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2016年2月 4日 (木)

移る権利、移らない権利

『生産性新聞』2月5日号に「移る権利、移らない権利」を寄稿しました。

 厚生労働省の「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」が去る11月20日に報告書を取りまとめ、労政審の審議が始まりました。焦点は会社分割時の労働契約承継法の改正問題です。
 同法は2000年の商法改正に伴って作られた法律です。その基本的な発想は、EUの企業譲渡指令と同様、労働者は職務と一緒に動くのが一番いい、というところにあります。ヨーロッパでは、労働契約は職務を限定して結ぶのが普通ですから、ある会社で自分がやっている仕事が分割されてほかの会社に行ってしまうのに、自分がそれから切り離されて元の会社に残されてしまうのが最大の悲劇になります。そこで、職務と一緒に労働者も移転するというのが大原則です。移転が嫌だといって元の会社に残っても、雇用は保障されません。ジョブ型社会とはそういうものです。
 日本では、労働契約で職務が限定されていないことが普通で、ある時点をとれば主として従事している職務はこれだということはできますが、それでも業務分担自体結構曖昧です。また主として従事している業務といえども、それは会社から命じられたから従事しているだけであって、人事異動が発令されたら全然違う部署の仕事に回されるといったことも普通です。そういうメンバーシップ型社会に、ジョブ型社会のルールを持ち込んだため、労働契約承継法のルールはいささか複雑なものになっています。
 つまり、分割計画書の記載を基本としつつ、主に従事する職務を優先させる方向への修正を認める仕組みです。就職よりも就社が一般的な日本の雇用慣行を踏まえつつも、労働者からの異議申出権を職務優先の場合にのみ認めるという形で整理を図っているわけです。当時対案として出された野党法案は、移るも移らぬも労働者の意思次第という仕組みでした。ジョブ型とメンバーシップ型の両方の希望を全て満たそうとするとそうなるわけですが、それでは労使のバランスがとれません。どこかで線引きをするとなると、EU指令をベースにするしかなかったのでしょう。
 さて同法制定後の2005年、商法の中から会社関係部分が独立して「会社法」になるとともに、それまでは分割の対象が「営業」だったのが、「権利義務の全部又は一部」となり、またそれまでは債務の履行の見込みがあることが前提だったのが、債務の履行の見込みがなくても分割できるようになりました。いわゆる「泥船分割」です。しかし、そのときには労働契約承継法は改正されず、指針で最小限の対応がされただけでした。
 今回の報告書は後者について、債務超過の状況についても過半数組合等への協議の対象となることを明確に周知すること等とする一方、不採算事業に承継される主従事労働者や不採算事業に残留する非主従事労働者にも異議申出権を付与すべきではないかという議論に対しては、承継法の趣旨から否定的な考えを示しています。ジョブ型社会を前提とすれば、泥船であろうがなかろうが労働契約にその職務が書き込まれているのですから当たり前の理屈です。しかし、日本のようなメンバーシップ型社会では、たまたま会社から人事命令で不採算部門への配置転換を命じられたために、その部門と運命をともにしなければならないというのは、不平不満をもたらす可能性があります。この問題は結構奥が深いのです。

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