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『日本労働研究雑誌』4月号は「労働研究のターニング・ポイントとなった本・論文」が特集で、
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html
その中で注目は、ゴードンの『日本労使関係史』に対する金子良事さんによる二度目の書評です。
ゴードン『日本労使関係史』
金子 良事(法政大学大原社会問題研究所兼任研究員)
一度目は『大原社会問題研究所雑誌』で、
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/650/650-07.pdf
これに対して私がコメントしたところ、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-c4a4.html (金子良事さんのゴードン『日本労使関係史』書評について)
本書については、本ブログでも何回もしつこいくらいにエントリをあげてきていますので、ここでは金子さんの書評スタンスについて一言だけ。
金子さんが反論され、
http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-247.html (メンバーシップ論から企業別組合を説くのには屈せない)
さあさあ御立合い、御用とお急ぎでない方は聞いておいで、見ておいで、濱口金子劇場、始まるよ。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-657e.html (金子劇場が始まった!)
http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-248.html (メンバーシップ論と企業別組合)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-b666.html (労使関係の「近代化」の二重性)
http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-249.html (問われるべきは企業別組合強化よりも労働戦線統一)
このやりとりの中では、「はっきり言って、メンバーシップの問題で労使関係を切っていく視点は二村、ゴードン、禹に至るまでみんなダメだと私は思っているんです。だから、ほとんど無視した。それだけのことです。」とまで断言されていた金子さんですが、今回の特集は紹介という趣旨から、そこまでの激しい言葉は見られません。
その代わり、と言っては何ですが、私の著書を引っ張り出してきて、メンバーシップ論が従来の常識であり、その言葉のもとがゴードンであることに注意喚起しています。
・・・近年、濱口桂一郎が『新しい労働社会』(岩波新書)で従来の労働研究において常識とされてきたことをリフォームして、メンバーシップ型雇用社会という概念を提出した。本書(=ゴードン著)は「メンバーシップ」という概念によって本格的に取り組んだもっとも初期の研究であり、このトピックに関心のある現代の読者は、様々な示唆を受け取ることができるだろう濱口自身もこの議論が。自分の発想の元であることを認めている。・・・・・
いやそれは、労働研究をちょっとでもかじっていれば、メンバーシップ論が「従来の常識」にちょっと変わったカタカナのラベルを貼っただけであり、そのラベルもゴードンさんの本から持ってきたに過ぎないことは、それこそ常識の範囲内のはずなんですが、そういういう常識がかけらもないような人になると、「俺様の発見」(!?)を勝手に使うな、というわけのわからない話に堕してしまうようであります。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-5545.html
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ありがとうございます。紹介というより、分野が違う初学者へのガイドという目的ですから、賛成するにせよ、反対するにせよ、ゴードンさんの本を読むのがスタート・ラインで、そのためにはまず、それを広く知ってもらうには、という観点で書きました。労使関係を広い労働運動の文脈で書き直す必要があるというのは、今でもそう思っています。
そういえば、前の記事を読み返して思い出したんですが、生産性本部だけじゃなくて、その昔、日本労働協会という団体があって、そこも60年代に労使関係の近代化を期待して作ったんだったなあ、と感慨深くなりました。
投稿: 金子良事 | 2016年3月29日 (火) 01時22分