本日より『日本の雇用紛争』発売
先日ご案内した『日本の雇用紛争』が本日より発売されます。
http://www.jil.go.jp/publication/ippan/koyoufunsou.html
上記リンク先より注文できます。
本書の内容を「はじめに」から紹介しておきますと、
本書は、2015年5月に公表した労働政策研究報告書No.174『労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析』をそのまま第2部として収録するとともに、その研究で用いた労働局あっせん事案の内容分析を第3部とし、併せて法政策の推移を第1部として一冊の書物にしたものである。
第2部の研究は、2014年6月24日に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-』において「労働紛争解決手段として活用されている「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析・整理については、本年度中に、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模などの各要素と解決金額との関係を可能な限り明らかにする」とされたことを受け、労働政策研究・研修機構において厚生労働省及び裁判所の協力を得て実施した調査研究である。その対象は、労働局あっせんについては、2012年度に4労働局で受理した個別労働関係紛争事案853件であり、労働審判については2013年(暦年)に4地方裁判所で調停または審判で終局した労働審判事案452件であり、裁判上の和解については2013年(暦年)に4地方裁判所で和解で終局した労働関係民事訴訟事案193件である。この研究担当者は、本書の著者である濱口桂一郎(主席統括研究員)と高橋陽子(研究員)の二人であった。
この研究に当たり、労働審判と裁判上の和解については、上記二人の研究員が裁判所内で、労働関係民事訴訟及び労働審判記録を閲覧の上、持参したパソコンに収集すべきデータを入力するという手法で資料収集を行ったため、第2部で用いている数値化されうるデータ以外に質的データは収集されていない。これに対し、労働局あっせんについては、労働局で受理したあっせん事案の記録(「あっせん申請書」、「あっせん処理票」、「事情聴取票(あっせん)」、「あっせん概要記録票」及び添付書類)について、当事者の個人情報を抹消処理した上で、その提供を受けているため、紛争事案の内容を分類分析するために必要な質的データが得られている。そこで、本書第3部において、紛争の類型化に有用な限りで、できるだけ事案の特徴を明らかにするような形で分析を進めていくこととした。
この部分は、2012年にJILPT第2期プロジェクト研究シリーズNo.4として刊行された『日本の雇用終了-労働局あっせん事例から』の全面改訂版と位置づけられる。ただし前回は、2008年度における4労働局のあっせん事案1,144件のうち、過半数の66.1%を占める雇用終了事案(解雇、雇止め、退職勧奨、自己都合退職など756件)を取り上げ、雇用終了理由類型ごとに詳しくその内容を分析したものであったが、今回は雇用終了事案に限らず、全事案853件を対象として分析を行っている。
本書が、雇用紛争をめぐる諸課題に関心を寄せる多くの方々によって活用されることを期待する。
目次は以下の通りです。
