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2015年9月19日 (土)

17歳アイドル 異性交際規約違反で65万賠償命令

Mecha_prof_talentcom 雑件ではありません。

れっきとした労働法上の問題、就業規則の合理性判断の問題、実定法でいえば労働契約法第7条の問題です。

http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1540235.html

アイドルグループのメンバーだった女性(17)が異性との交際を禁じた規約に違反したとして、マネジメント会社などが女性に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、「交際発覚はアイドルのイメージを悪化させる」と規約違反を認め、65万円の支払いを命じた。

判決によると、女性は2013年3月に会社と契約を結び、交際禁止を定めた規約を受け取り、6人グループで7月にデビュー。ライブやグッズ販売をしていたが、女性が男性ファンに誘われ2人でホテルに行ったことが発覚し、グループは10月に解散した。

女性は「交際しないことが女性アイドルの不可欠の要素ではない」と主張したが、児島章朋裁判官は「男性ファンの支持を得るため、交際禁止の条項が必要だった」と判断し、解散の責任は女性にもあると指摘。支払われた衣装代やレッスン費用の一部を負担するよう命じた。

記事には「規約」とありますが、契約締結時に交際禁止を定めた規約を受け取り云々とありますから、このアイドルとして就労する契約が労働契約である限り、規約は就業規則に当たり、その「合理性」が拘束するかどうかを決定することになります。

『労働判例』とかがちゃんと掲載してくれるかどうか心配ですが。

(追記)

コメントにあるとおり、芸能人の労働者性は大きな問題です。

というわけで、本ブログの名物(?)「・・・の労働者性」シリーズお蔵出し。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-dc7b.html (タカラジェンヌの労働者性)

うぎゃぁ、チケットのノルマが達成できないと「タレント契約」打切りですか。

これは、古川弁護士には申し訳ないですが(笑)、歌のオーディションでダメ出しされた新国立劇場のオペラ歌手の人よりもずっと問題じゃないですか。

売り上げノルマ達成できないからクビなんて、まあ個別紛争事例にはいくつかありますけど、阪急も相当にブラックじゃないか。これはやはり、日本音楽家ユニオン宝塚分会を結成して、タカラジェンヌ裁判で労働者性を争って欲しい一件です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-8a7f.html (ゆうこりんの労働者性)

Enn1108161540005p1_2 この「実態は異なる」という表現は、労働法でいう「実態」、つまり「就労の実態」という意味ではなく、業界がそういう法律上の扱いにしている、という意味での「法形式の実態」ということですね。

そういう法形式だけ個人事業者にしてみても、就労の実態が労働者であれば、労働法が適用されるというのが労働法の大原則だということが、業界人にも、zakzakの人にも理解されていない、ということは、まあだいたい予想されることではあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-f75b.html (タレ・スポの労働者性と育成コスト問題)

これは、実は大変深いインプリケーションがあります。芸能人やスポーツ選手の労働者性を認めたくない業界側の最大の理由は、初期育成コストが持ち出しになるのに足抜け自由にしては元が取れないということでしょう。ふつうの労働者だって初期育成コストがかかるわけですが、そこは年功的賃金システムやもろもろの途中で辞めたら損をする仕組みで担保しているわけですが、芸能人やスポーツ選手はそういうわけにはいかない。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-d5d3.html (芦田愛菜ちゃんの労働者性)

20110920_ashidamana_02 芦田愛菜ちゃんが労働基準法上の労働者であることには何の疑いもないからこそ、上の労基法61条5項をすり抜けようとして、こういう話になるわけですね。

そして、そうであれば、そもそもの労働時間規制が「修学時間を通算して1週間について40時間」「修学時間を通算して1日について7時間」であり、かつ小学校は義務教育ですから、その時間は自動的に差し引かれなければなりませんから、上の「朝から晩までずっと仕事漬けの日々」というのは、どう考えても労働基準法違反の可能性が高いと言わざるを得ないように思われます。

まあ、みんな分かっているけれども、それを言ったら大変なことになるからと、敢えて言わないでいるという状況なのでしょうか。

ところで、それにしても、芦田愛菜ちゃんのやっていることも、ゆうこりんのやっていることも、タカラジェンヌたちのやっていることも、本質的には変わりがないとすれば(私は変わりはないと思いますが)、どうして愛菜ちゃんについては労働基準法の年少者保護規定の適用される労働者であることを疑わず、ゆうこりんやタカラジェンヌについては請負の自営業者だと平気で言えるのか、いささか不思議な気もします。

ゆうこりんやタカラジェンヌが労働者ではないのであれば、愛菜ちゃんも労働者じゃなくて、自営業者だと強弁する人が出てきても不思議ではないような気もしますが。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-6d6a.html (正規AKBとバイトAKBの処遇格差の合理性について)

2040819_201408110738045001407721125 ふむ、さすがに労働基準法には違反しないようにと、細かく考えられているようですが、この有期雇用契約による非正規労働者たちの時給1000円という処遇については、正規AKBメンバーとの業務内容等の相違に基づき、合理的な説明がちゃんとできるようになっているんですよね、秋元さん。

