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老婆心ながら、この本で女性労働の歴史を学びたいという方には、おやめなさいと申し添えておきます

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 もったいぶらずにさっさと公開してくださいよ、とお願いしたら、さっさと公開していただきました。

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-408.html

結論としては、「老婆心ながら、この本で女性労働の歴史を学びたいという方には、おやめなさいと申し添えておきます」というかなりの辛口の批評です。

まあ、それはいつものことなのですが、今回の御批評には、正直かなりの立ち位置の違いを感じました。半封建的日本資本主義の構造とか低賃金とか、いかにも社会政策学会主流派の視点だな、と。もちろんそれはそれでいいのですが、本書で取り上げてきた一方では労働省婦人少年局の女性官僚たちからオビで「絶賛」している上野千鶴子さんたちフェミニストたちの視点をぬきに、法政策を軸にした女性労働の話はできないのも事実です。

まあ拙著はそれをそのままなぞるんではなく、マル経や小池理論の読み直しというかたちでそこの視座をずらしているつもりですが、基本はそこにあるので、それこそわざわざ予防線を張っていた「ここが足りない、あれが欠けているという話」をあれこれされると、いや確かにそれは仰るとおり、としか言えないのですが。

実は、金子さんが指摘する「農業労働、中小(零細)企業などにおける家族労働、女中(あるいは家政婦)、請負(要するに内職)の話がまったく出て来ません」以前に、第1章の最初のところで出てきた女工さんたちが、終戦直後の近江絹糸の人権争議を最後に出てこなくなります。いつの間にか、BGやOLが差別されてるってな話だけになっていて、それこそが女性労働の本といいながら最大の偏りではないか、と強く批判されてしかるべきところとすら言えるでしょう。

まあそこをわかった上で、そこが女性労働政策の転換を駆動した部分であるからそういう叙述にしているわけではあるのですが。なので、「この本で女性労働の歴史を学びたいという方には、おやめなさいと申し添えておきます」というのは、ある面では仰るとおりではあるのですが、とはいえそういう伝統的社会政策的視点だけでは逆に上野千鶴子さんとは対談の接ぎ穂がなくなってしまうかも知れませんね。

(追記)

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-410.html

金子さんがリプライを書かれたので、とりあえず一言だけ。

>正直、マル経や小池理論の読み直しでのずらしは蛇足でしょう。

いや、そこがこの本のある意味で肝です。蛇足どころかキモ。

何人かの労働法学系の方からの反応では、(他の部分はかなり学界の共通認識には入っていても、この部分はそうではないこともあってか)ここが結構受けていました。

ある意味で「ソーシャル」な理論が、それ自体もっとも女性差別的なロジックとして機能した、というこのアイロニーの指摘は、少なくとも社会政策学会の歴史では折に触れちらちらと出ていたはずで、おそらくそれを一番明確に言い切っているのは大沢真理さんでしょう。しかし、その外の世界ではほとんど認知されているとは言いがたい。莫迦なネトウヨがフェミとサヨクの区別も付かないためもあるでしょうが。

それがあるので、この本は何とか存在理由が残っているので、それがなければ大して意味はありません。少なくとも私はそう思っています。

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濱口先生からリプライをいただいたのですが、ちょっと、話がおかしくなっている気がするので、もう一回、交通整理しましょう。私が認識枠組みの話と政策の次元の話をわけて書かなかったのが行けないのでしょう。 第一に、私はマルクス主義的な見解を支持するわけでもなんでもなくて、濱口先生がわざわざ引き合いに出されているので、伝統的なものをすっ飛ばした妙な読み替えはいかがなものかということを言っているの...... [続きを読む]

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