拙著からハーシュマンへ
去る1月にひっそりと刊行した『日本の雇用紛争』を読まれた方が、それをきっかけにハーシュマンの名著を読み出したというツイート。
https://twitter.com/skybeagle_SB58/status/709757442683379712
hamachan先生の「日本の雇用紛争」で引用されていた「離脱・発言・忠誠-企業・組織・国家における衰退への反応-」を読み始めたけど、かなり興味深い議論が展開されそう。じっくりと読み進めたい。
なんとなんと、私の本があのハーシュマンの名著への導きになったとは嬉しい限りです。
・・・・・まず、もっとも客観的合理性に欠ける可能性が高い類型の「行為」に係る解雇型雇用終了事案として、権利行使や社会正義といった労働者の「発言」への制裁としての解雇型雇用終了事案がある。
ここで「発言」(voice)とは、アメリカの経済学者アルバート・ハーシュマンが提示した概念で、組織や集団の成員がその組織や集団の運営に対して不満や問題意識を抱いた際に、組織や集団の内部でその不満を述べたり、問題を提起したり、改善策を訴えたりするといった内部解決型の行動を指す。それに対し、不満や問題意識を抱いた成員がそれを内部で発言するのではなく、組織や集団を脱退して、別のルートで解決を探ろうとすることを「退出」(exit)という*1。この「発言-退出」モデルは、政治から経済まで社会のさまざまな局面に応用されることが可能な概念枠組みであるが、職場における労働者の行動様式にも応用することが可能であり、とりわけ個別労働紛争の原因となる労働者の行為を概念化する上で有用であると考えられる。
この本の説明としては、「ラスカルの備忘録」ブログのこのエントリが簡にして要を得ています。
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20061101/1162393932
本ブログにおけるハーシュマンに関するエントリとしては、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_3c8e.html (フリードマンとハーシュマンと離脱と発言)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_1a4b.html (離脱と発言再び)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-2d75.html (意地悪な質問?)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/voiceexit-fb62.html (voiceなきexitの世界)
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