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2015年11月

組織変動と労働契約承継法@WEB労政時報

WEB労政時報に「組織変動と労働契約承継法」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=468

 厚生労働省が昨年12月から開催していた「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」が、去る11月20日に報告書を取りまとめました。

※厚生労働省「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」報告書⇒資料(PDF)はこちら

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104902.pdf

 この研究会は、当初医療法人や農協など会社以外の法人に分割法制が導入されるということで、急遽急きょ検討を行い、今年3月に中間とりまとめを行って、その結果が既に農協法や医療法の改正に盛り込まれていますが、その後は2005年の会社法制定や裁判例の蓄積を踏まえて、労働契約承継法の在り方についての検討を行ってきました。ここではもっぱら後者について解説します。

 さて、労働契約承継法は2000年の商法改正に伴って作られた法律です。同改正は、それまで営業譲渡というやり方でしか行えなかった事業の移転を、会社分割というやり方でできるようにしたものです。営業譲渡は個別承継なので、ほかの債権債務と同様に・・・・

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『ジュリスト』12月号の「労働者派遣法改正」特集

L20150529312 『ジュリスト』12月号が「労働者派遣法改正」を特集しています。

http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/019461

【特集】労働者派遣法改正――新たな規制の枠組み

◇労働者派遣法改正のあらまし●厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部 需給調整事業課……14

◇「期間」規制と労働者派遣のこれから●小西康之……20

◇改正労働者派遣法と派遣活用企業・派遣会社の人材活用上の課題●佐藤博樹……26

◇労働者派遣法改正の労働市場への影響●安藤至大……32

◇労働者派遣法改正を受けて――働く者の立場から●日本労働組合総連合会……39

◇労働者派遣法改正を受けて――使用者の立場から●日本経済団体連合会……42

法律雑誌ですが、学者の論考3つは労働法、人事労務管理、労働経済学という各分野からで、ある意味で興味深いバランス感覚になっています。

このうち、佐藤博樹さんの論考では、正社員のメンバーシップ型の働き方に対して、派遣社員をジョブ型の働き方と位置づけ、その観点から今回の改正内容をあるものは積極的に、あるものは消極的に評価しています。

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『現代思想』11月号「大学の終焉」のミニ感想

9784791713080_2いろいろ読むべきものが重なって、遅ればせながら『現代思想』11月号の特集「大学の終焉」を読みましたが、

http://www.seidosha.co.jp/index.php?cmd=read&page=9784791713080&refer=FrontPage

【討議】
大学への支配と抵抗 / 鵜飼 哲+島薗 進

【エッセイ】
「大学改革」と日本の将来 / 池内 了
グローバル教育プログラムの二つの間違い / 平川克美
見知らぬ人との人文学 「自由と平和のための京大有志の会」の運動から / 藤原辰史

【インタビュー】
「人文社会系は役に立たない」は本当か? 「通知」批判から考える / 吉見俊哉

【大学改革の争点】
それでも守るべきは、大学の自治である  / 石原 俊
制度的保障論批判 「大学」の国法上の身分を中心に / 石川健治
簿記とシェイクスピア 「人文社会科学系批判」言説によせて / 隠岐さや香

【改革下の現場】
国立大学改革と人文系の(明るくない)未来 / 室井 尚
屍を乗り越えて進む非常勤 非正規の一部隊としての / 入江公康

【人文学の実践】
人文系BF私大を再活性化するためのいくつかのアイディア / 上野俊哉
脱・国体と亡命 / 酒井直樹

【人文学のコア】
人文学の後退戦 文科省通知のショック効果に抗って / 西山雄二
文献学への新たな回帰? / 宮﨑裕助
文献学についての95のテーゼ / W・ハーマッハー 大塚良貴 訳

【大学と国家の歴史】
大学とはなにか 近代ヨーロッパ大学史からの応答? / 橋本伸也

正直言って、4年以上前に『月刊社会民主』に書いた文章の、この最後の言葉に付け加えるべき感想は、特に感じられませんでした。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/shaminshinsotsu.html

・・・やや皮肉な言い方をすれば、こういう教育と労働市場の在り方にもっとも消極的であるのは、「学問は実業に奉仕するものではない」と称して職業的意義の乏しい教育を行うことによって、暗黙裏に日本的企業の「素材」優先のメンバーシップ型雇用に役立っていた大学教授たちであろう。彼らの犠牲者が職業的意義の乏しい教育を受けさせられたまま労働市場に放り出される若者たちであることは、なお彼らの認識の範囲内には入ってきていないようである。





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『月刊連合』12月号は集団的労使関係特集

1312232_pまだ届いていませんが、明日発行の『月刊連合』12月号は、「現場×研究者 集団的労使関係を問う」が特集のようです。中身は、去る9月30日に行われた連合シンポジウムです。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/teiki/gekkanrengo/backnumber/new.html

■連合シンポジウム
  これからの集団的労使関係を問う ─ 現場と研究者の対話─
集団的労使関係をめぐる現状と課題
  仁田道夫 国士舘大学経営学部教授

■現場×研究者
テーマ1 企業・産業レベルの再編等と集団的労使関係
  小畑 明 運輸労連中央書記長
  呉 学殊 労働政策研究・研修機構主任研究員
テーマ2  就業形態の多様化と集団的労使関係
  松井 健 UAゼンセン常任中央執行委員
テーマ3  企業別労働組合の組織的基盤
  宮本礼一 ものづくり産業労働組合JAM会長
  後藤嘉代 労働調査協議会主任調査研究員
テーマ4  紛争解決と集団的労使関係
  村上陽子 連合非正規労働センター総合局長(現連合総合労働局長)
  神林 龍 一橋大学経済研究所教授
テーマ5  労働者代表のあり方
  新谷信幸 連合総合労働局長(現連合副事務局長)
  濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構主席統括研究員

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-f01b.html(仁田道夫・連合編『これからの集団的労使関係を問う』)

本日午後、都内某所で、この本に基づいたシンポジウムが開催されます。

なお、申し遅れましたが、先週末、金曜の夜、日本キャリアデザイン学会のキャリアデザインライブにコメンテーターとして参加してきました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-d9f6.html(日本キャリアデザイン学会 キャリア・デザイン・ライブ!)

そのときに参加されていた山野晴雄さんが、ご自分のブログ「」にその模様を書かれていますので、こちらでもご紹介。

http://yamatea.at.webry.info/201511/article_20.html(労働組合の隠された可能性 )

日本キャリアデザイン学会の研究会、「キャリアデザイン・ライブ!第6回」が11月27日、法政大学で行われ、参加をしてきました。 
ゲストは二宮誠さん(連合中央アドバイザー、元UAゼンセン)、コメンテーターは濱口桂一郎さん(労働政策研究・研修機構)。

エントリの後半は、山野さんご自身の労働組合体験です。


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「「常時雇用」と「無期雇用」の間」@『労基旬報』2015年11月25日号

『労基旬報』2015年11月25日号に寄稿した「「常時雇用」と「無期雇用」の間」です。

 去る9月にようやく成立に至った改正労働者派遣法は、法制定当時から存在したいくつもの矛盾を30年後にやっと解消した改正でした。そのうち最大の矛盾はいうまでもなく、ファイリングや事務用機器操作といった普通のOL業務を「専門26業務」と称して無制限の派遣を認める一方で、現実社会で専門職として通用している多くの業務を専門的ならざる「一般業務」と称して3年の期間制限を掛けるというあからさまな矛盾でした。これに代わって、派遣労働者の雇用契約が無期契約であれば期間無制限、有期契約であれば期間3年という筋の通ったわかりやすい規制が導入されたこと一つとっても、今回の改正がまともな方向への改正であったことが分かります。

 しかしこれに関わって、あまり目立たない改正ですが、法制定以来のもう一つの矛盾も解消されたことは、専門家はともかく一般の人々にはあまり認識されていないようです。それは、一見同じような概念に見える「常時雇用」と「無期雇用」の間に横たわる深い深淵に関わります。

 1985年に制定された特殊日本的労働者派遣法は、許可制の一般労働者派遣事業と届出制の特定労働者派遣事業という規制のダブルスタンダードを導入しました。問題はその定義がダブルスタンダードを正当化するようなものであったかです。法律上の規定は、「その事業の派遣労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業」を特定労働者派遣事業と定義しています。問題はこの「常時雇用」です。法制定時の解説書(髙梨昌編著『詳解労働者派遣法』日本労働協会)によると、「雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者」のことで、具体的には次の①から③までのいずれかに該当する場合とされています。

①期間の定めなく雇用されている者

②一定の期間(例えば、1か月、6か月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復更新されて事実上①と同等と認められる者、すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者

③日々雇用される者であって、雇用契約が日々更新されて事実上①と同等と認められる者、すなわち、②の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者

 一見何の問題もないようですが、よく考えるとこれはとんでもない解釈です。なぜなら、これはあくまでもこれから労働者派遣事業を開始しようとしている段階であって、その段階では既に派遣労働者として就労している人はいないはずだからです。「過去1年」がどうとかこうとかはすべて無意味な言葉であって、結局これから派遣事業をやろうとしている者がこれから有期契約の派遣労働者として雇うことになる人について「採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる」と勝手に主張すれば、特定派遣に区分され、許可ではなく届出で事業を始められるということになります。そして、見込みはあくまで見込みですから、その有期契約の派遣労働者が何回か反復更新された後、期間が満了したからといって雇止めされたからといって、元に戻って許可を取るべきであったのに無許可で派遣事業を行った違反になるわけではありません。

 これは単なる概念遊戯ではありません。私が何回も引用する伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件では、届出で特定派遣事業を行う派遣会社に有期契約で雇われ、何回も反復更新されたあげくに雇止めされた原告について、「同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、常用代替防止の観点から同法の予定するところではないといわなければならない」と雇用継続期待を否定したのです。特殊日本的労働者派遣法は、いくらでも雇止めできる有期契約労働者を「常時雇用」と認めて届出で派遣事業がやれる奇怪な仕組みであったと言えます。

 この異様さを是正しようとする最初の試みは、2008年7月の「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」報告でした。「常時雇用」の中に有期契約を反復更新している者が含まれていることに疑問を呈し、「常用型派遣については、この「常時雇用される」を「期間の定めのない」ものとして再整理」すべきだと提起したのです。ところがこのまともな提案は、三者構成の労政審の建議では脱落してしまいました。その後、民主党政権下で大幅な規制強化の法案が国会に提出され、2012年に修正成立する過程においても、この異様さを是正しようという動きは見られませんでした。

 ようやく再びこの問題が提起されたのは、2013年8月の新たな「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」報告です。ここでは、一般派遣は許可制、特定派遣は届出制という枠組みは維持しながら、「「常時雇用される」を「期間の定めのない」ものと再整理することで、特定労働者派遣事業については、すべての派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定することが適当であると考えられる」としたのです。その後労政審の建議では特定派遣と一般派遣の区別自体を撤廃し、すべて許可制に一般化することとされたため、この問題の重要性はやや霞んだ感もありますが、もう一つ常用代替防止規制を再構成し、冒頭に述べたように無期雇用派遣であれば期間無制限とし、有期雇用派遣であれば個人レベル・派遣先レベルで一定の期間制限を掛けることとしたため、規制の強弱を左右する重要要素として「常時雇用」ではなく「無期雇用」が確立したことになります。

 それにしても、ちょっとでも労働法の素養があればそのおかしさが分かるような奇妙な「常時雇用」の解釈を、30年間も維持し続けてきたのはいかなる原因があったのでしょうか。先の髙梨編著には、「この「常時雇用される」の意味は、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法第10条第2項及び身体障害者雇用促進法第14条の「常時雇用する」と同義であり・・・」という記述がありました。これらは雇用率制度の規定です。雇用率とは、現に雇用している労働者数に占める障害者の比率を一定割合以上にする義務であって、その観点からすれば、雇用契約が無期か有期かにこだわるよりも、「過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者」を分母分子双方に含めてカウントすることがふさわしいのは理解できます。労働者の権利義務に直接関わらない雇用政策立法の発想を、何の疑問もなく労働者派遣制度に持ち込んだというこの制定時の思考様式にこそ、派遣労働者保護という観点を欠落させた特殊日本的労働者派遣法の出発点の歪みが刻印されていたと言えましょう。

