雇の無効を主張していた。

東京地裁は労働契約法との関係についてのみ検討し、本件解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」から、解雇権の濫用にあたるとして、無効であると判断した。

妊娠したことを理由とする解雇はもちろん無効ですが、でもまあ、そうはっきり言ってくれる親切な使用者ばかりではないわけです。

いやまあ、そんな親切な使用者もたまにいて、厚生労働省に公表するネタを与えてくれたりするわけですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-0136.html (妊娠を理由とする解雇の公表)

さすがにそこまで親切じゃない少しは賢い使用者は、いやいや妊娠が理由じゃないよ、協調性だよ、と言うわけです。

そうすると、使用者が言っている解雇の理由はホントじゃなくて、本音は妊娠したからだと労働者側が立証しなきゃいけないのか。

そうだとすると、そんな悪魔の証明はなかなか難しいので、そんなのをすっ飛ばして労働契約法16条の解雇権濫用だと言って済ませたくなるかも知れません。

でもね、実はそうでもないのです。

昔の男女均等法は、確かに妊娠が理由の解雇は無効だと言っているだけでしたが、2006年改正でこういう規定が設けられているのです。

4  妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

おやおや、妊娠中の女性の解雇はまずもって無効であって、使用者がそうじゃない、本件でいえばその協調性、適格性が理由だったってことを、使用者の側が立証しなくちゃそれをひっくり返せない、ということになってますね。

悪魔の証明を求められているのは労働者の側じゃなくて使用の側なんですね。

だとすると、何でこの裁判官が男女均等法のこの規定を無視して解雇権濫用の一般原則に逃げてしまったのかがよくわかりません。

使用者の立証不十分で解雇無効にできるのですから。

正直言って、裁判官が解雇権濫用法理を濫用しすぎている感が否めません。

権利濫用というのは、あくまでも権利があることを前提にして、それの行使の仕方が濫用だと言っているに過ぎません。

妊娠した女性を解雇するなんて、そもそも濫用なんて生やさしいものではない、という発想は、残念ながらこの裁判官にはなかったようです。

とはいえ、以上はあくまでも判決文を読まずに上記リンク先の記事を見ただけの感想ですので、判決文を読んだら意見が変わるかも知れませんのであしからず。

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コメント

妊娠後に解雇された中国人女性の事件(ネギシ事件)の弁護団主任の指宿(いぶすき)と申します(以前、先生に某団体の講演をお願いしたときに、お会いしたことがあります。その節は、ありがとうございました。)。判決のことをブログで取り上げていただき、ありがとうございます。
弁護団としては、本件は、当然、均等法9条4項により無効になると思っていました。「正直言って、裁判官が解雇権濫用法理を濫用しすぎている感が否めません。」とのこと、同感です。
必要があれば、判決を後らせていただきたいと思います(メールアドレスを教えていただければ、PDFを送ります。)。
弁護士 指宿 昭一

いずれの側に立証責任を課すかは、今回の事例も、あるいは税のあり方=今の家父長制消極的参加による義務論でよしなのか、それとも納税を国民の権利と考え積極的請求意識を付加する積極的参加こそ行くべき道なのか、いずれのセクターもその帰属によって二分法で議論される・これこそ実は悪魔の証明を狡猾的に利用する問題先送り型法の支配パラドクスと思われます。
所詮、法は人が時の恣意性で作る擬合理性ともいえると思うのですが、現実にそれにたまたまつかまってしまった人々は気の毒だなあと思います。理論と現実のラグを埋める術の解の開発を喫緊の課題としなければ矛盾と不幸は怨嗟を生むだけです。それがブリュッセルでの現象なのではと思います。それはすでに着々とアルゴリズム拡散を指数関数的に飛躍させ、その守り神であるインフォメーション・テクノロジーに依存する効率的社会は、先述のアルゴリズム帰納的推論を秩序ととらえる新自由主義のもとに個に還元されてしまった情報ツールの破壊力を示し始めました。とはえい帰納的推論を拒絶する立場でコメントしているわけではなく、その優れたしかし有限性を見極める知性がほしいなあと思っている次第です。創発は思わぬ飛躍を生むことも確かですので。なんだか反知性主義をめぐる議論ぽいコメントとなってしまい申し訳ありません。

指宿様

わざわざ拙ブログにいらしていただきありがとうございます。

私のメールアドレスは

SGB00231@nifty.com

です。

法律というのは、結果が同じなら何でも良いわけじゃなくて、やはり理屈が大事なはずですよね。

本件に限らず、解雇権濫用だけが認識されて、労組法や均等法その他のそもそも濫用じゃなくて許されない差別的解雇ってのがあるということが忘れられているきらいもありますね。


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