加藤恵津子, 久木元真吾『グローバル人材とは誰か』
加藤恵津子, 久木元真吾『グローバル人材とは誰か 若者の海外経験の意味を問う』(青弓社)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-3397-4
国際的な産業競争力を向上するために「内向き志向」を改善して海外に目を向け、語学力やコミュニケーション能力、主体性をもつことを期待される若者=グローバル人材。近年では、文科省や経産省がその育成に力を注ぎ、経団連が必要性を訴えている。
留学も含め海外に渡る若者は現在でも多いのにもかかわらず、行政や企業が強く求める「グローバル人材」とはいったい誰なのか。
海外滞在経験をもつ若者ともたない若者へのインターネット調査と、カナダやオーストラリアに実際にやってきた若者へのフィールドワークを組み合わせて、「普通の若者」にとっての海外経験の意味をすくい取り、期待される「グローバル人材」とのズレに、階層やジェンダーという、「若者の意識」だけには還元できない問題があることを明らかにする。そして、「グローバル人材」といった特権的な人材層の育成だけに目を向けるのではなく、若者のキャリア形成の多様性を確保しながら、若者に広い視野を与える環境づくりの必要性を指摘する。
ということなんですが、ふむ、いまいち焦点が絞りきれない感じが残りました。
はじめに 加藤恵津子
第1部 若者は「内向き」か?――インターネット調査からみる若者の海外経験と人生 久木元真吾
第1章 若者にとっての海外経験
1 海外に行くということ、行っていないということ
2 海外経験が豊富な若者たち
3 海外経験が(ほとんど)ない若者たち
4 若者たちにとっての海外経験の意味
第2部 「外」に向かう人びと――フィールドワークからみる若者の海外経験と人生 加藤恵津子
第1章 「自分探し移民」とオーストラリア、カナダ――「あれもこれも」の魅惑と困惑
1 「海外」としてのオーストラリア、カナダ
2 誰が「外」に来るのか?――日本の若者たちのプロフィール
3 若者の「人生の場」としてのオーストラリアとカナダ――揺さぶられる三つの境界線
4 「やりたいこと」「仕事」「自分」の三位一体化
第2章 「自分探し移民」と「グローバル人材」――〈自分〉と〈企業〉をめぐるジェンダー・階層
1 「自分探し移民」とは誰か
2 女性化する「自分探し移民」
3 「グローバル人材」言説と男性性(ルビ:マスキュリニティー)
4 ジェンダー内格差と「自分優先」という選択
第3章 「グローバル市民」のスゝメ――帰国者も、移民も、移動者も
1 日本企業と「自分探し移民」の間のギャップ
2 海外経験と自己肯定感・自己推進力
3 「グローバル人材」か「グローバル市民」か
4 帰国者・移民・移動者を含めた「グローバル市民」のスゝメ
あとがき 加藤恵津子
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海外で日本語教師をやりたいという学生さんが結構いるらしいのですが、まず日本国内で数年働いてからにしろとアドバイスされます。理由は二つあって、ひとつは日本語教師はただの語学教師にとどまらず日本の会社文化についても生徒に実体験から教えてあげられないといけないのがひとつめの理由。もうひとつは、日本に戻ってきてから就職先を見つけられないから。学校を出てすぐに海外に出てしまうと、日本国内目線ではいわゆる空白のキャリアができてしまって、引きこもりと同じ扱いになってしまうのです。よく聞きませんか引きこもりが長引くのは履歴書の空白がネックになって門前払いされるためよけい引きこもり化してしまうという話。あれと同じメカニズムです。
投稿: くみかおる | 2016年3月 8日 (火) 10時23分
たまたま読んだブログに、『働く女子の運命』で挙げられていた状況がそのまま描写されていたので、コメントします。
産休・育休で「女の敵は女」を産み出す社会の構造
http://nyaaat.hatenablog.com/entry/returning-from-maternity-leave
投稿: 三堀紗也華 | 2016年3月 8日 (火) 15時19分