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上林陽治『非正規公務員の現在 深化する格差』

06992地方自治総研の上林陽治さんから新著『非正規公務員の現在 深化する格差』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nippyo.co.jp/book/6992.html

質量ともに深化する非正規公務員問題を、公務員制度史、ジェンダー論、労働法等の観点から解明し、解決の処方箋を提示する。

前著『非正規公務員』も、実態論と法解釈論と法政策論が見事にかみ合った好著でしたが、今回の本も同様に多角的な視点からこの問題に斬り込んでいます。

第1章 急増する非正規公務員の実態
第2章 非正規公務員増加の三類型
第3章 非正規公務員と「ブラック自治体」の実像
第4章 見えない存在としての非正規公務員
第5章 非正規公務員と間接差別
第6章 常勤的非常勤職員の正規職員化――一九六〇年前後の定員・定数化措置
第7章 特別職非常勤職員という任用の形式の発見
第8章 非正規公務員と任用の法的性質
第9章 非正規公務員への退職手当の支給
第10章 非正規公務員の権利救済の仕組み――労働諸法の適用問題

今回の本の一つの特徴は、第6章から第8章に至る歴史的追及が実に鋭くものごとの根っこに届くような分析になっていることです。

このあたりは私もさらっと調べたことがありますが、歴史を知らない人ほど今日の『常識』に閉じ込められてしまう傾向はありますね。

第8章では私の論文も引用されています。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-a1a9.html(上林陽治『非正規公務員』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-c49f.html(上林陽治『非正規公務員という問題』)

なお本書で引用されている拙論文は、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-bd32.html(非正規公務員問題の原点@『地方公務員月報』12月号)

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事業者団体法第4条第6号

事業者団体法(昭和23年7月29日法律第191号)

(許容行為)

第4条 事業者団体は、左に掲げる活動に限り、これを行うことができる。

六 構成事業者の全部又は一部から委任を受けた場合に、委任された権限の範囲内において、労働組合と団体交渉を行うこと。

この法律は昭和28年9月1日法律第259号(私的独占禁止法の一部改正法)によって廃止され、それ以後、労働組合の相手方としての事業者団体を規定した法律は日本国に存在しません。

もちろん、現行独禁法第8条は事業者団体の禁止行為のみを規定しているので、そこに書かれていない労働組合との団体交渉はいうまでもなく可能なのですが、そんな奇特な事業者団体はほとんどいないのが実情です。

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育介法改正のたたき台

本日の労政審雇用均等分科会に、育介法改正のたたき台が提示されたようです。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000105196.pdf

項目は多岐にわたっていますが、注目点は二つ。有期契約労働者の育児休業については、こうなっています。

① 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること

② 子が1歳6ヶ月に達するまでの間に、労働契約期間が満了し、かつ、労 働契約の更新がないことが明らかでないこと

上記の要件とした場合、育児休業期間中に労働契約の終了時期(更新時期)が到来し、更新の有無をその時点で判断する場合があるが、その場合に 育児休業の取得等を理由として契約を更新しないことは、不利益取 扱に該当するため禁止されること 育児休業の取得等を理由とせず、経営上の理由等から契約を更新し ないことは、不利益取扱いには該当せず、禁止されないこと という整理とすべきではないか。

もう一つ、いわゆるマタハラについては、さすがに概念整理がちゃんとしてきたようで、

・ 妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労 働者の就業環境の整備については、事業主による妊娠・出産・育児休業・ 介護休業等を理由とする不利益取扱いのみならず、上司・同僚からの行為 を防止することが求められるが、防止措置の対象となる範囲については、 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 (以下「育児・介護休業法」という。)に規定される不利益取扱いにおける 「理由となる事由」や「行為類型」を前提とすべきではないか。

・ 上司・同僚からの行為を防止するための措置については、セクシュアルハ ラスメントの防止のために事業主に義務づけられている措置を参考に、事 業主に雇用管理上必要な措置を義務づけるべきではないか。

・ また、防止措置の対象とする具体的な範囲や当該防止措置の具体的な内容 9 については、指針等において示すべきではないか。

何でもかんでもマタハラ呼ばわりする風潮がありますが、言うまでもなく解雇を含む不利益取り扱いは既に現行法で禁止されているのですから、今回新たに追加される部分というのは「のみならず」の次の「上司・同僚からの行為」になるわけです。

まあ、実はそこのあたりがなお概念的に混乱している面もあるのですが、ざくっと整理すればそういうことですね。

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希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策

ということで、本日の経済財政諮問会議でとりまとめられた「希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策」に、最低賃金に関する記述が盛り込まれています。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2015/kinkyutaiousaku.pdf

2.賃金・最低賃金引上げを通じた消費の喚起

我が国のGDPの6割は個人消費であり、GDPの成長には消費の増加が不 可欠である。消費の伸びは実質賃金の動向に大きく左右されるので、実質賃金の 伸びを高め、労働分配率の低下に歯止めをかける必要がある。 GDP600 兆円を今後5年程度(名目成長率は平均3%程度)で実現するため にはこれにふさわしい、賃上げや最低賃金の引上げへの取組が重要である。過去 最大の企業収益を賃上げにも回していくことを通じ、消費を拡大させ、その恩恵 が企業にも還元されるという好循環を実現していく。

① 昨年の政労使合意を踏まえ、過去最大の企業収益を踏まえた賃上げを期待する。(P)

② 名目GDPを 2020 年頃に向けて 600 兆円に増加させていく中で、最低賃金について は、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていく。 これにより、全国加重平均が 1,000 円となることを目指す。

③ このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等を図る。

④ アベノミクスの成果の均霑の観点から、賃金引上げの恩恵が及びにくい低年金受給者 に支援を行う。

昨日の日経の記事の通りですが、さてこれからどう進めていくことになるのでしょうか。

(追記)

甘利大臣の記者会見要旨で、記者とのやりとりが興味深いのでコピペしておきます。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/1124/interview.html

(問)最低賃金の引上げのところで、これまで厚労省の審議会で決めてきたと思うのですが、今後具体的にどのようにそこに働きかけていくのか。大幅にどうやって増やすのか。
もう一つは、最低賃金の決め方がこれまでは労使と有識者で決めてきたものを政府が強く関与するということですが、そこの変化について、一部批判もあるかもしれないのですが、政府としてそこはどういう判断だったかを教えてください。

(答)最低賃金については、きちんと決めていくシステムがあります。そこに働きかけるということです。政府としての意思を、厚労省を通じて働きかけていくということであります。
それから、従来は三者で決めてきたわけでありますけれども、賃金の引上げや最低賃金の引上げが経済を下支えする消費に対して大きな影響を持っております。その原資は、中堅や大企業にはしっかりあるわけであります。ただ、零細・中小企業、なかんずく零細企業に原資がないということで、そこを下請代金の適正化、価格の転嫁の適正化等々、あるいは中小企業政策を通じてフォローして、これが達成できるようにしていく。そのことによって消費が拡大され、経済の好循環がしっかり動いていくという意味から、賃上げと最低賃金、下請代金の改善を非常に重要視しているわけであります。

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西きょうじ『仕事のエッセンス』

9784620322421毎日新聞出版の小川和久さんから、西きょうじ『仕事のエッセンス 「はたらく」ことで自由になる』(毎日新聞出版)をお送りいただきました。

http://mainichibooks.com/books/business/post-129.html

オビでは、津田大介氏と駒崎弘樹氏が絶賛推薦しているのですが、正直言って私には今一つピンとこない内容でした。

著者の西氏は東進ハイスクールの英語講師ということで、読んでいると気持ちよくすいすいといくのですが、理論を論じているところと、生き方論のところがどうつながってくるのかが、腑に落ちない感も残ります。

著者の西氏もお送りいただいた小川氏も直接存じ上げない方々なので、なぜ私にお送りいただいたのかな、と思ったら、85ページにこんな記述がありました。

・・・中小企業になると、「身内の不幸で有休を取得したら解雇」「データ改ざん指示を拒否したら解雇」「店長から俺的にダメだという理由で解雇」「協調性がないという理由で解雇」という、理解不能な理由で解雇されたという話が上がってきます。・・・

なぜか、これらケースが載っているJILPT報告書は参考文献としてあげられていないのですが、いずれも懐かしいあっせん事案の顔ぶれですね。

112050118ちなみに、この「俺的にダメ」事件については、『日本の雇用終了』ではもう少し詳しい事情を載せております。

・20048(非女)普通解雇、いじめ・嫌がらせ(15万円で解決)(10名、無)
 店長から「俺的にだめだ」という理由で解雇されたが、一方的な好き嫌いの感覚のみで解雇されたのは許せない。会社側によれば、従業員とのコミュニケーション不足でトラブルになったのは店側の落ち度だが、解雇に至るには欠勤が多いことや、申請人の接客に向かない態度などを注意してきた経緯がある。
 あっせん員より、「解雇する理由としては社会通念上から見て根拠が希薄」と指摘して金銭解決。


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最低賃金が毎年3%ずつ増加したら・・・

日経新聞が、最低賃金についてこういう観測記事、おそらくはリーク記事を書いています。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H1U_S5A121C1MM8000/ (政府、最低賃金「毎年3%増」 GDP600兆円へ目標 )

政府は22日、全国平均で798円の最低賃金を毎年3%程度増やす目標を設ける検討に入った。今年度は過去最大の18円増となったが、来年度以降はさらに増加幅を広げる。最低賃金に近い水準で働くパートやアルバイトの賃金増加や待遇改善につなげる。足踏みが続く個人消費を底上げし、2020年ごろに名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やす目標の達成を目指す。

 24日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で詳細を詰め、26日の一億総活躍国民会議で決定する緊急対策に目玉施策として盛り込む。

 政府は名目経済成長率を3%に高める目標を掲げており、GDPの6割を占める個人消費の原資となる賃金水準も年3%程度の引き上げが望ましいと判断した。政府内には年3%を上回る目標として「20年ごろに1000円を目指す」との案もある。

 最低賃金は厚生労働省の審議会で労使が協議して決める。今年度の大幅増により全国平均で798円となった。これを反映して10月の全国平均時給は前月よりも10円近く上がった。最低賃金が来年度に3%上がると、単純計算で今年度を大幅に上回る24円増の822円になる。総雇用者所得は1000億円超増える見通しで、パートなどの所得増につながる。その後も3%ずつ上がれば、20年度に920円を上回り、23年度には1000円に達する。

 政府は人件費負担が増す中小企業や零細企業への支援策も同時に打ち出す。15年度補正予算案に競争力強化に取り組む企業に補助金を支給する対策案を盛り込む。下請け企業が原材料価格の上昇を販売価格に転嫁しやすくなる対策や賃上げに取り組む企業の資金繰り対策も進め、引き上げに向けた環境を整える。

先週、WEB労政時報に「最賃引き上げの10年」を寄稿したところですが、官邸はさらに勢いを強める姿勢のようです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-45a2.html

とりあえず明日の経済財政諮問会議の資料を見て、さらに木曜日の一億総活躍国民会議の資料を待ちましょう。

各都道府県の最賃が毎年3%ずつ上がると、簡単な複利計算で、2020年には東京都は1052円、沖縄県でも804円になります。10年後の2025年には、東京都で1219円、沖縄県でも931円です。

これまでの10年が、生活保護との逆転解消という大義名分で進められてきたことを考えると、それが解消したこれからの最賃政策は、それに代わる理論武装がますます必要になりますね。

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奥谷禮子『如是我聞2』

745_l ザ・アールの奥谷禮子さんから『如是我聞2』(亜紀書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=745&kw=%E5%A5%A5%E8%B0%B7%E7%A6%AE%E5%AD%90

一企業が23年間、隔月でフリーペーパーを出し続けてきた。本書はその10年目以降の全単文時評492篇と対談(72回)のセレクションをまとめたものである。

目からウロコの時評集成、読みごたえあり!

