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2016年1月 7日 (木)

2016年のキーワード「同一労働同一賃金」  

Hyousi12『先見労務管理』1月10日号に「2016年のキーワード「同一労働同一賃金」」を寄稿しました(左の表紙は前号)。

キーワードは全部で5つで、それぞれの執筆者と並べると、なかなか・・・面白いものがありますね。

キーワード1 介護離職 佐藤博樹

キーワード2 同一労働同一賃金 濱口桂一郎

キーワード3 解雇の金銭解決 城繁幸

キーワード4 パートの正社員化 平田未緒

キーワード5 ブラックバイト 今野晴貴

拙論文の最後の一節を紹介しておきましょう。

・・・ 率直に言えば、現状は、①自分たちの年功賃金制をその根底で生み出し支えている定期昇給制を止める気はさらさらないくせに、実は他人事である非正規労働問題に真剣に取り組んでいるふりをするために同一労働同一賃金原則を掲げて要求する労働側と、②中高年の高賃金に対しては年功制を批判して成果主義で叩くくせに、非正規労働に関する限り断固として同一労働同一賃金を拒否する経営側と、③労使は本音ではやりたくないものはやれるはずない・・・と内心思いながら、政治主導で降りてくる政策には逆らえないと諦めている行政側の三者が奇妙に絡み合っているところであろう。

あえて今後の動向を予測すると、中長期的には同一労働同一賃金原則に基づいた職務給型の賃金制度への移行を展望しつつも、当面の対策としては現在の賃金制度をある程度前提とした「均等待遇」を進めていくことにならざるを得ないであろう。その際、正社員と非正規労働者に共通に勤続期間に比例した取扱いをするとともに、正社員と非正規労働者の働き方や義務の違いを具体的に明示し、それに対応した格差という形で合理的な理由を認めていくことが、一つの方向性として浮かび上がってくるように思われる。

ちなみに、城繁幸氏はこの期に及んで未だに、

現在の日本の正規雇用に対する解雇規制は先進国中最も厳しいレベルで・・・・

などと、どこの国の話かと思うような文章で書き始めておりますな。せっかくの重要なテーマを、初めの1,2行を見ただけで読むのをやめてしまう人が出ないことを、編集部のためにも期待したいところです。

なにしろ、厚労省の検討会で解雇金銭解決の急先鋒となっている八代尚宏氏自らが、その著書で

・・・日本の解雇規制の真の問題点は、それが厳しすぎることではなく、紛争解決のルールが不明確なことである。・・・

と明確に述べるに至っているのに、そういうまっとうなネオリベラル経済学者の意見すらも顧みず、ほとんど誰にも共有されない独自の見解を吐ける神経は、もし学問的誠実さのかけらでもあるのであれば、なかなか理解しがたいところではありますね。

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コメント

雇用契約書に何も書いていないにもかかわらず、会社都合の整理解雇、つまり一方の当事者の事情による契約解除が一定の場合に認められるのですから、日本の「解雇規制」とやらは先進国中でもっとも甘いといってよいのではないかと思いますけどね。

日本でも普通の売買契約なりに即して考えれば、まずあり得ない話とわかるはずと思うのですが。つまるところ、債務放棄なわけですから、倒産でもしない限り認められない、というのが普通の感覚じゃないのですかね。アホの評論家はともかく、経営者が口にするのはやばいといいますか、お前のところの会社は取引先との契約もそんな風にいい加減に考えとるんじゃないのか、と思ってしまいますね。

ケインズ卿はこのように宣った(とされる)そうです。「経済学の世界では人は反対者に誤りを悟らせることはできない。できることは反対者に誤りを確信させるだけだ。そして、自分が正しい場合でさえ……
反対者の頭が既に相容れない意見でふさがれていたら、反対者を説得することはできない」byポール・デイヴィッドソン著・小野谷俊夫訳「ケインズ」一灯舎。
この記事にしても、たとえば思想とはその対峙するものがあってはじめて生命力を得るシロモノであるとすれば、一切対峙することもなく柳腰であることで、それが対価(社会的な役得のあるポジション)を得る手段が逓減の法則に近似し(これまた社会科学の自然秩序主義に対する隷属の証左であるとも思うのですが)劣化するのでしょうか。しかしケインズ卿の言葉(とされる)は人の業をよくよく知り抜いた文明発展とそれによる混乱の20世紀が生んだ異端人であることは間違いないようです。しかし、かれは自由党党員としての思想家であり、政治家であり、実業人であったわけですから「お言葉」(笑)をそもまま真に受けるわけにもいきません。ここは社会科学が科学であるために評価を避ける「価値」を引っ張り出し、同一労働○○同一賃金の間の○○の中に「価値」の文字を入れ込むとどうなるかをはまちゃん先生にご教示お願いします。

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