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2015年10月28日 (水)

シルバー人材センターの将来像

『労基旬報』2015年10月25日号に、「シルバー人材センターの将来像」を寄稿しました。

 労働政策審議会の雇用対策基本問題部会で、シルバー人材センターなど高齢者の雇用就業対策について議論が始まるようです。継続雇用制度や年齢差別禁止などのように労使間で利害が対立するホットな話題ではありませんが、労働政策の最周縁に位置するこの政策について、今までの経緯と将来への課題について簡単にまとめておきましょう。

 その出発点は東京都の高齢者事業団運動にあります。一般の労働市場における雇用には適さず、かつ望まないが、さればといって単なる社会参加、健康の保持等のための仕事を求めるというだけではない高齢者の就労ニードに対応する高齢者の自主的な組織として、1975年2月、第1号のモデル地区事業団として江戸川区高齢者事業団が設立され、その後東京都を超えて全国に波及していき、1980年には100団体を突破していきました。なお、この運動の象徴的リーダーとして大河内一男がいたことは、この事業に国が関与し、法制化されていく上で重要な役割を果たしたと思われます。

 労働省は当初従来の失業対策事業の弊害を憂慮し、高齢者事業団の事業には関与しない方針でしたが、1979年に至って政策を転換し、1980年度から国の予算措置としてシルバー人材センター事業が開始されました。これでさらに全国的に設立気運が高まり、1985年には260団体を超え、全国主要都市のほとんどに設立され、会員数も12万人を超えました。

 この中で、東京都高齢者事業団時代からの課題であるシルバー人材センターの法制化が、繰り返し要望され、決議されています。労働省でも1983年から具体的な検討を開始し、1986年高齢法の一環として実現することになります。これによりシルバー人材センターは法律上に位置づけられましたが、この運動の思想的側面を考えれば、どちらかといえば周辺的な業務によって法律上に位置づけられた感があります。すなわち、自立自助、協働共助というスローガンを掲げ、労働政策と福祉政策を架橋するこの運動を、高年齢者雇用安定法上は高年齢者の労働力需給調整機能の一端を担うものとして位置づけたのです。しかしながら、運動の趣旨に合致するような法制化をしようとすれば、既存の雇用関係を前提とする労働法体系とは別個の法体系を確立しなければならず、当時の状況下ではきわめて困難だったでしょう。

 なお2000年改正では、それまでの「臨時的かつ短期的」な就業に加え、「その他の軽易な業務に係る」就業が業務に含まれました。これは、教室や家庭における教授、家庭生活支援、自動車運転などについて、日数の制限をなくす代わりに就業時間を短くするもので、おおむね週20時間以内とされています。

 2004年改正では、シルバー人材センターが届出により構成員のみを対象に登録型労働者派遣事業を行うことができる旨の規定が設けられました。もともと、シルバー人材センターは雇用ではない形態での就業を前提とするものでしたが、高齢法において無料職業紹介事業を届け出て行うことができることとされていました。その意味では非雇用と雇用の双方にまたがる就業をカバーする形にはなっていました。しかしながら、実際には就業先の指揮命令を受ける就業形態であるにもかかわらず職業紹介の形態によらず請負の形態をとることが多く、これが労働災害の関係で問題を生ずることもありました。派遣事業への進出は、さまざまな就業形態による高齢者の就業機会の確保の一環として位置づけられていますが、雇用と非雇用の境界領域の作業を実施しているシルバー人材センターに対し、とりうる契約形式の選択肢を増やすという意味があります。

 さて、シルバー人材センターができたときには、日本の法人制度は営利法人と公益法人に分けられ、営利でも公益でもない中間法人は特別法がなければ設立できませんでしたが、2006年に公益法人制度改革が行われ、それまでの公益法人は原則一般社団法人か一般財団法人となり、特に公益が認められるものだけが公益社団法人や公益財団法人となることとされました。もともとシルバー人材センターは、公益というよりも会員の共益を図るものであり、公益法人との位置づけにやや無理があったとも言えます。この改革に伴う改正で、シルバー人材センターは一般社団法人または一般財団法人から指定することと規定されました。

 おそらくこれによって、「公益性」という縛りがなくなったことが背景にあるのでしょう。2008年11月に提出された労働者派遣法改正案において、シルバー人材センターが厚生労働大臣に届け出て、有料職業紹介事業を行うことができることとされました。この改正案は廃案となりましたが、2010年4月に民主党政権下で提出された同法改正案においても同じ規定が設けられており、その形で2012年3月に成立しました。規定ぶりは、シルバー人材センターによる「届出」を「許可」と見なして有料職業紹介事業に係る法令を適用することとされています。無料職業紹介事業については、職業安定法上原則許可制とはいえ、学校等、各種協同組合、地方公共団体など届出制の団体も多いですが、有料職業紹介事業について届出制としている例は他になく、規制の均衡という点でいささか問題を孕んでいます。

 ちなみに、先日成立した2015年改正労働者派遣法は、特定派遣事業の届出制をなくし、すべて許可制とするものですが、シルバー人材センターは引き続き唯一の届出制派遣事業として残されています。

 なお、2012年に健康保険法上の被扶養者であるシルバー人材センター会員の就業中の負傷が健康保険法の給付を受けられないことが社会問題となり、厚生労働省は急遽健康保険と労災保険の適用関係の整理プロジェクトチームを設置して検討を行いました。同年10月のとりまとめにおいて、健康保険における業務上外の区分を廃止し、シルバー会員やインターンシップ等の請負でも労災保険の対象とならない場合は健康保険の対象とするとしつつ、特にシルバー人材センターについて「一般企業や公共機関から受注している作業を中心に、可能なものは全て、労災保険が適用される「職業紹介事業」や「労働者派遣事業」による就業への転換を進めていくよう指導する」とされています。こちらの観点からも、シルバー人材センターの活動は転換を迫られています。

 冒頭に述べた労政審の議論の前提となるのは、2015年6月の「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」報告です。ここでは、シルバー人材センターの機能強化策として、介護・保育支援等の福祉サービス分野への職域拡大や、臨時・短期・軽易という3要件を緩和することなどを提起しています。このうち「軽易」要件については、2015年7月に成立した改正国家戦略特区法によって、特区内では登録型派遣事業についてのみ「軽易な業務又はその能力を活用して行う業務」として、週40時間まで可能とする改正が既に行われています。今後労政審で議論されるのはこれの一般化であり、争点となるのは民業圧迫との関係でしょう。もはや公益法人ではないシルバー人材センターについて「民業圧迫」というのも変な話ですが、人件費が安い高齢者を使った商売と見なされる恐れはあり得ます。

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