第1部 雇用紛争の法政策の推移1 労働基準法における紛争解決援助(1) 労働基準法研究会報告(2) 1998年労働基準法改正2 男女雇用機会均等法等における調停(1) 労働基準法研究会報告から婦人少年問題審議会建議まで(2) 1985年男女雇用機会均等法における調停委員会(3) その後の男女雇用機会均等法等における調停3 個別労働関係紛争解決促進法(1) 労使関係法研究会中間報告(2) 労使関係法研究会報告(3) 労使団体の提言(4) 全国労働委員会連絡協議会の提言(5) 個別的労使紛争処理問題検討会議報告(6) 個別労働関係紛争解決促進法の成立4 人権擁護法案における調停・仲裁5 障害者雇用促進法における調停6 労働審判制度(1) 司法制度改革審議会(2) 司法制度改革推進本部労働検討会(3) 労働審判制度7 仲裁第2部 労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析(労働政策研究報告書No.174)第1章 調査研究の目的・方法と制度の概要第1節 調査研究の目的と方法1 調査研究の目的2 調査研究の方法3 調査研究対象事案の範囲第2節 各労働紛争解決システムの概要1 労働局あっせん2 労働審判3 裁判上の和解第2章 労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較統計分析1 労働者の属性(1) 労働者の性別(2) 労働者の雇用形態(3) 労働者の勤続年数(4) 労働者の役職(5) 労働者の賃金月額2 企業の属性(1) 企業規模(従業員数)(2) 労働組合の有無3 終了区分(1) 労働局あっせん(2) 労働審判4 時間的コスト(1) 制度利用に係る期間(2) 解決に要した期間5 弁護士又は社会保険労務士の利用6 事案内容7 請求金額(1) 請求実額(2) 月収表示8 解決内容9 解決金額(1) 解決金額(2) 性別に見た解決金額(3) 雇用形態別に見た解決金額(4) 勤続年数別に見た解決金額(5) 役職別に見た解決金額(6) 賃金月額別に見た解決金額(7) 企業規模別に見た解決金額(8) 解決期間別に見た解決金額(9) 労働審判終了区分と解決金額(10) 弁護士又は社会保険労務士の利用と解決金額(11) 事案内容別に見た解決金額10 月収表示の解決金額(1) 月収表示の解決金額(2) 性別に見た月収表示の解決金額(3) 雇用形態別に見た月収表示の解決金額(4) 勤続年数別に見た月収表示の解決金額(5) 役職別に見た月収表示の解決金額(6) 賃金月額別に見た月収表示の解決金額(7) 企業規模別に見た月収表示の解決金額(8) 解決期間別に見た月収表示の解決金額(9) 弁護士又は社会保険労務士の利用と月収表示の解決金額(10) 事案内容別に見た月収表示の解決金額第3章 若干の考察第3部 日本の雇用紛争の内容分析(労働局あっせん事案から)はじめに一 解雇型雇用終了Ⅰ 労働者の行為1 労働者の発言への制裁(1) 年次有給休暇等の取得(2) その他労働法上の権利行使(3) 労働法上以外の正当な権利行使(4) 社会正義の主張(5) 前勤務社での権利行使2 労働条件変更拒否(1) 配置転換・出向拒否(i) 配置転換(勤務場所)拒否(a) 配置転換(勤務場所)に係る変更解約告知(ii) 配置転換(職務)拒否(a) 配置転換(職務)拒否による解雇等(b) 配置転換(職務)に係る変更解約告知(iii) 出向・転籍拒否(a) 出向・転籍拒否による解雇等(2) 雇用上の地位変更拒否(i) 雇用上の地位変更拒否による解雇等(ii) 雇用上の地位変更拒否に係る変更解約告知(3) 降格拒否(i) 降格拒否による解雇等(4) 労働条件引下げ拒否(i) 労働条件引下げ拒否による解雇等(ii) 労働条件引下げに係る変更解約告知3 労働条件変更の要求4 労働者の態度(1) 業務命令拒否(2) 業務遂行態度不良(3) 職場のトラブル(4) 顧客とのトラブル(5) 欠勤・休み(6) 遅刻・早退(7) 不平不満の発言(8) 相性5 非行(1) 不正行為(i) 情報漏洩(ii) 顧客奪取(iii) 不正経理(iv) その他(2) 業務上の事故(3) 職場の窃盗(4) 職場におけるいじめ・セクハラ(5) 素行不良(6) その他6 私的な事故7 私生活上の問題(1) 結婚(2) 男女関係8 副業Ⅱ 労働者の能力・属性1 