藤田孝典『貧困世代』
藤田孝典さんより『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社現代新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883580&_ga=1.29245372.1852214663.1458729080
昨年の『下流老人』に続いて、今度は若者がテーマですが、一見すると世間によくあるたぐいの世代論かと思うかも知れませんがさにあらず。現代日本社会の矛盾が、かたや老人の貧困に、かたや若者の貧困に露呈しているのだということを訴えている両著でして、その意味ではひとつながりのメッセージといってもいいかもしれません。
はじめに
第1章 社会から傷つけられている若者=弱者(じゃくしゃ)
第2章 大人が貧困をわからない悲劇
第3章 学べない悲劇――ブラックバイトと奨学金問題
第4章 住めない悲劇――貧困世代の抱える住宅問題
第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない
おわりに
第1章で藤田さん自身が受け止めた事例をこれでもかと示した後、第2章では大人たちが若者を語る際によく出てくる議論を5つのタイプにまとめて、どれもこれも間違いだと一刀両断していきます。
大多数の若者たちは、現代日本の社会構造のおかげで、夢や希望を叶える活力を持ちながらも、それを生かせずにもがいている。しかも悪いことに、若者たちは支援が必要な存在だと認識されておらず、社会福祉の対象としては扱われてこなかった。
貧困世代約3600万人はまるで、日本社会がつくった監獄に閉じ込められている囚人のようである。
若者は働けば収入を得られる、若者は家族が助けてくれる、若者は元気で健康である、昔の若者のほうが大変だった、若者の苦労は一時的なものだ・・・・・・こうした「大人の言説」はすべて間違っている。
本書では、所持金13円で野宿していた栄養失調状態の20代男性、生活保護を受けながら生きる30代女性、ブラック企業でうつ病を患った20代男性、脱法ハウスで暮らさざるを得ない20代男性の事例などの、筆者自らが聞き取った体験談を分析し、いかに若者が社会からこき使われ、疲れ果て、貧困に至っているのかを書き尽くす。
貧困世代のつらさを全国民が深く理解し、いびつな社会構造を変えなければ、下流老人も含めた日本固有の貧困問題は絶対に解決しない。
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