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2016年1月26日 (火)

タレントと文化人

ねずみ王様のつぶやきに触発されて、

https://twitter.com/yeuxqui/status/691807551160242176

なぜ「識者」のコメントを取る必要があるのかという大本のところが忘れ去られた結果であろう。というか関西のテレビ番組では、「識者」がプロダクション所属なのだろう、大変なことになっている。

裁判例から一例:

http://homepage3.nifty.com/hamachan/yoshimoto.html (中央労働基準監督署長(Y興業)事件(東京地判平成25年8月29日)(労働経済判例速報2190号3頁))

Ⅰ 事実

1 当事者

X(原告):Y興業の従業員(文化人D(勝谷誠彦)担当のマネージャー)、女性

被告:国

Y:興業会社(吉本興業)

E:Y専属タレント(島田紳助)

・・・・・・・・

Ⅲ 評釈 1に疑問あり。2,3は賛成。

1 本件事件(Eによる暴行)による災害の業務起因性

 本判決は、Xの遂行すべき業務範囲が「文化人D担当のマネージャー」であることから、その範囲外である専属タレントEへの話しかけを私的行為と判断している。しかし、被告主張にもあるように、「XがY興業所属の社員(マネージャー)であり、EがY興業の専属タレントであることから、このような両者の会話については業務性が肯定されるという見解もあり得る」のであり、もう少し細かな考察が必要である。

 事実認定において、判決はX側の「Xが業務遂行場所における業務遂行途上において、Y興業専属の大物タレントが一人で放置されていたことから声かけするのは職場における社員として常識的な行動である」との主張に対し、「本件事件当時、Eが特に担当マネージャー以外のY興業の社員からの声かけを必要とするような状況にあったことはうかがわれない」とか「XがEに話しかけた動機としては、職務上の立場とは無関係に、個人的な懐かしさの感情から話しかけたとみるのが相当である」と退けている。しかし、この論点の立て方では、Xがたまたまその時点で担当していたDのマネージャー業務以外は、Yの業務であっても特段の理由がない限り私的行為となってしまい、現実の日本における仕事のあり方とやや齟齬があるように思われる。X側が以下の論点をまったく提起していないので、いささか仮想的な議論になるが、本来はこういう議論があるべきではないか。

 判決文には示されていないが、XはDのマネージャー業務に限定してY興業に採用されたわけではないように思われる。本件事件当時Dのマネージャーを担当していたとしても、今後他の様々なタレントを担当する可能性はあったであろうし、その時のために、担当ではない時期から他のタレントに挨拶し、いわゆる顔つなぎをしておくことは、職業人生全体の観点からすれば将来の業務の円滑な遂行のための予備的行為としての側面があり、まったく個人的な行為とみることはかえって不自然ではなかろうか。現実の社会では、業務の輪郭はより不分明であって、Eに挨拶すること自体を厳密にXの業務範囲外と断定することには違和感がある。ちなみに、判決文ではEは「大物タレント」、Dは「文化人」と書かれており、それぞれのマネージャー業務は一見異なる種類の業務のように見えるが、実は両者ともY興業に属してテレビのバラエティ番組で半ば政治評論的、半ば芸能人的なコメントを行うタレントであって、一般社会的にはほとんど同種の業務と見なしうるように思われる。

 そしてこれを前提とすれば、将来担当する可能性を否定できないEが、過去幾多もの暴力事件を起こし、社内やテレビ局内でも暴力事件を起こしていたことから、本件事件による災害がEを専属タレントとして抱えて業務を遂行する過程に内在化されたリスクとのX側の主張も、「相当でない」と安易に退けることは疑問がある。

 もちろんこれに対しては、その時点での担当業務ではないにもかかわらず、将来担当したり関わったりする可能性のあるタレントと顔つなぎをしておきたいという意図で声かけをすることには、業務性は認められず、業務に関連した私的行為に過ぎないという反論もあり得る。ただ少なくとも、この論点を欠いたままの「個人的な懐かしさの感情」との判断には、いささか短絡的との感を免れない。

関西のテレビ番組では、タレントと文化人というのは同一のカテゴリーに属するようです。

もしかしたら東京も似たようなものかも知れませんが。

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コメント

タレントセクターが伝統的専門職と学歴併用総合職に分化・進化したと期を一にして、文化人(小生に理解ではそういう方は日本ではほんの一握りで、それも最早絶滅危惧種)と称されるセクターも、伝統的に研究没頭世間無視型仙人職と、籍を社会知識人とされる幻想の教育・司法職に代表される知的らしき権威を利用しながらも、その主たる欲望達成に対してあくまでそれは非正規的職責に徹し、残存時間のタレント活動極大化=ギャラ獲得極大化にこそ人生限界効用を計る二極化が見事に進んだ帰結であります。誰か曰く「知識人かなんか知らんが、まともな研究者はテレビ等(単発も然りながらレギュラーで拘束されるなんて)に使える時間的余裕も精神的余裕もありませんよ」と。誰かとは小生です。ですから使用者側(メディア)もいわゆる「枠」を設けているというまことしやかな噂話が説得力を持つのも必然的であります。今騒動のタレントセクターも同類ですね(笑)。

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