EU春闘?
さて、イギリス労働党はソーシャルな反EUのコービン路線を選んだようですが、あくまでもソーシャルなEUを求める勢力は何を主張しているのか。
欧州労連の付属機関である欧州労研(日本の連合総研みたいなもの)が最近出した『Wage bargaining under the new European Economic Governance』(新たな欧州経済ガバナンスの下における賃金交渉)は、400ページを超える分厚い報告書ですが、すっかりネオリベラリズムに染め上げられたEUの経済政策に対抗する基軸を欧州レベルの賃金交渉の確立という方向に求めています。
file:///C:/Users/hamachan/Downloads/15%20Wage%20bargaining%20Web%20version.pdf
Within the framework of the new European economic governance, neoliberal views on wages have further increased in prominence and have steered various reforms of collective bargaining rules and practices. As the crisis in Europe came to be largely interpreted as a crisis of competitiveness, wages were seen as the core adjustment variable for ‘internal devaluation’, the claim being that competitiveness could be restored through a reduction of labour costs.
This book proposes an alternative view according to which wage developments need to be strengthened through a Europe-wide coordinated reconstruction of collective bargaining as a precondition for more sustainable and more inclusive growth in Europe.・・・
新たな欧州経済ガバナンスの枠組みの中で、ネオリベラルな賃金観がますます影響力を増し、団体交渉のルールや慣行の様々な改革を推進している。欧州の危機がもっぱら競争力の危機として解釈されればされるほど、賃金は「内的な平価切り下げ」のための中核的調整変数と見られるようになり、人件費の削減を通じて競争力が回復するという議論が強まっていく。
本書はそれに代わる考え方、すなわち欧州ワイドの調整された団体交渉の再構築を通じた賃金の展開こそが、欧州におけるより持続可能で包摂的な成長の前提条件として必要であるという考え方を提起するものである。・・・・
欧州労連としては、反EUを認めては自分の存在意義がなくなってしまうので、この道しかない、わけです。
そういえばかつて松尾匡さんがグローバル化を否定するのではなく「世界春闘を実現しよう」と訴えたことがありましたが、
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/shucho6.html
比喩的に言えば、ネオリベ化するEUに対抗するために「EU春闘を」(「春闘」じゃないけど)とでも言えるでしょうか。
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