島村暁代『高齢期の所得保障』
島村暁代さんから『高齢期の所得保障 ブラジル・チリの法制度と日本』(東京大学出版会)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-036147-7.html
少子高齢社会が加速するなか,高齢者の経済的な生活基盤の確保が大きな社会問題となりつつある.日本の現状を分かりやすく解説するとともに,独自の年金制度を運用するブラジルとチリの詳細な検討を通じ,公的年金のみならず企業年金や生活保護,就労による収入など,所得保障の法制度を包括的に分析する.平成26年度沖永賞(労働問題リサーチセンター主宰)受賞論文を待望の書籍化.
「高齢期の所得保障」というのは大変ポピュラーなテーマですが、それをブラジルとチリという南米2か国との比較で論じようというのは、他に類例を見ない研究です。だいたい労働社会政策の比較研究というと、いわゆる欧米、つまりヨーロッパ各国と北米であって、近年は違う観点からアジア諸国の研究も増えてきましたが、南米というのは本当に例がないと思います。
それをあえてやったのは、ブラジルの公的年金の中心が年齢を要件としない制度であり、チリのそれが徹底した積み立て方式で、ある意味で制度の極北を指し示しているからで、だからこそ混迷している日本の公的年金制度の議論に思いがけない方向からの切り口を提供してくれるわけです。
序 高齢期の所得保障はどうあるべきか
第1編 日本
第1章 公的年金制度
第1節 公的年金制度の沿革
第2節 現行の公的年金制度
第3節 社会保障・税の一体改革の概要
第2章 その他の所得保障制度
第1節 企業年金
第2節 就労による収入
第3節 公的扶助
第4節 小括
第3章 日本の法制度のまとめと外国法考察の課題
第2編 ブラジル
第1章 狭義の社会保障制度
第1節 会社単位の年金制度:CAPs
第2節 産業単位の年金制度:IAPs
第3節 混迷の時代と社会保障資金の他目的流用
第4節 LOPS法の制定とその後の改正
第5節 現行憲法の制定と法律の再整備
第6節 憲法の修正とその後の動向
第7節 現行制度
第8節 狭義の社会保障のまとめ
第2章 その他の所得保障
第1節 補足的保障制度
第2節 社会扶助制度
第3章 ブラジルの法制度のまとめ
第3編 チリ
第1章 1980年:第1次年金改革
第1節 背景
第2節 新制度の概要
第3節 小括
第2章 第2次年金改革までの制度改正の諸相
第1節 年金基金の運用に関する変更
第2節 年金給付に関する変遷
第3節 補足的保障制度の発展
第4節 小括
第3章 2008年:第2次年金改革
第1節 背景
第2節 概要
第3節 小括
第4章 現行制度
第1節 強制加入の拠出制の年金制度
第2節 補足的保障制度
第3節 連帯制度
第4節 小括
第5章 チリの法制度のまとめ
第4編 総括
第1章 ブラジルとチリの法制度の比較
第1節 公的年金制度
第2節 高齢期の所得保障制度
第2章 日本の法制度に関する検討
第1節 公的年金制度
第2節 高齢期の所得保障制度
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