わたくしも一度呼ばれて対談したことがあるのでお送りいただいたのだと思いますが、わたくしとの対談はそれほど面白くないと思われたためか、本書に収録されていません。

収録されている対談は次の通りですが、

「新しい中世」の課題――vs田中明彦

美術館が街をイキイキさせる――vs蓑豊

安藤流、不況の打開策――vs安藤忠雄

中高年のクライシス――vs工藤美代子

これからの日米の動向――vs藤原帰一

次の世代に歌をつないでいきたい――vs五木ひろし

絶望の国の希望とは?――vs古市憲寿

死に逝くひとへの化粧――vs小林照子

生まれ変わっても、また映画プロデューサーに――vs日下部五朗

百聞は「実験」に如かず――vs湯本博文

自殺率が日本で“いちばん”低い町の秘密――vs岡檀

これらには及ばないまでも、わたくしとの対談もそれなりに興味深い論点が示されていると思いますので、ご参考までに:

http://homepage3.nifty.com/hamachan/20140109113005688.pdf

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EUのコラボラティブ・エコノミー政策

先週11月19日の規制改革会議では、シェアリング・エコノミーについていろいろ議論されたようですが、

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee4/151119/agenda.html

日本では民泊とホテル営業の関係ばかりが注目されているようですが、この問題は結構広がりがあります。とりわけ、労働法との関係は、もっと注目されて良いのではないかと思います。

EUでも最近、この問題がコラボラティブ・エコノミーという名称で政策課題として取り上げられてきていますが、その中ではちゃんと労働問題への目配りもされており、参考にされていいようにおもいます。

先月10月28日の欧州委員会コミュニケーション「単一市場を格上げする」において、「コラボラティブ・エコノミーの均衡ある発展を可能にする」という項目で、

http://ec.europa.eu/DocsRoom/documents/14007/attachments/1/translations/en/renditions/native

However, the emergence of new business models often impacts existing markets, creating tensions with existing goods and services providers. Both sides complain of regulatory uncertainty over the application of rules on consumer protection, taxation, licensing, health and safety norms, social security and employment protection. Hasty or inadequate regulatory responses to these challenges risk creating inequality and market fragmentation.

Such difficulties and uncertainty need to be addressed. A clear and balanced regulatory environment is needed that allows the development of collaborative economy entrepreneurship; protects workers, consumers and other public interests; and ensures that no unnecessary regulatory hurdles are imposed on either existing or new market operators, whichever business model they use.

しかしながら、新たなビジネスモデルの出現はしばしば既存の市場に影響を与え、既存の商品やサービスの提供者との緊張生み出す。いずれの側も消費者保護、課税。免許、安全衛生規範、社会保障、そして雇用保護に関する規制の適用の不確定さに不満を抱いている。これら課題への性急なまたは不十分な規制的対応は、不平等と市場の分断かをもたらしかねない。

かかる困難と不確定さは対処される必要がある。コラボラティブ・エコノミーの起業家精神の発展を進め、労働者、消費者及び他の公益を保護し、いかなるビジネスモデルを利用しようが既存業者と新たな市場活動者に不要な規制のハードルを課さない明確かつ均衡のとれた規制環境が必要である。

このあたりを詳しく述べている職員作業文書には、もう少し詳しい記述があります。

http://ec.europa.eu/DocsRoom/documents/14012/attachments/1/translations/en/renditions/native

その少し前の9月24日には、欧州委員会からプラットフォーム、オンライン仲介、データとクラウド・コンピューティング、コラボラティブ・エコノミーに関する一般協議が開始されています。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-15-5704_en.htm

This consultation seeks evidence and input for the Commission's comprehensive analysis of the role of online spaces where providers and users of content, goods and services can meet (such as internet search engines, social media, knowledge and video sharing websites, news aggregators, app stores and payment systems). The consultation looks into the role of platforms in the online content distribution. It also explores how to handle illegal online content (for example hate speech, child abuse content or content that infringes intellectual property rights), how far and in what way online intermediaries should respond, and what duty of care intermediaries may have towards their users. This is the first step in the Commission's examination of the issues around platforms, and will feed into a comprehensive assessment on the role of platforms and intermediaries planned for the first part of 2016.

同時多発テロに揺れるヨーロッパですが、経済社会政策でも大きな波に対応しようとしているようです。

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クラブのママの労働者性

くみかおるさんから「さあ濱口先生はりきってどーぞ!」といわれてしまったので、全然張り切ってもいませんが、クラブのママの労働者性に関する裁判例をいくつか紹介しましょう。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-9ea3.html#comment-112141739

銀座ママは労働者か? 判決は | 2015年11月22日(日) - Yahoo!ニュース http://news.yahoo.co.jp/pickup/6181698 #Yahooニュース

さあ濱口先生はりきってどーぞ!

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6181698 (銀座のホステスは労働者じゃない? 東京地裁判決が「プロ契約」と判断したワケ)

労働者として勤務していた東京・銀座のクラブから不当に解雇されたとして、ママとして働いていた女性(45)がクラブ側に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁(鷹野旭裁判官)は「労働契約ではなく、業務委託契約だった」とし、女性は労働者ではなかったとの判断を示した。「クラブで働く女性は労働者ではないのか?」-。インターネット上ではこの判断に疑問の声も上がった。この女性が労働者に当たらないとされた理由とは…

この記事の最後の方にこう書かれているので、

女性側の代理人を務める弁護士は「過去、この女性と同じ契約形態でクラブママとして働いていた女性が、労働者として認められた判例がある。今回の判決は不当だ。高裁の判断を仰ぎたい」と話し、控訴する意向を示している。

この判例というのは、おそらくこれだろうと思われます。

損害賠償請求控訴事件 名古屋高等裁判所平成20年10月23日判決(判例時報2036号33頁)

二 被控訴人の法的地位(争点(1)について)

 (1) 前記一認定の事実に基づき検討するに、被控訴人は、控訴人の唯一の代表取締役に選任された旨の登記がなされており、また前記一(3)認定のとおり、平成一七年一月一日付で、本件グループの副代表として、業務委託を受ける旨の委任契約書が作成されている事実が認められる。

 (2) しかしながら、控訴人と被控訴人間の契約関係がどのようなものであるかは、契約の形式によって定められるのではなく、当該契約の実態によって判定されるべき問題である。

 ア これを本件についてみるに、前記一の事実、特に(2)(4)認定の控訴人及びそれ以前における被控訴人の稼働状況によれば、被控訴人は、もっぱら、丁原と丙川によって指定されるクラブやラウンジ、バーにおいて、自らあるいは他のホステスに指示して、客を接客することを主な仕事としていたと認められるのであって、就業場所や就業時間が拘束され、仕事の諾否の自由はなかったというべきであるから、その稼働の実態は、いわゆる水商売の雇われママであるホステスに当たると認めるのが相当である。

 イ そして、前記一(5)認定の給与支払の方法や丙山秋子の給与支払明細書に記載された丁原の書込みの内容、同(7)認定のメールの内容等によれば、控訴人を含む本件グループでは、被控訴人や丙山秋子などホステスをしていた取締役や代表取締役を、独立した各会社の役員等としてではなく、直接丁原や丙川の下にいる単なるホステスとして扱っており、被控訴人と乙山との一件も、いわゆる売れっ子ホステスの駆け落ち騒ぎと同様に捉えて、脅迫的なメール等によって結婚を止めさせようとしているという実態を窺うことができる。

 ウ これに対し、被控訴人には、前記一(5)認定の金員が支給され、車両貸与等の便益が与えられているが、被控訴人に支給される月額七二万五〇〇〇円という金額は、前記一(4)のとおり、被控訴人の切り盛りにより控訴人が年間一億円以上の売上を計上し、本件グループでも高い成績を上げていた点や、被控訴人が本件グループの他の店舗でもかけ持ちのホステスをしていた点を考慮すれば、売れっ子ホステスに対する給与としては、けっして高額なものということはできない。また、実際には前記一(4)認定のとおり、被控訴人は、ノルマ達成のため事実上チケットの購入を強制され、サラ金その他の借入によって売上の不足を補填させられていたのであるから、被控訴人の実質収入は、上記金額より相当低額だったと考えることができる。更に、タクシーチケットの支給等の付随的な便益の提供も、通常ホステスに対してなされる給付の範囲内にあると認めるのが相当である。

 エ したがって、以上の事情を考慮すれば、被控訴人は、直接、丙川や丁原の指揮命令に基づき、従属的な使用関係の下で就労していた従業員にすぎず、また被控訴人と控訴人との契約関係は、実質的に雇用契約に基づくものだったと認めるのが相当であって、その反面、上記法律関係が委任契約に基礎を置いていたもの(控訴人主張)と認めることはできないし、被控訴人が控訴人とのいわば内部関係においては、委任契約が適用されるべき「代表取締役」であったと認定することはできない。現に、控訴人において、被控訴人を代表取締役として取締役会が開催されたこともない。

 (3) 上記を別の角度からみるに、本件グループの場合、被控訴人のように客から人気のあるホステスである女性従業員について、退職されると売上に大きな影響があることから、その稼働の実態が雇用契約に基づくものにすぎないにもかかわらず、丙川や丁原らは、当該従業員と委任契約を締結してこの者に取締役ないし代表取締役との外観を付与し、会社経営に責任を有するとの法形式を利用することにより、労働基準法等の労働保護法規を潜脱することとしていた。更に、前記一(3)第四、五段で存在を認定した各種連帯保証契約や違約罰の定めによって、経済的に退職を阻止し、事実上就労を強制していた。被控訴人の場合、控訴人の代表取締役の肩書を付与されたとの認識はあったが、本件グループの副代表、控訴人のための個人としての連帯保証等は、契約書を無断で作成されていたため、その有無、内容等を正確に認識する機会もなかった。

 したがって、控訴人と被控訴人とは委任関係にないにとどまらず、雇用関係にあるものの、法を遵守した雇用関係ではなく、労基法一六条ないし公序良俗に違反するような関係にあったというのが相当である。

この事件では、契約形式ではなく実態で判断するという原則に基づいて、業務委託契約ではなく雇用契約(いわゆる「雇われママ」)であると判断しているわけです。

ただ、上の記事の事件は、判決文自体は見られないので正確なところはわからないのですが、記事から判断する限り、

争点(1)について、東京地裁は、他のホステスは日給制で労働時間も決められていたが、この女性は出勤するかしないかや何時に出退勤するかが自由とされ、他のホステスとは待遇が違った▽女性の報酬額は、約150人の自分の顧客の支払額に対する歩合で決まっていたことから、女性の報酬は接客の対価ではなく、顧客を店に呼んでクラブに利益をもたらすことへの対価だった-などの理由で、「女性は、労働に対する対価をもらう存在としての労働者には該当しなかった」と認定、「女性は労働者ではない以上、未払い賃金は存在しない」とした。

と、他のホステスとは違って雇われではなく経営者的立場であったと認定しているようで、だとするとこれは事実認定の問題なので、理屈の上では先の裁判例と矛盾するわけではないとも言えます。

その他、クラブのママではなくクラブのホステスの労働者性については、

クラブ「イシカワ」(入店契約)事件 大阪地方裁判所平成17年8月26日判決(労働判例903号83頁)

以上によると,本件入店契約は,原告が本件クラブにおいてホステスとして接客サービスという労務を提供し,被告が原告に対し賃金を支払うという雇用契約であり,同契約には,労働基準法の適用があるというべきである。

この事件では、下記のように労働者性を肯定する要素がたくさん認定されています。

ア 諾否の自由

 前記1(4),(6)によると,原告は,本件入店契約1の下では平日の毎日,本件入店契約2の下では1週間のうち3日間(月・水・金。後に4日間),本件クラブに出ることが義務づけられており,欠勤や遅刻に対してはペナルティが課せられていたことが認められる。

 被告は,口座客を持つホステスは,自己の口座客に対して,遊興飲食サービスあるいは接客サービスを提供するか否かについて,諾否の自由を有していたと述べる。しかし,上述したように,本件クラブに出ることが義務づけられ,また,前述したように(前記1(2)キ)同伴義務が課せられているにもかかわらず,接客サービスを提供しない自由があるとは考えにくく,原告には,仕事依頼の諾否の自由はなかったと認めるのが相当である。・・・

こちらもクラブのホステスの労働者性を認めています。

東京簡易裁判所平成20年7月8日判決(裁判所ウェブサイト)

証拠(証人A、原告本人)によれば、被告店舗は従業員・ホステスが20名余り在籍する銀座のクラブであり、原告の勤務時間は午後8時から12時までと定められ、指名客以外の客への接客担当ホステスは、店のママであるAら店側の指示により決められ、原告には選択の余地がなかったことが認められる。このような原告の稼働実態に照らすと、原告には、請負人として被告から委託された接客業務を提供するというような独立の立場は認められず、被告ないしその意を受けた管理者からの指示に従って労務を提供する労働者であるとみるのが相当である。したがって、本件の契約を請負類似の契約であるとする被告の主張は採用できない。

以上の諸裁判例からすると、ママではないホステスはほぼ労働者性が認められるのに対し、ママの場合には、実質的にホステスと変わらない雇われママであるか、そうでないかによって判断が分かれうるということになりそうです。

ただ、先に述べたように、この記事の事件の判決文はまだ読めませんので、その判断が正しいと言えるかどうかは、現段階では何とも言えません。いずれにしても、記事のタイトルの「銀座のホステスは労働者じゃない?」というのは、いささかミスリーディングであるように思われます。

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「人夫名義の職工利用」とは何か?