労働者の能力(1) 具体的な職務能力不足(2) 職業資格(3) 成果未達成(4) 仕事上のミス(5) 一般的能力不足(6) 不向き2 労働者の傷病(1) 労働災害・通勤災害(2) 私傷病(3) 慢性疾患(4) 精神疾患(5) 体調不良3 労働者の障害(1) 身体障害(2) 知的障害(3) 精神障害4 労働者の年齢・定年5 労働者の性的志向6 家族の属性Ⅲ 経営上の理由1 正社員2 直用非正規(1) 期間途中解雇(2) 雇止め3 派遣(1) 期間途中解雇(2) 雇止め4 内定取消等(1) 内定取消(2) 待機5 表見的整理解雇6 コマからの外し7 仕事の無発注Ⅴ 理由不明二 非解雇型雇用終了Ⅰ 労働条件に起因する非解雇型雇用終了1 労働条件変更(1) 配置転換・出向(i) 配置転換(勤務場所)(ii) 配置転換(職務)(2) 雇用上の地位変更(3) 労働条件引下げ(i) 賃金引下げ(ii) 労働時間短縮に伴う賃金引下げ(iii) 労働時間の延長(iv) 年休取得拒否(v) 社宅退去(vi) 通勤手段変更(4) 休職・自宅待機等(i) 休職(ii) 自宅待機(iii) 労働者からの内定取消2 労働条件の水準(1) 雇用上の地位(2) 労働時間(i) 労働時間(ii) 休日(iii) 夜勤(iv) 時間外訓練(3) その他(i) 配置転換希望拒否(ii) 交通事故(iii) 盗難Ⅱ 職場環境に起因する非解雇型雇用終了(1) 直接的な身体的攻撃(i) 経営者、上司、同僚等(ii) 顧客等第三者(2) 物理的脅し2 精神的な攻撃(1) 主に業務に関連した発言(2) 主に業務に関連しない発言3 人間関係からの切り離し(1) 能動的な切り離し(2) 受動的な切り離し4 過大な要求(1) 事実上遂行不可能な要求(2) 心情的に抵抗のある要求・行為5 過小な要求(1) 仕事を与えないこと(2) 程度の低い仕事を命じること6 個の侵害(1) 私的なことに関わる不適切な発言(2) 過剰な管理7 経済的な攻撃(1) 経済的不利益を与えること(2) 労働者の権利を行使させないこと8 行為不明Ⅲ 懲戒処分Ⅳ 傷病・障害等1 精神疾患2 精神障害3 外国人差別Ⅴ コミュニケーション不全三 雇用終了以外の事案Ⅰ 労働条件1 労働条件変更(1) 配置転換・出向(i) 配置転換(勤務場所)(ii) 配置転換(職務)(iii) 出向・転籍(2) 雇用上の地位変更(3) 降格(4) 労働条件引下げ(i) 賃金引下げ(ii) 労働時間短縮に伴う賃金引下げ(iii) 賃金の精算(5) 休職・自宅待機等2 労働条件の水準(1) 賃金(2) 労働時間(i) 労働時間(ii) 休憩時間(iii) 年次有給休暇(3) 安全衛生3 その他(1) 健康診断(2) 交通費(3) 転居(4) 労働者からの借金(5) 求人の虚偽表示(6) 紹介予定派遣(7) 盗難(8) 教育訓練(9) 食事代(10) 交通事故費用Ⅱ 職場環境1 身体的攻撃(1) 直接的な身体的攻撃(i) 経営者、上司、同僚等(ii) 顧客等第三者(2) 物理的脅し2 精神的な攻撃(1) 主に業務に関連した発言(2) 主に業務に関連しない発言3 人間関係からの切り離し(1) 能動的な切り離し4 その他の嫌がらせ5 行為不明Ⅲ 懲戒処分Ⅳ 賠償四 退職をめぐるトラブル(1) 使用者側の退職拒否・希望退職拒否(2) 退職撤回の拒否(3) 退職時期(4) 賞与(5) 退職金等(6) 退職時の精算(7) 教育訓練費用(8) 住宅費(9) 雇用保険(10) 社会保険○ 制度対象外事案(1) 賃金不払い(2) 労働時間性
« マイナビニュースで日野瑛太郎さんが拙著書評 | トップページ | 社会保険というのは、払った分は返ってくるのが大原則!!!??? »
« マイナビニュースで日野瑛太郎さんが拙著書評 | トップページ | 社会保険というのは、払った分は返ってくるのが大原則!!!??? »
コメント