あんぐり
たまたま宇田川敬介著『ほんとうは共産党が嫌いな中国人』(PHP新書)という本を見つけて読み出したのですが、冒頭の数ページにして既に、
・・・また、満州事変の時に日本に協力して満州を束ねた「張作霖」も、いずれも軍閥の一つでしかない。・・・
え?張作霖が満州事変で日本に協力した?そのすぐあとに
・・・実際に、北洋軍閥奉天派の首領張作霖は、中華民国に抵抗し、旧皇帝の血統である愛親覚羅溥儀を立てて満州国を建国することを夢見るようになり、そのまま中華民国の対抗勢力として日本と手を組むことになるし・・・
ここまで書いているところを見ると、書き間違いではなさそうです。でもそうすると、息子の張学良はどういう立場?
さらにこんなのも、
清帝国を滅ぼした辛亥革命は1911年に発生する。この革命によって清帝国が倒されたため、モンゴルのボグド・ハーンも、清帝国から独立する。背景にはスターリンの支援があった。またチベットも、このときに独立している。
ボグド・ハーンというなかなか玄人的な知識が出てくるのに感心したのもつかの間、1911年にスターリンが支援している!確かこの頃、コバこと同志ヨシフ・ジュガシビリは流刑地にいたはずだが。
第1章のほんの数ページの間にこれだけの世界史をひっくり返す新知見が展開されると、さすがにそれ以上先を読む気が失せかけますが、そこをぐっとこらえて次の章に移ると、あとは、
著者はかつて破たん前のマイカルに勤め、中国随一のデパートとなったマイカル大連の責任者であった人物。ゆえに、共産党上層部から、店の従業員や取引業者まで、あらゆる階層の中国人と懇意となり、今もその独自の人脈を生かして取材活動を行っている。大国の実像を知り、今後の行方を占うために、彼らの生の声に是非触れてもらいたい。
という惹き文句の通り、著者が中国で経験したいろんな階層の人々の話が繰り出されて、それはそれなりに興味深いものがあります。
それにしても、この第1章の潜在的読者に対する破壊的効果はかなり大きなものがあるのではないかと想像され、出版の前にせめて高校の世界史の教科書くらいはざっと読んで直せるものは直しておいた方が良かったのではないかと愚考するところです。
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