06996『法学セミナー』12月号が「派遣労働社会」を特集しています。

http://www.nippyo.co.jp/magazine/6996.html

[特集]
派遣労働社会

派遣労働拡大の経緯と背景 ……山川和義 


2015年改正法による新たな期間制限ルール ……奥田香子 


持続可能な社会と雇用 
――派遣労働を中心とする非正規雇用規制とのかかわりで ……矢野昌浩 


派遣労働拡大と労働関係・社会保障の理論 ……脇田 滋 


労働の意味と雇用のあり方を考える ……和田 肇 


派遣労働者の労働問題 
――法改正の動向を踏まえた検討 ……塩見卓也

ここでは、ややトリビアに見えるかも知れませんが、脇田滋さんの論文の中で、私の論説が引用されている部分について、やや認識が違っているのではないかと思われる点を指摘しておきたいと思います。

わたくしの「請負・労働者供給・労働者派遣の再検討」(『日本労働法学会誌』114号)を引用した後に、こう述べられている点は、まさにその通りなのですが、

・・・たしかに、濱口教授の指摘の通り、戦前、間接雇用の職工にも工場法の適用があり、建設業における災害扶助での同様な扱いは、使用従属の実態に基づく労働者保護が間接雇用労働者にも要請されていたことを示している。

その後の次の記述は、契約主義的ではない戦前の工場法の考え方を、戦後の契約主義的な労働法思想から解釈したために、やや妙な議論になっているように思われます。

・・・さらに、実態は職工であるのに工場法や健康保険法の適用を回避する目的で、基幹業務は職工に担当させるが、周辺業務は「組請負」形式での人夫供給業者を通じた「人夫名義の職工」利用が拡大した。直接の雇用関係がない人夫であれば、職工について課せられる法律上の使用者責任を回避することができるために、間接雇用形式を悪用したのである。

初めの引用の前の記述で述べられているように、戦前の工場法は、間接雇用だというだけの理由で使用者責任を逃れることができるようにはなっていません。「間接雇用の悪用」は、少なくとも工場法の適用如何に関する限りできないのです。

では、「人夫名義の職工利用」とは何か?

ここで、戦後の労働基準法は全ての労働者に適用されるけれども、戦前の工場法は「職工」のみに適用される法律だったということを再認識する必要があります。

直接雇用か間接雇用かによっては適用関係は影響されないけれども、職工かそうでないかによって適用されるか否かが決まるのです。

そして、「職工」の業務を行うのではない「人夫」は、直接雇用であろうが間接雇用であろうが、工場法の職工保護を受けられません。そういう法律なのです。戦後の労働基準法を無意識に遡らせて考えてはいけないのです。

本当に職工の業務ではない作業を行う人夫であるなら、そもそも工場法が適用されないのですから、「人夫名義の職工利用」ではないのですね。

そう、これは、人夫供給請負業者から人夫という名目で供給された労働者を、実際には職工の業務に利用しているという状況を指す言葉なのです。

もちろん、工場法は契約主義ではなく実態主義なので、いくら口先で人夫だといっていても、実際にやっている仕事が工場の製造工程であれば、職工として工場法が適用されます。ただ、それは監督を受ければそうなるというだけで、現実には職工を人夫と称して義務を免れようとする使用者が後を絶たなかったわけです。

何をどのように規制するかという枠組みが違っている時代状況の事態を、現在の認識枠組みをそのまま当てはめて論じてしまうと、このようにずれた議論になってしまう危険性があります。

戦前の法状況の意義というのは、直接雇用か間接雇用かという契約形式には重きを置かず、その従事している作業内容によって適用関係を決めるという点にあり、むしろ今日の派遣労働に対するインプリケーションとしても、そこを重視すべきではないかと思われます。

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働く女子の運命 (文春新書)

『働く女子の運命』 (文春新書)の広告が文藝春秋社のサイトにアップされたようです。

http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610624

女性の「活用」は叫ばれて久しいのに、日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?

社会進出における男女格差を示す「ジェンダーギャップ指数2014」では、日本は142カ国中104位という低い数字。その理由は雇用システムの違いにある。

ジョブ(職務)=スキル(技能)に対して賃金を払う〈ジョブ型社会〉の欧米諸国では、採用は基本的に欠員補充になる。一方の日本社会では、「社員」という名のメンバーを「入社」させ、定年退職までの長期間、どんな異動にも耐え、遠方への転勤も喜んで受ける「能力」と、企業へ忠誠を尽くす「態度」の積み重ねが査定基準になりがちだ。このような〈メンバーシップ型社会〉のもとでは、目の前の仕事がいくら出来ても、育児や出産の「リスク」を抱える女性が活躍する余地はないのだ。なぜそんな雇用になったのか――その答えは日本型雇用の歴史にある。

本書では、豊富な史料をもとに、当時の労使双方の肉声を多数紹介。歴史の中にこそ女子の働きづらさの本質がある! 老若男女必読の一冊。

発行は来月、12月18日の予定です。

担当編集者からこんな言葉をいただいております。

つい最近まで、女子は「腰掛け就職」「職場の花」などと呼ばれ、重要な業務につけず、管理職にもなれない不遇を味わってきました。
そしてやってきた失われた20年以降、総合職というコースが用意された代わりに、“転勤も労働時間も無制限”に働けという。
さらには「少子化対策と女性の活躍」を両立させる、ですって――?!
いったい女性にどうしろと言うのでしょう。
本書では富岡製糸場から戦争時、職業婦人、ビジネス・ガールといった働く女子の歴史を追いながら、男性中心に成功してきた日本型雇用の問題点を探っていきます。

(参考)

細目次は次の通りです。

はじめに

序章 日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?

雇用システムが原因

日本型雇用賛美と男女平等

「市場主義の時代」と非正規化

第1章 会社にとって女子とは?

1 女子という身分

戦前-社員はお断り

戦後-やはり「女の子」扱い

2 女工の時代

『富岡日記』から『女工哀史』へ

渋沢栄一も「絶対に反対」の工場法

女監督官第1号

3 女事務員の登場

職業婦人の進出

なぜ女子の待遇が低いのか?

女子若年定年制の始まり

4 女子挺身隊と労組婦人部

むしろ女子を徴用せよ

若い女工たちの人権争議

婦人少年局と労働基準法

5 ビジネス・ガールとオフィス・レディ

結婚退職誓約書

「一人の娘さんをあずかった」

BG扱いに反発した女性

BGからOLへ

6 女子は若いのに限る

結婚退職制の壁

女子若年定年制の壁

第2章 女房子供を養う賃金

1 生活給思想と皇国勤労観

年功賃金制度の源流

家族を扶養できる賃金

戦時体制がつくった日本型雇用

勤労は国家への奉仕

2 電産型賃金と世界からの批判

年齢と家族数で決まる賃金

GHQの批判

世界労連の批判

労働基準法と男女同一賃金

3 職務給シフトの試み

終戦直後の賃金合理化

財界は職務給に熱中

政府も職務給を唱道

職務給がBGを救う?

遂にはILO条約を批准

4 労働組合は生活給が大好き

マル経で生活給を正当化

労働組合婦人部のか細い声

総評は大幅賃上げ一本槍

なお根強い生活給思想

5 正体不明の「知的熟練」

「ジョブ」から「ヒト」への大転換

宇野段階論から始まった

知的熟練という万能の説明

世界に誇る会社主義

知的熟練論と女子の運命

6 奇妙な「同一価値労働」

同一労働同一賃金原則の復活

経団連独自の「同一価値労働」とは?

第3章 日本型男女平等のねじれ

1 欧米ジョブ型社会の男女平等

元婦人少年局長の嘆き

欧米社会の男女同一賃金

人種差別主義者が作った男女平等法

「女の職種」を評価する

とにかく女性を優先せよ!

2 均等法を作った女たち

「女たちの10年戦争」

労働省女性官僚赤松良子

努力義務になった均等法

3 日本型雇用・アズ・ナンバーワン

財界はなぜ均等法に反対したのか?

とても日本的な統計的差別

ジョブなき「コーズの平等」

4 「総合職」と「一般職」の登場

コース別雇用管理の導入

男は総合職、女は一般職

それでも男子のみ一律昇進

第4章 均等世代から育休世代へ

1 女性総合職の本格化とOLビッグバン

新時代の「日本的経営」

ようやく差別禁止法に

女性総合職活用の本格化

OLビッグバン

2 転勤と間接差別

転勤問題

日本的な間接差別規定

3 夫は「ワーク」、妻は「ライフ」の分業システム

女子は企業戦士になれるか

先駆的な育児休業制度

少子化ショックが駆動する育児休業

育休世代のジレンマで悶える職場

「定時で帰る」という非常識

4 ワークライフバランスの逆説

規制緩和でワークライフバランスを実現?

第一次ワークライフバランスが空洞化

第二次ワークライフバランスだけが遜色なく充実

5 マミートラックこそノーマルトラック

マミートラックは定員オーバー

女性の「活躍」はもうやめよう

マタニティという難題

高齢出産が「解」なのか?

終章 日本型雇用と女子の運命

あとがき

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神職(権禰宜)の労働者性

気がつきませんでしたが、先週こんなニュースがあったようです。

http://www.nikkansports.com/general/news/1564904.html (神職男性の解雇「無効」福岡市の住吉神社に賠償命令)

「日本三大住吉」とされる福岡市の住吉神社の権禰宜(ごんねぎ)だった男性が、宮司からパワハラを受け、違法に解雇されたとして、神社に地位確認などを求めた訴訟の判決で、福岡地裁は11日、「解雇は不合理で無効」と認め、神社側に未払い賃金や慰謝料の支払いを命じた。

おやおや、神職が解雇無効地位確認訴訟です。ときくと、神職の労働者性はどうなの?と思いますね。

争点は神職が労働者に当たるかどうか。訴訟で神社側は「旧労働省の通達(1952年)は、宗教上の儀式や布教に従事する人は労働者に該当しないと定めている」として、男性は労働者ではないと主張した。しかし山口浩司裁判長は判決で「通達は実情に即して判断するとも規定している。神社の指揮監督下で働き、一般の労働者と同様に対価として賃金を受けている」と判断し、労働者と認定した。

おお、正面から労働者性を認めていますね。

この通達(昭和27年2月5日基発49号)はこれですが、

法の適用に当っては、憲法及び宗教法人法に定める宗教尊重の精神に基づき、宗教関連事業の特殊性を充分考慮すること。宗教法人又は団体であっても労働基準法上に所謂労働者を使用していない場合に、法の適用がないことは言うまでもなく、具体的に問題となる場合を挙げれば次の通りであること。

イ 宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職者等で修行中の者、信者であっても何等の給与を受けずに奉仕する者等は労働基準法上の労働者でないこと。

ロ 一般の企業の労働者と同様に、労働契約に基き、労務を提供し、賃金を受ける者は、労働基準法上の労働者であること。

ハ 宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基いて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者については、具体的な労働条件、就中、給与の額、支給方法等を一般企業のそれと比較し、個々の事例について実情に即して判断すること。

判決文は見られないので、具体的にどういうロジックで労働者性を導いているのかはよくわかりませんが、むしろ宮司によるパワハラの認定から、パワハラを受けるような関係すなわち指揮監督下にあるという判断が導き出されているのではないかと思われます。

その上で「男性の勤務態度に解雇を正当化するほどの問題があったとは言えない」と指摘。宮司の暴力や暴言も認定し、神社側に110万円の賠償を命じた。

 判決によると、男性は宮司に腕や頭を殴られたり、丸刈りを強制されたりしたほか、「給料泥棒」などの暴言を受けた。神社は男性の業務に問題があるとして2013年、解職を通知した。

まあ、宮司自身が権禰宜を「給料泥棒」と罵っているのだから、給料をもらっている人すなわち賃金労働者であると認めているじゃないか、という筋道なのかも知れません。

なんにせよ、これは面白い。ちなみに、過去本ブログでは芸能人やスポーツ選手の労働者性についてはいろいろとエントリを書いておりますが、宗教関係では、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-fd0d.html (神の御前の労働契約法と労働組合法)

宇佐神宮の権宮司が解雇されたと高天の原は大騒ぎです。・・・

うわわ、神に仕える身の宮司さんが解雇されたとか、団体交渉とか、しかも出てくる組合が建交労ですよ!

