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2015年11月18日 (水)

業者間協定方式は黒歴史じゃなかったかも知れない

Dio 連合総研の『DIO』309号が送られてきました。特集は「地域の人材定着につなぐ労働の質」ですが、そのうち興味深かったのは吉村臨兵さんの「地域の人材定着に役立つ公契約の規整」という文章でした。

http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio309.pdf

タイトルの通り、主たる論点は公契約条例なんですが、その中にこんな一節があるのです。

・・・賃金水準の地域労働市場との関係について、 半世紀以上前の静岡県の状況をみておきたい。 当時の法定最低賃金は、現在のように最低賃 金審議会の調査審議によらず、業者間協定を 追認するかたちのもの8 が普及しはじめるところ だった。・・・

。・・・以上によって確認できることは、経済的環境 しだいで、直接には労働者の参画によらず、事 業者の団体が率先して地域の賃金相場の最低 限を定める場合があるということである。ここ の事例に伺われる動機は、労働力不足の局面 にありながらできるだけ賃金額の上昇を抑制 し、かつ、その水準は近隣他地域とくらべてあ まり遜色のないものにしたいということだろう。  そうすると、近年の公契約条例の賃金条項を めぐっても、従事する労働者と受託する事業者 双方にとっての利害関係を、一律に対立的にと らえるのは早計ということになる。というのも、 むしろ公契約条例は、労働力の確保などの点 で事業者にも利益となりうる賃金上昇を可能に する媒体だからである。もし仮に、自治体の入 札によく参加し、人件費も大きなウェイトを占め るような産業において、半世紀前の例と同じく DIO 2015, 11 ― 10 ― DIO 2015, 11 賃金の最低水準を事業者団体が定めようとす れば、談合と見なされるおそれもあろう。それ に対して、すでに賃金条項をもつ自治体の多く で取り入れられているように、審議会の形態の もとで地域の当事者の参画をえながら透明な合 意形成をすれば、談合のそしりを受けることな く賃金水準が設定できるのである。

もちろんここで論じられているのは、公契約条例を進める上で「直接には労働者の参画によらず、事 業者の団体が率先して地域の賃金相場の最低 限を定める」ことも意味があるんだよ、ということなんですが、公契約にかかる賃金水準に限らず、最低賃金そのものについてもこういう議論を改めて考え直してみる必要もあるのではないか、ということも感じるのです。

少し前に本ブログで、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-503d.html (業者間協定は最賃の黒歴史か?)

・・・今になって考えれば、当時あれだけ「ニセ最賃」と罵倒していた業者間協定をうまく使って、それに関係労組をうまく載っけるかたちでのソフトランディングってできなかったのだろうか、という思いもする。

土俵は既にあったのだ。その、企業を超えた賃金設定システムという土俵を、たたきつぶして、もはやその夢のあとすら残っていない。・・・

ということを述べてみましたが、それこそ介護とか建設といった社会的に労働力が必要なのに労働条件が低劣であるために人が集まらず人手不足に陥っているいくつかの業種について、労働組合の組織もほとんど進んでいない状況にあることも考えると、業者間協定というか、経営者団体主導のかたちで地域最賃よりもかなり高いレベルで産別ないし職業別最賃を設定するような方向への議論というのはあり得ないのか、と結構思います。

そんなのは最賃の本筋に反するという反論は重々承知の上ですが、それだからといって、今のように、どうしても国内で労働力が必要なのに人手不足だから外国人を入れようという方向にどんどん進んでいくことに比べたら、悪さの度合いは少ないのではないか、と。

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コメント

アニメの世界で同じことができないかな…と一瞬思ったのですが、この手「すら」効かない業界でしたね。何しろ絵描きたちは「雇用」すらされていないから最低賃金という概念がそもそも当てはまらない。なぜそういう業界構造になってしまったのかは、ここで論じたとおりです。www.godo-shuppan.co.jp/img/K_yumenokuniha.pdf

まさに「市場」なのですね。新自由主義者が唱える市場は自営業や零細な商売形態群にしかありませんから。もてはやされる市場って垂直的でも水平的でも時の都合にあわせた専門家の都合の良いトートロジーな解釈で要は統合で競争はない世界ですから、どの規模の労働社会に属するかでそもそもその要求は違ってくるということですね。大変なご職業だと思います。そりゃ学生が中小の内定を断って大企業に入りたがるわけです。

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