藤木貴史「アメリカの集団的労使関係法における熟議民主主義」
一橋大学大学院法学研究科博士課程の藤木貴史さんより、『一橋法学』2015年7月号掲載の論文「アメリカの集団的労使関係法における熟議民主主義-被用者自由選択法案を題材として」の抜き刷りをお送り頂きました。昨年末にも、同誌2014年11月号掲載の「アメリカにおける労働組合組織化過程の現状分析」を頂いております。
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/27412/1/hogaku0140207730.pdf
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/26983/1/hogaku0130202410.pdf
アメリカの被用者自由選択法案については日本でも幾つか紹介する論文はありますが、藤木さんの論文の興味深い点は、単なる労働法政策分野だけでなく、その哲学的基礎としての、政治哲学的な議論を詳細に解説してくれているところです。
有名なリチャード・エプスタインが、この法案の肝であるカード・チェック方式が熟議民主主義に反するとして反対しているというのは興味深い所ですし、賛成派の方もやはり熟議民主主義を正当か根拠にしている、と。そして藤木さんは政治哲学における熟議民主主義の議論に分け入っていくのです。
それを読みながら、何となく違和感を禁じ得ない思いがあったのですが、最後のところで見事にそれが言語化されていました。そこで、「・・・第二の限界は、労働組合が労働者を代表することの正当性を熟議民主主義により根拠付けることが果たして真に適切であるのか-更に踏み込んで言えば、熟議民主主義という理念は労働組合という存在そのものを基礎付ける上でふさわしいと言えるのか-という問題を本稿は検討していないことである。」と述べ、熟議民主主義よりも利害調整に基づくコーポラティズムを強調する議論として、私の議論が引用されていたのです。
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