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-00c0.html (神の御前の労働基準法)

・・・いやあ、巫女さんの労働者性というのは、建前論的にはなかなか難しいところがあります。

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現物給与と労働基準法

こんな記事が・・・、

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20151118-OYT1T50002.html(自社製品購入、社員に「ノルマ」設定…シャープ)

経営再建中のシャープは、全従業員を対象に、自社製品の購入を呼びかけるシャープ製品愛用運動を20日から始める。

取締役や執行役員は20万円、管理職は10万円、一般社員は5万円と役職に応じて目標金額を設定し、売り上げ増を目指す。同様の取り組みは、経営危機に陥った旧三洋電機が2004~05年に実施した例があるぐらいで、異例のことだ。

「特別社員販売セール」として、来年1月29日まで実施する。セール専用のサイトから申し込む仕組みで、社員には購入額の2%分を奨励金として支払う。購入状況を会社側が把握できるため、目標金額は、事実上の「ノルマ」と受け止められている。・・・

労働関係者であれば当然この規定が思い浮かぶはずですが、

第二十四条  賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

「厚生労働省令で定める賃金」というのは預貯金や一定の有価証券なので、こういう現物給与が認められるのは、他に「法令」もないので、労働組合との労働協約による場合のみです。

上の記事ではあくまでも「自社製品の購入を呼びかけ」ているだけで、給与自体は通貨で支払われるので、直接この規定に抵触するわけではありませんが、「事実上ノルマ」ということになると、何とも微妙な感じではありますね。

ここで、労働基準法になぜこういう規定は盛り込まれたかですが、これは約100年前の工場法時代から存在する規定です。つまり、その頃は、賃金を現物で払う使用者が結構いたということですね。

こういう現物給与や、あるいは自社の売店でしか使えないクーポンで賃金を支払うことを、英語でトラックシステムといいます。

残念ながら日本語版はないのですが、ウィキペディア英語版に簡単な解説が載っていますので、参考にして下さい。

https://en.wikipedia.org/wiki/Truck_system

A truck system is an arrangement in which employees are paid in commodities or some currency substitute (such as vouchers or token coins, called in some dialects scrip or chit) rather than with standard currency. This limits employees' ability to choose how to spend their earnings—generally to the benefit of the employer. As an example, company scrip might be usable only for the purchase of goods at a company-owned store, where prices are set artificially high. The practice has been widely criticized as exploitative because there is no competition to lower prices. Legislation to curtail it, part of the larger field of labour law and employment standards, exists in many countries (for example, the British Truck Acts).

トラックシステムとは、従業員が標準通貨ではなく商品又は(バウチャーやトークンコインなど)代替貨幣で支払われる仕組みである。これは従業員の所得をどう使うかの選択能力を制限し、一般的には使用者の利益になる。例えば、会社スクリップは社営売店での商品購入にしか使えず、そこでは商品価格は人為的に高くなっている。この慣行は低価格への競争がないゆえ搾取的だと広く批判された。これを規制する立法は、労働法や雇用基準の広い分野の一部として、多くの国に存在する(例えば、イギリスのトラック法)。

労働法の歴史を勉強すると、そのはじめの方に出てくる懐かしい概念です。

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中村正志『医師・医学部のウラとオモテ』

17558中村正志『医師・医学部のウラとオモテ 「悩めるドクター」が急増する理由』(朝日新聞出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17558

「医師免許は取得したが、どの診療科に進めばいいか分からない」
「医師に自分が向いているという自信を持てない」
「医局を辞めたいがどうしたらいいか分からない」
医学部人気の高騰が続くなか、超難関の入試を突破し、人もうらやむようなエリート街道を走っているはずの医師や医学生たちがぶち当たる壁の数々。なぜ彼ら彼女らは悩むのか? その背景にあるものは何か? どのようにしてその悩みから抜け出したのか?

これまでに200人以上の医学生、300人以上の研修医・医師の転職相談・キャリア相談を受けてきた医師専任キャリアコンサルタントの著者が、現代の医師のリアルを本音で綴る一冊。医師を目指している受験生はもちろんのこと、その保護者、進路指導の先生、これから医師になる医学生、研修医、若い医師、医師と共に働く医療関係者といった方々の「実用書」としてお役立てください。

今までありそうでなかった、医師のキャリア本ですが、冒頭になかなか深刻なやりとりが出てきます。

Doc


医師というのは、大学医学部はまさにジョブ型職業訓練校そのものであって、大学に入ることがすなわち特定の職業を選択することであるにも関わらず、それ以外のメンバーシップ型社会の大学選択の感覚の延長線上で、何でもやらせることができる潜在能力の高さを競う「勉強ができたから」でのこのこ進学してしまうと、こういう悲劇のような喜劇のような事態が発生するのでしょうね。

オバタカズユキさんが1年掛けて企画編集協力してできた本ということです。たしかに本のあちこちに、これから医師を目指す人は間違いなく読んでおいた方がいいな、と思われることがいっぱい詰まっています。


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業者間協定方式は黒歴史じゃなかったかも知れない

Dio 連合総研の『DIO』309号が送られてきました。特集は「地域の人材定着につなぐ労働の質」ですが、そのうち興味深かったのは吉村臨兵さんの「地域の人材定着に役立つ公契約の規整」という文章でした。

http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio309.pdf

タイトルの通り、主たる論点は公契約条例なんですが、その中にこんな一節があるのです。

・・・賃金水準の地域労働市場との関係について、 半世紀以上前の静岡県の状況をみておきたい。 当時の法定最低賃金は、現在のように最低賃 金審議会の調査審議によらず、業者間協定を 追認するかたちのもの8 が普及しはじめるところ だった。・・・

。・・・以上によって確認できることは、経済的環境 しだいで、直接には労働者の参画によらず、事 業者の団体が率先して地域の賃金相場の最低 限を定める場合があるということである。ここ の事例に伺われる動機は、労働力不足の局面 にありながらできるだけ賃金額の上昇を抑制 し、かつ、その水準は近隣他地域とくらべてあ まり遜色のないものにしたいということだろう。  そうすると、近年の公契約条例の賃金条項を めぐっても、従事する労働者と受託する事業者 双方にとっての利害関係を、一律に対立的にと らえるのは早計ということになる。というのも、 むしろ公契約条例は、労働力の確保などの点 で事業者にも利益となりうる賃金上昇を可能に する媒体だからである。もし仮に、自治体の入 札によく参加し、人件費も大きなウェイトを占め るような産業において、半世紀前の例と同じく DIO 2015, 11 ― 10 ― DIO 2015, 11 賃金の最低水準を事業者団体が定めようとす れば、談合と見なされるおそれもあろう。それ に対して、すでに賃金条項をもつ自治体の多く で取り入れられているように、審議会の形態の もとで地域の当事者の参画をえながら透明な合 意形成をすれば、談合のそしりを受けることな く賃金水準が設定できるのである。

もちろんここで論じられているのは、公契約条例を進める上で「直接には労働者の参画によらず、事 業者の団体が率先して地域の賃金相場の最低 限を定める」ことも意味があるんだよ、ということなんですが、公契約にかかる賃金水準に限らず、最低賃金そのものについてもこういう議論を改めて考え直してみる必要もあるのではないか、ということも感じるのです。

少し前に本ブログで、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-503d.html (業者間協定は最賃の黒歴史か?)

・・・今になって考えれば、当時あれだけ「ニセ最賃」と罵倒していた業者間協定をうまく使って、それに関係労組をうまく載っけるかたちでのソフトランディングってできなかったのだろうか、という思いもする。

土俵は既にあったのだ。その、企業を超えた賃金設定システムという土俵を、たたきつぶして、もはやその夢のあとすら残っていない。・・・

ということを述べてみましたが、それこそ介護とか建設といった社会的に労働力が必要なのに労働条件が低劣であるために人が集まらず人手不足に陥っているいくつかの業種について、労働組合の組織もほとんど進んでいない状況にあることも考えると、業者間協定というか、経営者団体主導のかたちで地域最賃よりもかなり高いレベルで産別ないし職業別最賃を設定するような方向への議論というのはあり得ないのか、と結構思います。

そんなのは最賃の本筋に反するという反論は重々承知の上ですが、それだからといって、今のように、どうしても国内で労働力が必要なのに人手不足だから外国人を入れようという方向にどんどん進んでいくことに比べたら、悪さの度合いは少ないのではないか、と。

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「副主任」への「降格」とはいったいどういうことなのか?

例の妊娠にかかる降格をめぐる裁判について、最高裁から差し戻されていた広島高裁の判決が出たということですが、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H92_X11C15A1CC1000/ (マタハラ降格に賠償命令、女性が逆転勝訴)

そもそも、解雇や不利益取り扱いといった既に男女均等法で禁止されていることどもをわざわざ未だ違法とはされていないハラスメント概念を無理に広げて「マタハラ」と称すること自体への批判は別のエントリで既に述べたところなので、ここではこれ以上いいません。

ただ、昨年最高裁判決が出たときに本ブログで述べたことについては、今回も必ずしもきちんと認識されているとは言いがたいように見受けられるので、単なる蔵出しですが、ここに再掲したいと思います。タイトルは、より趣旨が明確になるように変えました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-a182.html (単なるマタハラ裁判じゃなくって・・・)

一昨日の最高裁判決については、マスコミもそろってマタハラががががが、という感じですが、すでにアップされている判決文を読むと、なかなかディープな問題が孕まれているようです。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf

現時点では踏み込んだ論評は労務屋さんのこれくらいのようですが、

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20141024#p1

「このあたりhamachan先生なら「メンバーシップ型雇用ががが」とおっしゃられそうな。」とけしかけられてますが(笑)、いやまさにそこが微妙なところだろうとわたしも感じました。

これは結局「降格」ってなあに?という問題なんですね。

純粋ジョブ型で、当該職務の難易度に基づいて値札がつけられているのであれば、妊娠中の軽易業務への転換によってジョブの値段が下がればもらう賃金も下がるのは当たり前。同一労働同一賃金とは異なる労働異なる賃金ということですから。

一方、ジョブではなく人そのものに値札が付いているのであれば、軽易業務に移ろうがハード業務に移ろうが(別途手当がでることはあっても)基本給は変わらない。これがメンバーシップ型の基本。

で、「降格」ってのは、一般的にはメンバーシップ型の基本構造である職能資格制における上の資格から下の資格へ下げることであって、仕事の中身とは直接関係があるとは限らない、というのが日本型システムにおける定義です。正確には、これは「昇格」の対義語としての「降格」ですね。ですから、仕事の中身ではなく、もらう賃金に直接関わる概念です。

ところが、「昇格」にはちょっと意味の違う類義語があります。「昇進」てことばです。実際にはほとんど同義語で使う人もいますが、正確に言うと、昇格と違ってこちらは仕事の中身に直接関わる。企業内の管理監督構造の中でより上のジョブに上がることであって、とりわけ日本ではだからといって昇格するとは限らず、つまり賃金が上がるとは限らないこともあります。

では、「昇進」の対義語はなあに?と聞くと、これが「降格」だったりするから話がややこしくなるのですね。

ううん、本当は「職位低下」とかそれ専用の言葉にした方が紛らわしくなくて良いのではないかと思うのですが、下げる方は一緒くたの言葉なんです。

そうすると、その「降格」って、実際の企業組織内における機能としてのジョブの位取りが下がるってことなの?それとも賃金決定基準である人の値札としての職能資格を下げることなの?という問題が出てきます。

