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2015年10月30日 (金)

仕事と家庭の両立支援@『損保労連GENKI』10月号

118『損保労連GENKI』10月号に「仕事と家庭の両立支援」を寄稿しました。

http://www.fniu.or.jp/kikanshi/genki2016.html

 去る9月末、安倍首相は、アベノミクスの第2ステージとして、「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を「新三本の矢」として位置づけました。「1億総活躍社会」を掲げ、①GDP600兆円を達成する、②希望出生率1.8を実現する、③介護離職者をゼロにする、というのがその柱ですが、3つのうち2つまでが厚生労働省マターであり、しかも「仕事と家庭の両立」という現下喫緊の課題そのものとなっています。10月の内閣改造では1億総活躍担当大臣が置かれました。

 官邸が力を入れるこのテーマについて、厚生労働省においても去る8月に「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」(座長:佐藤博樹)の報告がまとめられ、公労使三者構成の労政審において審議が開始されたところです。今後、働く男女、とりわけ育児や介護といった家庭責任を抱えながら働く男女にとって極めて重要な制度設計の詳細にわたる議論が労使の間で展開されていくことになりますが、今回は、その出発点として、研究会報告書の概要を紹介していきたいと思います。

 まず、「仕事と介護の両立」についてです。介護休業等の利用率が低く、年休などを使いながら対応していること、育児と異なり介護期間は予測できず、個々の事情差が大きいため労働者も企業も対応が難しいこと、認知症の割合が増加するなど要介護に至る原因が変化し、家族の対応も変化していることなど、家族を介護する労働者の現状に対応できていない実態が指摘されており、今後は、多様な介護の状況に対応しつつ継続就業できる制度の実現が必要であるとの考え方が示されています。

 では、具体的な各論に入っていきましょう。まず、介護休業とは介護の体制を構築するために一定期間休業する場合に対応する制度であり、介護休暇や介護のための柔軟な働き方(介護時間や介護時間帯の調整等)は介護の体制を構築した後の期間に定期的、スポット的に対応する制度であると整理されています。これらは介護休業制度が設けられた1995年頃は明確ではなく、2004年改正以降にようやく打ち出されてきた考え方です。

 前者の介護休業については、同一の要介護状態でも介護休業の分割取得を認めること、分割回数は介護の始期、終期、その間の時期にそれぞれ1回程度とすること、その場合でも通算介護休業期間は現行通り93日とすることが、見直しの方向性として提示されています。

 次に、後者の介護休暇については、現行の要介護者一人につき年5日、二人以上なら年10日という要件について、日数の延長や、時間単位・半日単位といった取得単位の見直しが提示されています。確かにケアマネージャーとの打合せなど、丸一日休暇を取る必要のない場面もあるでしょう。

 さらに、現在、選択的措置義務(事業主が選択するのであって、労働者に選択権はない)とされている短時間勤務等について、認知症の場合は介護体制を構築した後も対応が必要となるのではないかという指摘もあり、現行の介護休業と通算して93日という期間から切り出すことが提示されています。

 また、現行法において育児と介護とで扱いが異なっている所定外労働の免除(育児の場合は2009年改正で事業主の義務となっていますが、介護ではそうなっていない)について、育児と同様に義務化する案や、選択的措置義務に追加する案などが提示されています。

 次に「仕事と育児の両立」についてです。現状として、家族形態・就業形態など女性労働者の多様な状況に必ずしも対応できていないこと、男性の育児休業取得が依然進んでいないことが指摘されており、今後は、「多様な家族・雇用形態に対応した育児期の柔軟な働き方の実現」「男性の子育てへの関わりを可能とする働き方の促進」が必要であるとの考え方が示されています。

 そのうえで、具体的な各論としてまず、育児休業の対象となる親子関係として、特別養子縁組の監護期間と養子縁組里親を法律上の親子関係に準じる関係として含めることが提示されています。

 労働法の他分野へのインパクトという意味でもっとも重要なのは、有期契約労働者に係る育児休業の取得要件の見直しです。現行の「子が1歳以降の雇用継続見込み」要件について、特に1年未満の契約を繰り返し更新している場合など、申出時点で将来の雇用継続の見込みがあるかどうかを有期契約労働者自身が判断することは困難であり、労働者側と事業主側とで判断が分かれて紛争の原因になりかねないといった問題が指摘され、明らかに雇用契約が更新されない者であっても、少なくとも育児休業の申出時点から当該雇用契約の終了までの期間については育児休業の取得を可能とすべきとの意見や、子が1歳に達する日までの間に労働契約期間が満了し、かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者のみ育児休業が取得できないこととすべきといった意見が例示されています。意見の例示にとどまったのは研究会報告として余りに踏み込むことを避けたためでしょうが、少なくとも「雇用の継続を前提としたうえで、紛争防止等の観点から、適用範囲が明確となるよう取得要件の見直しを検討すべき」とされています。これに対して、有期契約の派遣労働者については、育児休業取得後の派遣労働者の継続就業機会の確保の努力を派遣元が行うことを、何らかの形で促進することを検討する必要性が示されるにとどまっています。

 その他、育児関係では、子の看護休暇制度について、健康診断や予防接種など丸一日は要しない場合などにも柔軟に対応できるよう、時間単位や半日単位での取得を検討することが適当との考えが示されています。一方、現行で子が3歳まで義務づけられている所定労働時間の短縮措置等については、単純に対象年齢を引き上げた場合にはその利用が引き続き女性に偏り、キャリア形成上重要な時期に育児の負担が女性に集中し、結果的に女性の活躍を阻害する可能性があるとして、慎重に検討すべきとの消極的な記述にとどまっています。

 最後に男性の子育て参加については、各種制度の周知の必要性などが挙げられているものの、なかなか決め手がないというのが実情でしょう。法律上の権利は十分あるわけですから、現場の問題という側面が大きく、とりわけ現場の労働組合が果たすべき責任は大きいと言えるでしょう。

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コメント

損保労連=大企業労働者問題=実は生業に関わるマーケティングと認識できず内政問化する労組劣化の最大要因という感じなのですがどうですかね?
夫と妻の役割を論じられる幸せです。生業である保険の思想を理解しておられるのか?というのも小生も身をゆだねた経験があるからです。直近の菊池桃子さんのアカデミズム云々は前に進もうといういう彼女の意志を感じますが、こちらはなにやら産別になっても所詮は労組の属性、つまり所属産業の優劣が福利をそして組合員を支配している、パレート効率のインナーだけでしかないなあとの思いを禁じ得ません。大数の法則で所得を得ておられる労働者組織なのに・・・ですねえ。悪意ではありません。その内向きな感性に
悲しいのです。

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