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2015年11月19日 (木)

神職(権禰宜)の労働者性

気がつきませんでしたが、先週こんなニュースがあったようです。

http://www.nikkansports.com/general/news/1564904.html (神職男性の解雇「無効」福岡市の住吉神社に賠償命令)

「日本三大住吉」とされる福岡市の住吉神社の権禰宜(ごんねぎ)だった男性が、宮司からパワハラを受け、違法に解雇されたとして、神社に地位確認などを求めた訴訟の判決で、福岡地裁は11日、「解雇は不合理で無効」と認め、神社側に未払い賃金や慰謝料の支払いを命じた。

おやおや、神職が解雇無効地位確認訴訟です。ときくと、神職の労働者性はどうなの?と思いますね。

争点は神職が労働者に当たるかどうか。訴訟で神社側は「旧労働省の通達(1952年)は、宗教上の儀式や布教に従事する人は労働者に該当しないと定めている」として、男性は労働者ではないと主張した。しかし山口浩司裁判長は判決で「通達は実情に即して判断するとも規定している。神社の指揮監督下で働き、一般の労働者と同様に対価として賃金を受けている」と判断し、労働者と認定した。

おお、正面から労働者性を認めていますね。

この通達(昭和27年2月5日基発49号)はこれですが、

法の適用に当っては、憲法及び宗教法人法に定める宗教尊重の精神に基づき、宗教関連事業の特殊性を充分考慮すること。宗教法人又は団体であっても労働基準法上に所謂労働者を使用していない場合に、法の適用がないことは言うまでもなく、具体的に問題となる場合を挙げれば次の通りであること。

イ 宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職者等で修行中の者、信者であっても何等の給与を受けずに奉仕する者等は労働基準法上の労働者でないこと。

ロ 一般の企業の労働者と同様に、労働契約に基き、労務を提供し、賃金を受ける者は、労働基準法上の労働者であること。

ハ 宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基いて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者については、具体的な労働条件、就中、給与の額、支給方法等を一般企業のそれと比較し、個々の事例について実情に即して判断すること。

判決文は見られないので、具体的にどういうロジックで労働者性を導いているのかはよくわかりませんが、むしろ宮司によるパワハラの認定から、パワハラを受けるような関係すなわち指揮監督下にあるという判断が導き出されているのではないかと思われます。

その上で「男性の勤務態度に解雇を正当化するほどの問題があったとは言えない」と指摘。宮司の暴力や暴言も認定し、神社側に110万円の賠償を命じた。

 判決によると、男性は宮司に腕や頭を殴られたり、丸刈りを強制されたりしたほか、「給料泥棒」などの暴言を受けた。神社は男性の業務に問題があるとして2013年、解職を通知した。

まあ、宮司自身が権禰宜を「給料泥棒」と罵っているのだから、給料をもらっている人すなわち賃金労働者であると認めているじゃないか、という筋道なのかも知れません。

なんにせよ、これは面白い。ちなみに、過去本ブログでは芸能人やスポーツ選手の労働者性についてはいろいろとエントリを書いておりますが、宗教関係では、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-fd0d.html (神の御前の労働契約法と労働組合法)

宇佐神宮の権宮司が解雇されたと高天の原は大騒ぎです。・・・

うわわ、神に仕える身の宮司さんが解雇されたとか、団体交渉とか、しかも出てくる組合が建交労ですよ!

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-00c0.html (神の御前の労働基準法)

・・・いやあ、巫女さんの労働者性というのは、建前論的にはなかなか難しいところがあります。

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コメント

これは興味深いというか虚を突かれました。

パワハラか否かは小生には定かではありませんが、月命日に毎月お越しになっていた僧侶が解雇通告されて父に相談されていたことを思い出しました。
当時(20年ほど以前のことですが)司法で争い労働者との認定がなされていたら今頃…

銀座ママは労働者か? 判決は | 2015年11月22日(日) - Yahoo!ニュース http://news.yahoo.co.jp/pickup/6181698 #Yahooニュース

さあ濱口先生はりきってどーぞ!

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