『都市問題』10月号の上林論文
地方自治総合研究所の上林陽治さんから、そこが出している『自治総研』7月号と、昔東京市政調査会だった『都市問題』10月号をお送り頂きました。東京市がなくなっても東京市政調査会はずっと続いていましたが、名前が変わったようですね。もっとも建物は依然として市政会館のままのようです。
そんなことはどうでもいいんですが、上林陽治さんです。
https://www.timr.or.jp/cgi-bin/toshi_db.cgi?mode=kangou&ymd=2015.10
相談業務と専門職の非正規公務員――迫られるメンバーシップ型人事制度の変更 上林陽治
ということで、
・・・専門化し、資格職化する相談員だが、そのことが、彼女たち彼らを非正規化する。・・・
という現場の矛盾に、雇用システム論を駆使して論じ、
・・・2015年4月施行の生活困窮者自立支援法は、自治体にメンバーシップ型人事制度の変更を迫ることになるだろう。なぜなら、生活困窮の背景は複雑で、相談者は、借金、失業、虐待、DV、家庭の問題、こころの問題など、複合的かつ多種多様な困難を抱えており、従って生活困窮者の相談窓口は総合化せざるを得ず、相談員も、いかなる課題にも対応できるようジェネラルな専門性を身につけなくてはならなくなるからだ。生活困窮者の自立には、専門的かつ継続的にこの問題にかかわる、職務限定・異動限定の専門職公務員という新たな類型の正規公務員を必要とすることになるだろう。・・・
と訴えています。
もう一冊の『自治総研』の論文は、「非正規公務員と任用の法的性質」という、いかにも法学的論文ですが、戦後自治行政と行政法学が、いかに戦後制定された実定法の規定を無視して、戦前来の行政法理論に合うように解釈を作り上げてきたかがよくわかります。
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コメント
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日本の社会福祉行政が抱える問題の一つは職員の専門性が低いということにあるんでしょうね。メンバーシップ型人事制度の下で短期間で人員が入れ替わるため、専門性が育たない。難しい仕事なので、嫌な負担を持ち回りでやっているというのが実態かもしれません。このような状態が社会福祉行政への一般国民の不信を助長していると思います。
生活困窮者自立支援法をきっかけに社会福祉に関するジョブ型公務員が生まれれば、それを目標に社会福祉や社会学の学部、大学院は専門職業教育を行うことも可能となり、日本の社会福祉行政を大きく改善できるのではないでしょうか。
ただそのためには社会福祉の専門職に高い賃金を保障して優秀な層を引き付ける必要があります。仕事の負担に応じたメリハリのある賃金制度が不可欠です。単なる公務員バッシングではない、前向きな公務員制度改革が望まれますね。
投稿: 通りすがり2号 | 2015年10月 8日 (木) 21時32分