早くも『働く女子の運命』にアマゾンレビュー
奥付の発行日は今日(12月20日)とはいえ、実際に書店に並んだのは一昨日(12月18日)ですが、それにしても早くも『働く女子の運命』にアマゾンレビューが現れました。
評者は小倉光雄さん。拙著の主張を丁寧にフォローしていただいております。
働く女性がであう問題が、どうして起きているのかを問うと日本型雇用制度に行き着く。その歴史的成立を戦前期からひもといていく。欧米型がジョブ、仕事に対して賃金を支払うのに対して、日本では組織のメンバーである事に対して支払う。後者は、仕事の結果でなく生活できる賃金、家族を支える男性にそれが可能な賃金をを支払うという事だ。これは、戦後の組合運動で主張されてもきた事で、マルクス経済学の理論、つまり労働力とは労働者の再生産費用であり、それをきちんと要求しようと言うわけだ。戦後のある時期、高度成長期以前はジョブ型に移行しようと言う提言が少なくとも経営側からはされていたが、日本型経営システムの世界的評価も相まって、高度成長が揺り戻しを招いた。しかし、男女平等の世界的流れには日本も乗り、いろいろの施策が成されてきた。女性労働力がBGやOLと呼ばれていた時代の、事実上の30歳定年制、結婚退職の強制や”職場の花”扱いは、今では信じられないような状態であると感じるのも、少しずつ進歩しているからではある。多くの抵抗にあいながら1985年に成立した男女雇用機会均等法は努力目標であったが、1997年に大幅改正された事も進歩と言える。
しかし、その進歩は日本型雇用に平等政策を継ぎ木したせいで、企業の側では一般職と総合職のコース別採用にいたり、女性は主として転勤なしの一般職で採用した。今はこの部分が派遣職に置き換わりつつある。また、少数の総合職女性は一般職女性と軋轢を生みつつ、男性と時間無制限で働く前提で競争しなければならず、それにもかかわらずキャリア形成で差別があり疲弊していった。現在、少子化対策として育休の導入が図られ、少しずつ前進してはいるが、軋轢もある。それは皆が時間無制限で働く前提でお互い融通しあって回っていた仕事が、定時で帰る育休あけの女性のため残りのメンバーが極限まで働くはめになると言う問題だ。
著者の処方箋は、激変をさけつつ(日本型雇用が生む新入社員の一括雇用のため、欧米で問題になるような若年層だけ失業率が高くなる問題が避けられている)、一般職こそが普通の働きかたであり、男性も含めて働きようをかえる必要があり、そこから徐々にジョブ型に移行しようと言う物だ。経済成長なしでは福祉もできないし、少子化は確実に経済や年金に響く現実の中でうまくいくだろうか、心配である。
著者は労働省出身なので、理論や歴史的側面からの叙述が多く、企業の現場の話は多くはないが、女性の雇用の問題が男性をも含めた雇用システムに起因すると言う事はよくわかった。また、ここには非正規雇用の問題は扱われていない、著者あとがきによれば、あまりに大きな問題で新書の一部分としては扱えなかったのと、非正規問題は女性の働き方と言う観点からは、問題に迫れないと言う考えから、当初原稿には書いたものの削除せざるを得なかったそうだ。問題点の背景がよくわかる良書と思う。
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「上野千鶴子絶賛!」って、上野先生こんな基本的なこともわからないで今まで何十年も論陣張ってらしたのですか?頭が痛い…
投稿: くみかおる | 2015年12月22日 (火) 13時51分