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2016年2月 5日 (金)

炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法第7条

労働法に詳しい人でも、おそらく圧倒的に多くの人が知らないであろう法律の、そのまたさらに誰も知らないであろうある規定の話です。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO092.html

炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
(昭和四十二年七月二十八日法律第九十二号)

(福利厚生施設の供与)

第七条 使用者は、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症にかかつた被災労働者であつて、当該一酸化炭素中毒症に係る療養の開始後三年を経過した日において労働者災害補償保険法の規定による傷病補償年金を受けているもの又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつたものが、それぞれ当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、住宅その他の福利厚生に関する施設であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「福利厚生施設」という。)の供与を引き続き受けることを希望したときは、厚生労働省令で定める期間、当該福利厚生施設を供与しなければならない。

そもそもこれは、1963年11月、三井鉱山三池炭鉱三川鉱で起こった日本炭鉱災害史上空前の大事故に端を発します。炭塵爆発により坑道が破壊され、さらに爆発によって発生した一酸化炭素ガスが坑道内の作業箇所に流れ、20人が爆死、438人が急性一酸化炭素中毒で死亡、さらに生還した839人も一酸化炭素中毒に苦しむことになりました。患者の中には精神神経症状を呈する者が多く、職場復帰できない重傷者も少なくないことから、本人とその家族はより一層の援護措置を求めて激しい運動を展開しました。

事故から3年経つと、療養給付と休業給付が長期傷病補償給付に切り換えられるとともに、労働基準法上の解雇制限が解除されることになります。

社会党は既に1965年4月から特別措置法案を国会に提出してきました。これに対し政府は慎重な姿勢でしたが、1966年6月に参議院社会労働委員会が「政府は、一酸化炭素中毒被災者援護措置について、差当り炭鉱労働者に限り今後1カ年以内に立法措置を講ずるよう努力すること」と決議したことで特別法の立案に踏み切り、労災保険審議会の審議を経て、翌1967年6月に法案を国会に提出し、修正の上7月に成立に至りました。

社会党案では、労働基準法上の解雇制限が解除されることを前提に定年までの解雇制限をかけるとともに、一定の前収保障が含まれていましたが、政府案には盛り込まれていません。その代わりに国会修正で、使用者への一酸化炭素中毒者に対する差別的取扱いの禁止、作業転換等の措置義務、長期傷病補償給付受給者に対する福利厚生施設の供与義務が盛り込まれています。この最後の修正は、社会党案の解雇制限との関係で追加されたものです。すなわち、3年経って長期傷病補償給付に移行すると現行法では解雇されてしまいますが、炭鉱労働者にとって解雇されて差し当たり困難を来すのは社宅等の福利厚生施設の供与を受けられなくなることなので、解雇されても社宅に住み続けることができるように、という趣旨で盛り込まれたのです。

少なくとも、この1968年という時期には、総評も社会党も、労災保険の療養給付・休業給付が3年経って長期療養補償給付に移行すると、労働基準法上の解雇制限が切れて、解雇されてしまう状態になるということを当然の前提にして、それを制限する立法をしようとし、それがだめなら解雇されても社宅に住み続けられるようにしようという修正を勝ち取っているわけですね。

どうしてそういう認識が消えてしまったのか、というのも興味深い論点ではあります。

まあ、昨年最高裁が専修大学事件で判決を下してしまったあとで持ち出してみても、あんまり面白くないかも知れませんけど。

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コメント

エネルギー政策の転換と労組分裂、労働争議、そして炭塵爆発による死亡者と一酸化中毒による当時の医療技術と体制ではいかんともし難い当時のぼんやりとも記憶が、小生の生まれ育った地域での教育機関(小・中)での友人関係等々微妙に影響があったことと相まってよみがえる記事です。
件に関しては幼少期であり全く存じませんが、「中対オルグ60年」の曰く部分にはまちゃん先生の疑問への解があるようにも思われます。単に、鉱山労働者内での出来事を遙かに越えた行政区域全体の文化そのものにも強烈な影響を様々に波及させた事件であったことは確かですし、まだ終わったわけでもありません。久しぶりに少年に返りました。

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