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なぜ女性差別が続くのかを説得的に説明 by 相如さん

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 hontoレビューに、相如さんが『働く女子の運命』に対するかなり長大で突っ込んだ書評をアップされています。

http://honto.jp/review/user-review_819200029877_093.html

本書の著者は、近年広まりつつある「限定正社員」制度の火付け役として知られ、ネット上で質の高い(しばしば口調が攻撃的ではあるが)情報発信を行っている。日本社会は一昔前に比べれば女性差別の問題にはるかに敏感になっており、労働の現場で女性が差別されている現状のレポートと、国際比較における日本の男女格差の大きさをデータに基づいて告発する議論も、頻繁に目にするようになった。他方で、なぜそのような差別や格差が放置されているのかの原因については、日本社会における意識の「遅れ」「低さ」という以上に深められてこなかった印象がある。本書が、これまでの雇用・労働における女性差別の問題を扱った類書と根本的に異なるのは、女性差別が執拗に続いてしまう原因を、雇用システムという制度的な問題から論じている点にある。

 日本以外の先進諸国は「ジョブ型」である。つまり、人を雇用する場合はその仕事ができるかどうかの能力で判断され、職務の範囲も明確である。だから、その仕事が担えるのであれば、女性であろうと男性であろうと本質的に重要ではない。さらに著者によれば、既存の男性労働者が女性の労働市場への進出に対して、女性が同じ仕事を低賃金で担ってしまい、自らの賃金水準を下げることを恐れたことが、結果として同一労働同一賃金の原則を推進していったという。これもジョブ型社会であることの派生的な効果である。ジョブ型社会でも男女格差の問題はあるが、それはあくまで就いている職種に男女の格差が存在していることである。

 日本における雇用は「メンバーシップ型」である。厳しい就職戦線を勝ち抜いた後は、その企業に全人格を捧げる構成員となり、職務や勤務地の明確な定めもなく、膨大な残業や頻繁な配置転換、地方や海外への転勤に至るまで、あらゆる要求を柔軟に受け入れなければならない。これは、体力面に加えて、「出産」「育児」を抱えている女性にとって圧倒的に不利である。そのため日本では女性は「一般職」として、30歳までに退職することが暗黙裏の(そしてしばしば明示的な)慣例となってきた。本書ではこの時期の様々な、女性に対する待遇格差を正当化する言説が、メンバーシップ型雇用の傍証として引用されている。

 1985年に男女雇用機会均等法が制定されたが、あくまで男性の「総合職」のキャリアコースに女性も参入させる、という文脈に読み替えられたため、結果的に大多数の女性は途中で脱落していき、根本的な男女格差の解消にはつながらなかった。そして1990年代以降の非正規雇用の急増と雇用流動化のなかでも、その中核にあるメンバーシップ型の雇用システムはむしろ強固に維持された。この時期には露骨な女性差別の言説は少なくなったものの、正社員総合職の過労問題が解消しないという以上により悪化していったことで、男女格差はますます広がっていった。現在喧伝されている「女性活躍」に対しては、著者はそこでは依然としてメンバーシップ型雇用が前提とされている以上、必然的に均等法の失敗の二の舞になる運命にあると批判し、むしろ「ジョブ型」の働き方を広めていくべきであると主張する。

 正直なところを言えば、ジョブ型/メンバーシップ型という二分法で全てを解釈する著者の論理構成には、若干の違和感もないわけではない。しかし、なぜ法律的・制度的には世界水準の男女平等が整備されてきたにもかかわらず、現実には世界最低水準の不平等のままであるのか、という問いに対して「進んでいる/遅れている」という評価軸ではない形の説明を試みているものとして、まさに目から鱗の一冊である。

「目から鱗の一冊」と評していただきました。ありがとうございます。

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