この判決の事件って、そこがなんだか曖昧でごちゃごちゃしているんですね。要は「副主任」ていう資格から「降格」させられた、って話なんですが、軽易な業務に移るというのだから職位が低下するのはある意味当たり前。純粋ジョブ型ならそれに応じて賃金が下がるのも当たり前。

ところがメンバーシップ型を前提にすれば、仕事の中身と切り離されているはずの職能資格上の「降格を」させられる筋合いはないはずということになります。それなら仕事もろくにしてないのに高い給料もらっている「働かないオジサン」もさっさと「降格」しろよ、ってことになる。

この判決を読んでも、「副主任」という「資格」は、一方では実際のリハビリ科とかBとかの業務推進単位における機能的地位であるかのようにも見えるし、一方で管理職手当を出すためのまさに職能資格であるようにも見える、という大変曖昧な印象を受けます。

そこのところが、労務屋さんも気になったし、私も気になった、

一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。

という大変微妙な表現の背後にあるのではないでしょうか。「一般に」として言っているのは、まさに日本型雇用システムにおける職能資格制における典型的な「降格」で、だからそれは均等法違反だよ、でおおむね済むわけですが、「又は」以下で書かれているのは、「副主任」ってのがそんな仕事の中身と関係ないただのラベルじゃなくって、実際にその職場における機能的地位を示すものである場合、つまりなにがしかジョブ型における職位を示すものである場合は、そうは簡単に論じられないよ、ということをさりげに示しているように思われます。

一般的には病院というのは人の配置の仕方においてはわりとジョブ型の世界ですが、しかし処遇制度は職能資格制度をそのまま取り入れていることが多いので、こういうことになるのでしょう。

この判決を、ただのマタハラ事件判決として消費してしまうのは、ですからいささかもったいない面があるのです。

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無知蒙昧のウォールストリートジャーナル社説

こういう全く実定法規上の根拠の欠如したことを平然と書けるのでは、ウォールストリートジャーナルも赤新聞並と言われますよ。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB11673646430017294066804581360870356997568 (【社説】アベノミクス、今こそ再考の時)

・・・首相はまた、正社員の解雇を難しくして年功序列の賃金体系を促している労働契約法の見直しにも失敗している。非正規雇用は不完全な一時しのぎに過ぎず、2層式の労働市場の効率の悪さは深刻だ。・・・

いうまでもなく、労働契約法のどこにも、「正社員の解雇を難しくして年功序列の賃金体系を促している」ような規定はありません。西欧諸国並の(むしろ西欧諸国の方がはるかに事細かな)解雇規定

(解雇)

第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

と、自分で約束したことはちゃんと守ろうねという契約理論にわざわざ例外を設けてくれている

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条  使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

は、素直に読めば極めて緩やかな規定のはずです。

それがそうならないのは、もちろん、企業自身が(法律がそうしろなんて一言も言っていないのに)(無限定な労働義務と引き替えに)勝手に終身雇用、年功序列という慣行にどっぷりとつかり、それを労働者に約束してきたからであって、六法全書のどこをどういじくってみたところで、何の気休めにもならないということは、口が酸っぱくなるくらい繰り返してきたはずですが、無知蒙昧かつ軽薄な日本人ヒョーロン家の舌先三寸を信じ込む不勉強な経済新聞記者の姿が露呈してしまったというところでしょうか。

せっかく、nippon.comで英語をはじめとする諸外国語に訳された「「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム」があるので、せめてこれくらいはちゃんと読んでから社説を書くなりして欲しいところです。

http://www.nippon.com/ja/currents/d00088/ (「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム)

http://www.nippon.com/en/currents/d00088/ (Addressing the Problems with Japan’s Peculiar Employment System)

(追記)

それにしても、朝日新聞は、かくもネオリベむき出しのWSJの社説を、アベノミクスを批判しているからというだけの理由で、かくも嬉しそうに嬉嬉として紹介するわけですかね。

http://www.asahi.com/articles/ASHCL4DCCHCLUHBI013.html?iref=comtop_list_int_n03

・・・労働市場の改革では「余剰となった正社員の解雇を難しくし、年功序列の昇進を促している法律の見直しもできていない」と批判。電力の自由化や環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意など構造改革の一部は評価しながらも、「安倍氏が本当の改革を後押ししなければ、自分が行き詰まることになる」と警告した。

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最賃引上げの10年

WEB労政時報に「最賃引上げの10年」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=462

十年一昔と言いますが、2006年9月に第一次安倍内閣ができてから約10年が経ちました。この間、政権交代があり、労働政策も右に行ったり左に行ったり有為転変を重ねてきましたが、この10年間一貫してある方向に進められてきた分野があります。それは最低賃金の大幅引き上げという政策です。

 論より証拠、それ以前の2001年から、以降毎年の地域最低賃金(地賃)の時間額を推移で見てみましょう。中央最低賃金審議会が目安を示すA~Dのランクごとに一つずつ代表的な都県で例示しておきます。・・・・・

 
 
 
東 京
(Aランク)
埼 玉
(Bランク)
福 井
(Cランク)
沖 縄
(Dランク)
2001年 708 677 642 604
2002年 708 678 642 604
2003年 708 678 642 605
2004年 710 679 643 606
2005年 714 682 645 608
2006年 719 687 649 610
2007年 739 702 659 618
2008年 766 722 670 627
2009年 791 735 671 629
2010年 821 750 683 642
2011年 837 759 684 645
2012年 850 771 690 653
2013年 869 785 701 664
2014年 888 802 716 677
2015年 907 820 732 693
[注]各ランクと都道府県の対応は以下のとおり。
Aランク:千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
Bランク:茨城、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島
Cランク:北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡
Dランク:青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

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バズらせる力

「バズらせる」なんていう動詞は初めて見ましたが、

https://twitter.com/kyo_ju_/status/665290471921418240

"ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用"とか、"リベサヨ"とか、某さんのバズらせる力ほんとこわい。

ジョブ型、メンバーシップ型はともかく、「リベサヨ」については、私が使い出したときに意図していた意味(西欧的な「リベラルな右派 対 ソーシャルな左派」という世界共通の対立図式を当然の前提としつつ、肝心要の「ソーシャル」が希薄になった、というより欠如した左派、自らをリベラルと自称したがる奇妙な「左派」な人々を、揶揄する趣旨)とはまるで全然違う意味の言葉(リベラルすなわち左派というアメリカ特有の用語法に基づく単なる左翼に対する悪口としての重畳語)として世間では「バズ」ってしまっているのですから、「バズらせる」能力はゼロどころかマイナスというべきではないでしょうかね。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-6bcb.html (リベサヨって、リベラル左派の略だったの?)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-31a0.html (リベサヨのちょうど正反対)

「リベサヨ」という言葉は、私の知る限り私が作った造語であって、その意味は、西欧的な「リベラルな右派 対 ソーシャルな左派」という世界共通の対立図式を当然の前提としつつ、肝心要の「ソーシャル」が希薄になった、というより欠如した左派、自らをリベラルと自称したがる奇妙な「左派」な人々を、揶揄する趣旨であったことは、本ブログで繰り返し述べてきたところですが、・・・・・

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国・淀川労基署長(大代興業ほか1社)事件(大阪地判平成26年9月24日)

本日、東大の労働判例研究会で1件評釈してきました。国・淀川労基署長(大代興業ほか1社)事件(大阪地判平成26年9月24日)(労働判例1112号81頁)(ダイジェスト)です。

判決文を読んでとてももやもやしたので選んだんですが、ちゃんとした評釈というより、半ば立法論のようなエッセイ風になりました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rohan151113.html

・大阪市立C複合施設を運営するD事業団は、機械警備及び設備管理をA興業に、清掃業務をB社に請け負わせていた。
・Kは平成12年4月16日A興業に雇用され、プール施設管理業務に従事していた。死亡当時の体制は、早番(午前8時~午後4時)と遅番(午後2時45分~午後10時)からなり、Kは遅番として勤務していた。
・早番のFが休業から復帰した平成20年4月1日以後も体調が回復しなかったため、Kは週2回程度Fの代わりに早番をし、引き続き遅番もしていた。
・Kは平成20年7月からB社のアルバイトとして週1回の休館日(月曜日)にプールサイドの清掃業務に従事し、同年10月からはさらにA興業の業務終了後浴室と男性更衣室の清掃業務に従事するようになった。
・平成20年11月3日午前6時頃、本件施設トイレ付近でKが死亡。
・Xは平成21年7月17日遺族補償給付等を請求。
・監督署長は、A興業の賃金を基礎に給付基礎日額を算定して給付処分。
・Xは、A興業とB社の賃金を合算して労働時間と給付基礎日額を算定すべきとして審査請求、再審査請求をしたがいずれも棄却され、平成24年4月13日本件訴えを提起。

現行法を前提とすると判決に文句をつけにくいのですが、制度のあるべき姿という観点からすると、いっぱい論点がありそうです。

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A Welcome Revision of the Worker Dispatch Act@Nippon.com

Nippon.comに先週掲載された「ようやく普通の法律になった労働者派遣法」の英語版がアップされました。「A Welcome Revision of the Worker Dispatch Act」というタイトルです。

http://www.nippon.com/en/currents/d00203/

D00203_mainThe recent revision of the Worker Dispatch Act has been criticized as promoting ongoing use of agency-dispatched workers. But one expert argues that it marks a welcome shift toward compliance with international norms.

A Highly Peculiar Japanese Law

Protecting the Jobs of Regular Employees

The 1999 Revision: A Missed Opportunity for Fundamental Reform

Dropping the Fiction of 26 “Specialized” Job Categories

A First Step to Legal Protections for Dispatched Workers

諸外国の人々に、本稿の趣旨が伝わることを願っています。

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賃金・最低賃金引上げを通じた消費の喚起@経済財政諮問会議

本日午後6時15分から平成27年第18回経済財政諮問会議及び第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議課題別会合合同会議が開かれ、その資料が早速アップされていますが、

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/1111/agenda.html

そのうち、有識者議員が提出した「GDP600兆円の強い経済実現に向けた緊急対応策について」に、賃金や最低賃金の引き上げを求める一節が次のように書かれています。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/1111/shiryo_02.pdf

<

2.賃金・最低賃金引上げを通じた消費の喚起

GDP600 兆円を今後5年程度(名目成長率は平均3%程度)で実現していくためには、これにふさわしい賃上げや最低賃金の引上げへの取組が重要である。

● 昨年の政労使合意を引き続き遵守し、来年度の賃金については、業績が拡大した企業を中心に、年収ベースで大幅な引上げを、また、今冬のボーナスについても、最大限の引上げを期待する。最低賃金についても、早急に方針を固めるべき。

● 政府は、こうした取組を後押しするため、上記法人税改革とともに、中小企業の生産性向上等に向けた取組を大胆に推進すべき。

● 賃金引上げの恩恵が及びにくい低年金受給者にアベノミクスの成果が波及するよう対応すべき。

今日も都内某所でお話ししたところですが、労働組合が支持する政党ではない政権が労働組合が生ぬるいと賃上げを唱道するという事態の皮肉さをもう少し真剣に考えて見る必要がありそうです。

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第1回 「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」における主な意見

先週金曜日に開かれた規制改革会議雇用WGの資料が内閣府HPにアップされています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/koyo/151106/agenda.html

1.労使双方が納得する雇用終了の在り方に関する検討状況について(厚生労働省ヒアリング)

2.ジョブ型正社員の雇用ルールの整備に関する検討状況について(厚生労働省ヒアリング)

3.一定の手続の下で行われる転職スキル形成に対し、政府が支援する制度の整備に関する検討状況について(厚生労働省ヒアリング)

4.労働者派遣制度の見直しに関する検討状況について(厚生労働省ヒアリング)

5.雇用仲介事業の規制の再構築に関する検討状況について(厚生労働省ヒアリング)

いずれも厚生労働省の説明だけで、特に目新しいものはない・・・・と思ったら、いやありました。

最初の労使双方が納得する雇用終了の在り方に関する検討状況の中に、10月29日の第1回会合の主な意見が載っていて、厚労省HPにはまだ議事録がアップされていないので、これはこちらだけで見ることができる状態です。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/koyo/151106/item1-1.pdf (7枚目以降)

