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2016年3月24日 (木)

「シルバー人材センターの業務拡大」@『生産性新聞』3月25日号

『生産性新聞』3月25日号に「シルバー人材センターの業務拡大」を寄稿しました。

 今国会に提出された「雇用保険法等改正案」の中に、高齢者雇用安定法の改正としてシルバー人材センターの業務拡大が含まれています。継続雇用制度や年齢差別禁止などのように労使間で利害が対立するホットな話題ではありませんが、労働政策の最周縁に位置するこの政策について簡単にまとめておきましょう。

 もともとこれは労働行政の外部で始まりました。東京都で高齢者の自主的な組織として高齢者事業団運動が始まり、その後全国に波及していったのです。労働省は当初失業対策事業の弊害を憂慮してこれに関与しない方針でしたが、1979年に政策を転換し、1980年度から国の予算措置としてシルバー人材センター事業が開始されました。この中で、東京都高齢者事業団時代からの課題であるシルバー人材センターの法制化が、繰り返し要望され、1986年高齢法の一環として実現します。これによりシルバー人材センターは法律上に「臨時的・短期的な就業機会を確保提供し、無料職業紹介事業を行う」団体として位置づけられましたが、この運動の思想的側面を考えれば、どちらかといえば周辺的な業務によって法律上に位置づけられた感があります。すなわち、自立自助、協働共助というスローガンを掲げ、労働政策と福祉政策を架橋するこの運動を、高年齢者雇用安定法上は高年齢者の労働力需給調整機能の一端を担うものとして位置づけたのです。

 その後2000年改正では、それまでの「臨時的・短期的」な就業に加え、「その他の軽易な業務に係る」就業が業務に含まれました。これは、教室や家庭における教授、家庭生活支援、自動車運転などについて、日数の制限をなくす代わりに就業時間を短くするもので、おおむね週20時間以内とされています。2004年改正では、届出により構成員を対象に登録型労働者派遣事業を行うことができることとなりました。さらに2012年派遣法改正により、届出で有料職業紹介事業を行うことができることとされました。有料職業紹介事業について届出制としている例は他になく、規制の均衡という点でかなり問題を孕んでいます。ちなみに2015年改正労働者派遣法は、特定派遣事業の届出制をなくし、すべて許可制とするものですが、シルバー人材センターは引き続き唯一の届出制派遣事業として残されています。

 今回の改正案は、介護・育児支援など現役世代を支える分野への職域拡大を目指し、そのため一定の手続の下で「軽易」要件を外して職業紹介事業及び労働者派遣事業に限って週40時間まで就業可能としようとするものです。既に昨年の改正国家戦略特区法により特区内では可能とされており、その一般化という面もあります。法案では民業圧迫とならないために都道府県知事が地域関係者の意見を聴いて業務範囲を指定し、国も関与する等の仕組みが組み込まれています。しかし、既に2006年の公益法人改革で公益法人から一般社団法人ないし一般財団法人となったシルバー人材センターの業務をいつまでも「民業圧迫」というのも不思議なものです。

 むしろ、2012年に健康保険法上の被扶養者であるシルバー人材センター会員の就業中の負傷が健康保険法の給付を受けられないことが社会問題となったことなどを考えれば、その適正な就業環境の確保こそが課題であり、労働市場サービス業者としての適切な監督を講じていくことが重要なはずです。

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