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お金は百薬の長?

近年日本でもメンタルヘルス問題が大きな社会問題となり、今月から始まったストレスチェック制度も新聞雑誌等で取り上げられている中で、ついせんだっては愛知県方面でなにやらこの関連で不穏当なことを書き散らした社労士が話題になったりしています。

112050118 3年前の『日本の雇用終了』の中で、個別労働紛争事案におけるメンタルヘルスの悪化傾向について、こう述べたことがありますが、

 雇用終了事案の中でも、職業能力という観点からの精神疾患を理由とする雇用終了を始めとして、労働者側のメンタルヘルス上の問題が原因となっているケースが多いが、それ以外にも労働者のメンタルヘルス状態が何らかのかかわりを有する紛争はかなりの数に上り、今日の日本の職場における社会的精神健康状態の悪化を示唆している。

最近はますます昂進しているように思われます。

そういう中で、今更ながらな感もありますが、ある意味でコロンブスの卵的な意義があるのではないかと思われたのが、メンタルヘルスと「お金」の関係を、ストレートに実験で明らかにしたこの研究でしょう。

http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10597-015-9950-9

Money and Mental Illness: A Study of the Relationship Between Poverty and Serious Psychological Problems」(お金と精神疾患:貧困と深刻な精神的問題との関係に関する研究)

スウェーデンの研究者4人とアメリカの1人の計5人によるこの研究の概要は、

Abstract Several studies have indicated a co-occurrence between mental problems, a bad economy, and social isolation. Medical treatments focus on reducing the extent of psychiatric problems. Recent research, however, has highlighted the possible effects of social initiatives. The aim of this study was to examine the relation between severe mental illness, economic status, and social relations. Method: a financial contribution per month was granted to 100 individuals with severe mental illnesses for a 9-month period. Assessments of the subjects were made before the start of the intervention and after 7 months’ duration. A comparison group including treatment as usual only was followed using the same instruments. Significant improvements were found for depression and anxiety, social networks, and sense of self. No differences in functional level were found. Social initiatives may have treatment and other beneficial effects and should be integrated into working contextually with persons with severe mental illnesses.

重い精神疾患を患う100人に精神科治療と社会サービスに加えて、9ヶ月間毎月500クローネ(=73ドル、53ユーロ)の「financial contribution」を与えて、比較対照群の50人にはそちらは与えなかったと。そうしたら、うつや不安、社会ネットワーク、自己意識等に顕著な改善がありましたと。お金こそ百薬の長であったと。

厳密に言えば、比較対照群の方もスウェーデンの手厚い福祉を受けているんで、それも受けられずに見捨てられているメンヘラとの比較にはなっていませんが、それはスウェーデンの研究ですから。

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EUの労働法政策」カテゴリの記事

コメント

うつ病リワークの臨床心理士の方が、ジャンボ宝くじが当たったらうつ病治る人たくさんいますよって冗談言ってました。

投稿: Munchkin Cat | 2015年12月20日 (日) 16時56分

いつも拝見させて頂いております。
僭越ながら、ファイルのURLが、hamachan様のPCのローカルアドレスのようです。

投稿: ななし | 2015年12月21日 (月) 21時51分

ご指摘ありがとうございます。直しました。

投稿: hamachan | 2015年12月21日 (月) 23時11分

お金の量じゃないとすると、他人より得をしている、優越感或いは興奮のようなものがポイントなのかなと。

他の国民と同額の福祉金を得ているのではそういうお得感は得られないでしょうからね。

投稿:   | 2015年12月22日 (火) 09時24分

おっしゃるように一種の興奮状態、つまり躁を生み出しているだけです。これはこれで危ないことはみなさんご承知でしょう。躁状態こそ命の危険を生むことを。そして運良くそこをすぎたその後にくる鬱状態はそれをレバレッジに飛躍します。この問題は発症からの時間をフローとストックの両方から診ないと最後に頼るのは日本特有の薬物療法ということになりかねません。社会に受け入れるこのブログで話題となった「素養」が存在しているか否かで制度含め社会の景色はま逆となります。

投稿: kohchan | 2015年12月22日 (火) 11時45分

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