<議論の進め方>

○ 労使双方が納得できる議論となるよう、互いの立場を思いやりつつ、よりよい制度づくりに向けて議論を進めるべき。また、解雇無効判決時における金銭救済制度が注目されがちであるが、紛争予防と紛争解決が重要。

○ 検討会の進め方として、金銭救済制度の創設を前提とせずに議論するべき。また、個別労働関係紛争解決システムの現在の様々な解決手段(労働局や労働委員会におけるあっせん、労働審判、民事訴訟)がどのように機能しているかについて、共通認識を作る必要があるのではないか。

○ 現行の紛争解決システムの運用に関することのみであれば所管の審議会で議論すればよい。成長戦略としてグローバルにも通用するようなルール作りについての要請があり、この検討会が立ち上がったことを踏まえれば、そうした立法政策の大枠をここで議論するべき。

○ 現状の労働紛争解決システムが有効に機能しているかという議論と、解雇の金銭解決ルールの創設や、ADRと司法手続の連関性といった立法政策上の議論は有機的に関連しており、両者を一体的に検討することが必要。

○ 紛争解決に関わる当事者のヒアリングが必要であり、ヒアリングはテーマを分けて丁寧にやるべき。労働相談、あっせん、労働審判、裁判で、それぞれどうやって解決しているのかを知ることが必要。また、監督署・総合労働相談コーナー・法テラスなどへ相談に行った労働者が、その後どの紛争解決機関へ行くのかといった動きを知ることも必要。

<既存の労働紛争解決システムの運用に関する意見>

○ 労働委員会あっせんの長所、すなわち、使用者側の参加率を高める観点から、労使委員による当事者の説得や、調整に十分な時間を掛けていることに注目し、他制度の改善に活かすべき。

○ 労働局あっせんは解決金水準が低いとされるが、解雇が不当ではない事案もあっせんの対象として含まれていることは前提として共有すべき。

○ 労働審判制度は、法曹関係者も含めて労使とも高く評価しており、これをより使いやすい制度にしていくことが重要。労働審判の創設により予見可能性は向上している。

○ 中小企業労働者には訴訟や労働審判へのアクセス障害(労働審判制度を知らない、弁護士費用が払えない等)があり、その解消が課題。

○ 紛争解決の現状をみると、紛争防止のため、まずは現行のルールや基本的な労働法令の周知徹底が必要。

<解雇無効時における金銭救済制度をはじめとする立法政策に関する意見>

(金銭救済制度について)

○ 社会的に何が合理的なのかがわかるよう、解雇に関するルールの明確化という観点から金銭救済制度の創設が必要。あっせん・労働審判等で既に金銭解決がなされており、是か非かを議論しても意味がない。制度の創設に当たっては、欧州諸国のように、補償金の上下限を定め裁判官が判断するという仕組みを考えるべき。

○ 日本型システムがほころびを見せる中で、グローバル化に対応し、他の改革と連動した改革を行い、外国企業をアトラクトし、日本経済再生につなげていくことが重要。

○ 我が国の解雇訴訟では依然としてYesかNoの二択なので、勝敗の見通しが困難。法律上の制度の中で金銭水準を示して解決するというのも、予見可能性を高めるための一つの手法。

○ 個別紛争のあっせんはじめ、現行制度下で行われている金銭解決に関し、勤続年数、年齢、正規・非正規などの詳細なデータを分析した上で、欧州の制度も参考にしつつ、例えば何らかのガイドラインを作るべき。

○ 解雇の金銭救済制度は、解雇しやすくするということではなく、あくまで、労働者に多様な手段を用意するために検討すべきもの。その意味でも、その申立主体は、労働者側に限るべき。そうすれば労使双方の納得が得られる。

○ 解雇の金銭救済制度は、平成18年の労政審建議で「引き続き検討」となっているところ、まずは、当時から現在にかけて、どのような事情の変化があったのかを捉えるべき。

○ 解雇の金銭救済制度に関する検討は、手続面を含め、かなりテクニカルな議論が必要。その際、現行の裁判の中で、解雇について損害賠償請求を認容しているものについても分析が必要。

○ 紛争解決の際、解決金水準は個別事案に応じ、当事者の主張を考慮して決めることとなる以上、一概には決まらないというのが経験からの印象。

○ 解決金水準にはいろんなファクターが影響する。賃金水準や、解決にかかる期間もそうだが、本質的なのは、データ化が難しいが、心証形成。また、そもそもの根幹である苦情・不満への対処についても、紛争解決に含まれているのではないか。

(その他の立法政策について)

○ 多様なシステムは整備できたが、それぞれの関連が不十分。労働局のあっせんが不調だった後、行政のADRから司法の訴訟制度に移る際に、円滑にステップアップできるようにするための制度の整備が必要。諸外国では(あっせんの前置などを)整備している例もある。

○ 日本は、地位確認はできるが就労請求権がないということが大前提である旨を共有すべき。

○ 解雇無効等を訴えることのできる労働者はごく一部であり、ほとんどが泣き寝入り。更なる有効な解決手段の整備が必要。

どれが誰の発言かは今のところ不明ですが、だいたい想像できる発言もありますね。

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名誉教授は解雇できるか?

http://www.asahi.com/articles/DA3S12058747.html(日大、名誉教授を解雇方針 元組幹部から2000万円借金)

 日本大学は9日、日大の名誉教授(77)が暴力団関係者から2千万円を借り、返済していないと発表した。暴力団関係者は指定暴力団山口組の元幹部とみられる。大学の調査に対し、名誉教授は「(元幹部は)自分にとっては紳士的でいい人」などと話し、反省の言葉はないという。日大は10日にも名誉教授を解雇する方針だ。

とりあえず、法学部の先生が暴力団幹部から借金していいか悪いかという話は横に置いておいてですね、まことにトリビアながら気になったのは、名誉教授、って、解雇できるの?ということだったんですが。

実は、本件に関する限り種明かしは単純で、

・・・名誉教授は大学院法学研究科の非常勤講師として、週3コマ、英米法などを教えている。現在は休講している。・・・

労務の提供と報酬の支払いという雇用契約関係は非常勤講師という身分で現に存在していますので、当該非常勤講師としての雇用契約を一方的に解除するという意味での解雇は可能です、もちろん。

ただし、それはあくまでも非常勤講師の解雇であって、名誉教授の解雇ではないはず。名誉教授というのは、雇用ないし他の労務提供関係の存在しない称号であって、剥奪することはあっても解雇というのはあり得ないのではないか、と思われます。

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業者間協定は最賃の黒歴史か?

最賃の歴史では、だいたい1959年法で規定され、1968年改正で廃止された業者間協定方式の最賃を「ニセ最賃」と呼んで、黒歴史扱いしている。

たしかに、国会でILO条約をクリアしていないから変えますと言わされて廃止されたんだから、ある意味で黒歴史には違いない。

しかし、逆に言えば、ある地域のある業界の経営者団体を、自分たちの雇う労働者の最賃を決めさせるという土俵に引っ張り出して、責任を持たせていたということだってできる。

当時の労組は、全国一律最賃教を唱えるばかりで、自分たちの力で地域で業種で最賃を協定のかたちで勝ち取るなんてことはほとんどやれなかったし、今に至るまでほとんどできていない。

当時、地域一律最賃にすら反対していた経営側が、70年代前半に全都道府県で地賃ができてしまったら、今度は産別最賃なんていらないからやめれといいだして、80年代には何とか新産別最賃にし、2000年代には特別最賃にしたりして生き延びさせてきたけれど、そもそも企業別組合の枠を超えられない日本の労働組合には、自分たちで産別最賃を作り出す力量は乏しいということが立証されたかたち。

今になって考えれば、当時あれだけ「ニセ最賃」と罵倒していた業者間協定をうまく使って、それに関係労組をうまく載っけるかたちでのソフトランディングってできなかったのだろうか、という思いもする。

土俵は既にあったのだ。その、企業を超えた賃金設定システムという土俵を、たたきつぶして、もはやその夢のあとすら残っていない。

半世紀前のある歴史的方向付けが、その後の歴史の可動範囲をどれだけ狭めてしまったか、もはや当時の関係者はほとんどいなくなったと思われる現在だからこそ、偏見なしに考え直してみても良いのかも知れない。

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TPP協定の暫定案文労働章

内閣官房のTPP政府対策本部のHPに、TPP協定の暫定案文の概要がアップされています。

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/13/151105_tpp_zensyougaiyou.pdf

そのうち、第19章の労働章は、マスコミはほとんど注目しませんが、労働関係者はちゃんと目を通しておくべき文献です。

第19章.労働章

1.労働章の概要 

 国際的に認められた労働者の権利に直接関係する締約国の法律等(以下「労 働法令」という。)を執行すること、国際労働機関の 1998 年の労働における基 本的な原則及び権利に関する宣言並びにその実施についての措置(ILO宣 言)に述べられている権利を自国の法律等において採用し、及び維持すること、 労働法令についての啓発の促進及び公衆の関与のための枠組み、協力に関す る原則等について定める。

2.主要条文の概要

○労働者の権利(第19.3条) 各締約国は、自国の法律等において、ILO宣言に述べられている権利(結社 の自由及び団体交渉権の実効的な承認、強制労働の撤廃、児童労働の実効的な廃 止並びに雇用及び職業に関する差別の撤廃)を採用し、及び維持することを規定。 また、労働条件(最低賃金、労働時間等)を規律する法律等を採用し、及び維持 することを規定。

○逸脱の禁止(第19.4条) いずれの締約国も、第19.3条1に規定する労働者の権利と両立しない場合 等には、締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼす態様により、自国の法律等につ いて免除その他の逸脱措置をとってはならず、又はとる旨提案してはならない 旨を規定。

○労働法令の執行(第19.5条) いずれの締約国も、貿易又は投資に影響を及ぼす態様により、自国の労働法令 を効果的に執行することを怠ってはならないこと等を規定。 ○強制労働(第19.6条) 各締約国は、強制労働によって生産された物品を輸入しないよう奨励する旨 を規定。

○企業の社会的責任(第19.7条) 各締約国は、企業に対し、労働問題に関する社会的責任についての自発的活動 74 を任意に採用することを奨励するよう努める旨を規定。

○啓発及び手続上の保証(第19.8条) 各締約国は、自国の労働法令等に関する情報を公に入手可能とすること等に より、自国の労働法令に関する啓発を促進すること、締約国の法令に基づいて認 められる利害関係を有する者が裁判所を利用する機会を有することを確保する こと等を規定。

○公衆の意見の提出(第19.9条) 各締約国は、本章に関連する事項について締約国の者からの意見書の受領及 び検討について定めること、意見の提出者に対し適時に回答すること等を規定。

○協力(第19.10条) 締約国は、本章の規定の効果的な実施のための仕組みとしての協力の重要性 を認めること、協力活動を行う際の指針とすべき原則等を規定。

○労働評議会(第19.12条) 締約国は、各締約国が指名する大臣又は他の地位の政府の上級代表者から成 る労働評議会を設置すること、同評議会は原則として2年ごとに会合すること、 同評議会は本協定の効力発生の日の後5年目の年に本章の規定の実施について 検討を行うこと、その他同評議会の任務等を規定。

○連絡部局(第19.13条) 各締約国は、自国の労働省又はこれに相当する機関の部局又は職員を本章に 関連する事項を取り扱うための連絡部局として指定すること等を規定。

○公衆の関与(第19.14条) 各締約国は、自国の労働者団体の代表者及び事業者団体の代表者等が本章に関 連する事項について意見を提供するため、労働に関する協議機関、諮問機関等を 設け、又は維持すること等を規定。

○協力のための労働対話、労働協議(第19.11条及び第19.15条) 締約国は、本章の下で生ずる問題に関する他の締約国との対話(第 19.1 1条)及び労働協議(第19.15条)をいつでも要請することができること、 同協議により問題を解決することができない場合には、労働評議会の代表者が 会合することを要請することができること等を規定。また、一定期間内に問題を 75 解決することができなかった場合には、紛争解決章の規定に基づくパネルの設 置を要請することができること等を規定。

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工学的な生産性、経済学的な生産性

去る10月21日に開かれた労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会に、芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授が提出した資料の中に、こういう一句がありまして、

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000102933.pdf(6ページの上のパネル)

工学的な生産性は世界でもトップレベルであるのに、経済学的な生産性(労働生産性)が非常に低い。

建設業を象徴する問題

いや、それ、建設業だけの話じゃない。でも、建設業に象徴的に現れている問題ではあるのでしょう。

労働生産性の向上≒賃金の向上

            付加価値額
労働生産性=-----------
         従業者数(×労働時間)

なぜ、建設業の労働生産性は低いのか?
 分子が小さい(受注単価が低い)
 分母が大きい
 従業者(のべ人数)が多すぎる
 稼働率が低い(歩掛が低い)

なぜ、稼働率が低いのか?
 技能レベルの低下
 無駄な重層下請

先進諸国にあって日本にないもの
 建設技能者の証:技能者のID
 能力評価の基準
 能力に応じた地位、処遇
 教育訓練の知識ベース・マニュアル
 入職時のみならず継続的な教育・訓練
 近代徒弟制度
 制度確立・運用のための基金

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「労使コミュニケーションの課題」6@『生産性新聞』

『生産性新聞』11月5日号に、インタビュー記事「労使コミュニケーションの課題」6「企業別組合ベースに全労働者が加入する代表組織を」が載っています。

●労使コミュニケーションをめぐる現状をどう見るか
近年、労使コミュニケーションの重要性について、あらためて認識されるようになっているが、全雇用労働者の4割近くを非正規労働者が占めるようになった今、労使コミュニケーションの形骸化が指摘されている。
非正規労働者を取り巻く問題は、労働法政策の中心的課題となっているが、そこに欠落しているのは、集団的労使関係の枠組みの中で非正規労働者の問題を正面から論じる姿勢である。
労使コミュニケーションの実効性を高めていくために、集団的労使関係の枠組みから外れている非正規労働者をいかにカバーし、集団的労使関係の適用領域を拡大していくかが問われている。

●コミュニティ・ユニオンなど企業外の労働組合に頼る非正規労働者も少なくないが
非正規労働者の組織化に成果を収めている労働組合もあるが、労働組合のメンバーシップはおおむね正社員に限られている。このため、解雇や雇止め、労働条件の切り下げ、嫌がらせといった問題に直面する非正規労働者の多くは、コミュニティ・ユニオンなど企業外の労働組合に頼らざるを得ない。
その組合員になって使用者に団体交渉を申し入れると、複数組合平等主義に立つ現行法の下では、使用者はその団体交渉に応じなければならない。拒否すると、不当労働行為として労働委員会から団交応諾命令が発せられる。これらは、形式的には集団的だが、実質的には個別的な「団体」交渉で、個別紛争を解決する上で、有効に機能してきた。
しかし、こうしたシステムが個別紛争解決手段として活用されていけばいくほど、集団的労使関係の本質的な意義であるはずの「集団としての労働者の利害調整メカニズム」という側面は弱まる。

●今後の集団的労使関係の枠組みのあり方について
今後、求められるのは、戦後70年かけて築かれてきた日本の集団的労使関係を前提にしながら、すべての労働者が集団的な枠組みの中で、きちんとその権利を保障されるような仕組み作りだ。
その一つとして提起されているのが、従業員代表制の法制化をめぐる議論だが、極めて結論が出しにくい議論になっている。
西欧では、労働組合は企業の外に置かれ、企業内の従業員代表制による労使協議が法律で義務付けられている。これに対し、日本では労働組合の多くは企業別に組織され、賃金・労働条件や労働協約の締結もほとんどすべて個別企業レベルで決定される。日本の企業別組合が、西欧の労働者代表機関とほぼ同じ機能を個別企業レベルで果たしている現状を鑑みると、既存の労働組合とは別の従業員代表組織を法制化する困難さに気付く。
そこで、論理的に破綻した主張であることを承知の上で、あえて、「現在の企業別組合をベースに正社員も非正規労働者もすべての労働者が加入する代表組織を構築していくこと」を唯一の現実可能な選択肢として主張せざるを得ない。これが、特に企業内労使コミュニケーションの自覚的再構築につながるものと考える。  (談)

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ようやく普通の法律になった労働者派遣法@nippon.com

日本の政治、経済、社会および文化について、広く海外の読者に情報発信を行うことで、国際社会における対日理解の促進を図っている「nippon.com」という多言語発信サイトに、本日「ようやく普通の法律になった労働者派遣法」を寄稿しました。

http://www.nippon.com/ja/currents/d00203/

日本語バージョンから始まって、英語、中国語(繁体字、簡体字)、フランス語、スペイン語、そしてアラビア語までこれから翻訳されていく予定です。

D00203_main 2015年通常国会でようやく改正労働者派遣法が成立し、極めて特殊であった日本の労働者派遣法がようやく先進国並みの普通の法律となった。しかしその道のりはなめらかではなかった。2014年3月に国会に提出した法案も、同年9月に提出した法案も廃案となり、2015年3月に提出した法案も野党の猛反対で延々審議が続けられ、ようやく(安全保障法案可決のためにわざわざ延長されていた)9月になって成立に至ったのである。しかし、国会での野党の主張やマスコミなどで語られる派遣法をめぐる議論は、日本の労働者派遣法の本質的な問題から目をそらし、情緒的な議論に終始するものであった。・・・・・

ちなみに、一昨年には「「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム」を寄稿しております。これは既に上記各国語に訳されています。

http://www.nippon.com/ja/currents/d00088/ (「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム)

http://www.nippon.com/en/currents/d00088/ (Addressing the Problems with Japan’s Peculiar Employment System)

http://www.nippon.com/cn/currents/d00088/ (“限定型正式雇员”和日本式雇用体系)

http://www.nippon.com/hk/currents/d00088/ (「限定型正式雇員」和日本式僱用體系)

http://www.nippon.com/fr/currents/d00088/ (Les problèmes spécifiques du système de l’emploi japonais)

http://www.nippon.com/es/currents/d00088/ (La problemática del modelo de empleo japonés)

http://www.nippon.com/ar/currents/d00088/ (نظام التوظيف في اليابان)

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人事制度を考える上で必須な本!

Chuko amazonで『若者と労働』へのカスタマーレビューがまた書き込まれたようです。

http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4121504658/ref=cm_cr_dp_synopie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=bySubmissionDateDescending#RB6E7XSOO3B2O

評者は「あきら」さんです。

誰かが レビューで、「これから社会に出ていく若者向けの本だろう」と思い込んでいた。しかし 実際に読んでみると まったく違う。

日本の雇用制度や雇用慣行の成り立ちがきわめて明快に解説されており、まさに 日本の労働、雇用を歴史的に俯瞰した内容である。

最近 人事制度関連の貧では 役割制度などかかまびすしい議論が盛んだが、新人など若年層の位置づけの議論はかなりあいまいである。

職務や役割に応じた賃金という議論の本でも、若手社員は相変わらず、職能資格制度的なものをベースにしている。

なんだかなぁーという感想を持つことが多かったが、この本を読むとそのあたりのことが きわめて明瞭に理解できる。

賃金制度など 人事制度の構築にかかわる人にとってもこの本は一読すべき本だと思う。

ありがとうございます。『若者と労働』は若者を切り口に日本の雇用を描いた本であって若者向けの人生論というわけではなく。『日本の雇用と中高年』は中高年を切り口に日本の雇用を描いた本であって中高年向けの人生論ではなく、そして今度出す『働く女子の運命』も女子を切り口に日本の雇用を描き出そうとした本であって、女子の生き方論というわけではありません。

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事務所衛生基準規則第17条

朝日の夕刊に、

http://www.asahi.com/articles/ASHBY00QNHBXUUPI002.html?iref=comtop_pickup_01 (「女性トイレ禁止は差別」提訴へ 性同一性障害の公務員)

Asahi 心は女性である性同一性障害の職員は、戸籍上の性別が男性である限り、女性トイレを使ってはならない――。経済産業省がこんな原則を示し、使いたければ異動ごとに職場で同障害を公表するよう求めていた。この職員は近く「人格権の侵害で、同障害を理由にした差別だ」として、東京地裁に行政訴訟と国家賠償訴訟を起こす。

と、LGBTネタの労働問題が載っております。

『季刊労働法』でも次号でLGBTをミニ特集で取り上げるという話もあり、興味深いトピックではありますが、ここで取り上げたのはもう少しとリビアなネタでして、

経産省は、女性の服装や休憩室の使用は認めたものの、女性トイレの使用は原則として許可しなかった。この職員が情報公開請求して開示された資料によると、女性トイレの使用を認めない理由について、経産省は①労働安全衛生法の省令で男女別のトイレ設置が定められている②女性職員の了解が不可欠だが、2人から「抵抗感がある」との声があがった――などと説明。戸籍上の性別を女性に変えない限り、障害者トイレを使ってもらい、女性トイレを望む場合は異動ごとに同障害を公表して同僚の理解を得るよう求める原則を確認した、としている。

ちょっと待った、そこで労働安全衛生法がでてきますかね。

この省令というのは、事務所衛生基準規則ですね。確かにその第17条にはこういう規定がありますが。

(便所)

第十七条  事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

一  男性用と女性用に区別すること。

二  男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者六十人以内ごとに一個以上とすること。

三  男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者三十人以内ごとに一個以上とすること。

四  女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者二十人以内ごとに一個以上とすること。

五  便池は、汚物が土中に浸透しない構造とすること。

六  流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けること。

2  事業者は、便所を清潔に保ち、汚物を適当に処理しなければならない。

この省令はあくまでも便所を男性用と女性用に区別しろと言っているだけであって、この戸籍上は男性だが心は女性の職員に女性用便所の使用を禁ずる根拠になるかどうかは疑問なような気がしますが。

しかし懐かしいなあ。わたしはこれで「便房」とか「便池」という言葉を初めて覚えたものです。

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勤務間インターバル特集@『労働の科学』

Dsl7010_2『労働の科学』10月号は、勤務間インターバル特集です。

http://www.isl.or.jp/service/publishing/backnumber/486-dsl70-20.html

巻頭言

勤務間インターバル制と労働時間:[天理大学 大学院体育学研究科長]近藤 雄二

勤務間インターバル規制の意義――EU労働時間指令と日本:[独立行政法人労働政策研究・研修機構]濱口 桂一郎

勤務間インターバル制の実情と課題:[独立行政法人労働政策研究・研修機構]池添 弘邦

長時間労働と健康障害:[新日鐵住金株式会社 和歌山製鐵所 産業医]岩根 幹能

「勤務間インターバル制度」は疲労対策の特効薬となりえるか?:[労働安全衛生総合研究所]久保 智英

全社員を対象に11時間の勤務間インターバル制度を導入:[KDDI労働組合]春川 徹

というわけで、わたくしも1本寄稿しております。

基本的に、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/8-8fc0.html (第88回日本産業衛生学会の案内)

で報告した内容です。

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永井彰子『聖人・托鉢修道士・吟遊詩人』

41pbzupioal_sx344_bo1204203200_ 永井彰子さんからご著書『聖人・托鉢修道士・吟遊詩人』(海鳥社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://kaichosha-f.co.jp/persons/3908.html

盲目の乞食楽士の絵に導かれ、ヨーロッパの盲人の歴史を探る。 盲人の聖人への信仰から吟遊詩人、中世フランスの救済院、ウクライナのゴブザーリ、さらに琵琶、リュートの歴史まで……。音楽や語り物、宗教儀礼など特異な文化の担い手であった盲人の世界。

永井さんは博士論文をもとにかつて『日韓盲僧の社会史』(葦書房)を刊行されましたが、本書はいわばその延長線上に、ドイツ、フランス、をはじめ、ウクライナまでヨーロッパのあちこちを探訪し、最後の章では琵琶とリュートの歴史をユーラシアを東西に見渡しながら論じておられます。

ちなみに、

1936年生まれ。東北大学卒業、九州大学大学院博士課程修了、比較社会学文学博士(九州大学)単著に『日韓盲僧の社会史』(葦書房、2002年)。共著に『日本伝説大系 第10巻 山陽』(みずうみ書房、1987年)、『大系日本歴史と芸能 第六巻 中世遍歴民の世界』(平凡社、1990年)、『身分的周縁』(部落問題研究所出版部、1994年)、『岩波講座 歌舞伎・文楽 第3巻 歌舞伎の歴史Ⅱ』(岩波書店、1997年)。編著に『福岡県史 文化史料編 盲僧・座頭』(福岡県、1993年)などがある。

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