以上が芸能関係。スポーツ関係では、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_c64e.html (力士の労働者性)

ちなみに、民法の方々には疾うに周知のことと存じますが、旧民法においては、「角力、俳優、音曲師其他ノ芸人ト座元興業者トノ間ニ取結ヒタル雇傭契約ニ之ヲ適用ス」(265条)という規定がありました。現行民法制定時にもこれらが外れたわけではありません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_fd03.html (時津風親方の労働者性)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_bbf0.html (幕下以下は労働者か?)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-d31a.html (力士の解雇訴訟)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-352f.html (プロ野球審判員は請負契約か?)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-b776.html (朝青龍と労働法)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/by-916f.html (力士をめぐる労働法 by 水町勇一郎)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-4251.html (力士会は労組として八百長の必要性主張を@水谷研次さん)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-2ce8.html (力士の労働者性が労働判例に)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-ed77.html (大学アメフト選手の労働者性(米))

あと巫女さんてのもありました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-00c0.html (神の御前の労働基準法)

アニメの主人公も。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-b9d7.html (キキを見てこういう感想を持つたぐいの人々)

>魔女の宅急便のキキは、労働組合も作らないし、首になっても割増退職金も要求しない。セクハラだパワハラだと訴えない。今の労働者も見習うべき。

藤沢氏やその周辺のあごらな方々の理想とする労働者像がどのようなものであるかがよく窺われる大変正直なつぶやきです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-5cbb.html (キキの民法と労働法)

さて、セクハラだパワハラだと訴えられないような13歳の少女労働者を雇うのが大好きな某金融関係者はともかくとして、キキについては個人事業主ではないかという指摘が。

それ以外、順不同。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/or-a4d2.html (河合塾非常勤講師の労働者性)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-21bc.html (僧侶は労働者?破門は解雇?)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-166f.html (司法修習生の労働者性)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-ac03.html (英会話学校講師の労働者性(GABA事件評釈))

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-7e91.html (「トルコ娘」の労働者性)

というわけで、「○○の労働者性」シリーズ、今回は1960年代前半という高度成長期ただ中で、当時新たな風俗営業として展開していた「トルコ風呂」で働く18歳未満の児童「トルコ娘」をめぐる裁判例です。

あと、労働者性の問題ではないけれど、労働基準法が適用除外されている「メイドさん」についてのやや詳しい解説。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-3967.html (メイドさんの労働法講座)

なのですが、若干突っ込んでおくと、、家事使用人も民法上の雇用契約であることに変わりはないので、個別労働関係法においてもたとえば労働契約法上の労働者であることに何の疑いもありません。労働者ではあるけれども、労働基準法のさまざまな労働者保護規定が適用されず、使用者の非道な行為について労基法違反として労働基準監督署に訴えることができないという点が異なるだけで、民法の公序良俗規定や一般原則としての権利濫用法理(何をどう濫用したんだか・・・)に基づいて裁判所に訴え出ることは可能です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-57ea.html (ミタさんは労働者ですよ)

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コメント

芸能関係は「労働契約」なんでしょうか。年齢で労基法に抵触するのを嫌って、個人事業主ってことにして、回避してると思ってました。香取君が11歳(小学生)でSMAPになったときからだったかと。

投稿: ちょ | 2015年9月19日 (土) 09時11分

「アニメ労働者の労働者性」で一本お願いします。こんな裁判が数年前にありました。http://shadowcloudys.blog.163.com/blog/static/288856922011873287196 一応和解で終わりましたが、実は(以下略)

投稿: くみかおる | 2015年9月19日 (土) 21時01分

そもそも交際禁止の雇用契約は公序良俗違反で無効。に対して児島章朋裁判官は「男性ファンの支持を得るため、交際禁止の条項が必要だった」と判断されたようですが、何か違和感。さらに、バレないようにするのは事務所の管理能力では?
解散に追い込まれたので憤懣やるかたない、というのは分かりますが、なにも裁判官までアイドル論に踏みこむことはないのでは。

投稿: perfumeファン | 2015年9月20日 (日) 08時28分

タレント契約=魂を売る契約??

>女性が男性ファンに誘われ2人でホテルに行ったことが発覚し、グループは10月に解散した。<
とあります。また、報道では「解散に追い込まれた」とされています。
この「解散に追い込まれた」という言説が、当事者の行為の因果関係がいまいちわかりません。
別に、解散するかしないかは、所属会社の意志なんじゃないでしょうか。尤も、公演・やイベント制作など、契約先からのキャンセルなどが原因なのかもしれませんが、これとて契約の解消をすべき理由になるのかどうか。一方的な契約破棄なら違約金を支払わせるという方法もあると思います。
他のメンバーも、期待利益があったのなら、会社を訴えればよろしいでしょう。

なんとなくですが、例えていうなら、選挙権放棄の契約みたいなもんです。この、タレント契約というのは、請負契約(個人事業主)でも、労働契約(労働者)でもなくて、魂を売る契約なんでしょうかねえ~、裁判官さん。

投稿: endou | 2015年9月20日 (日) 22時57分

異性と交際したいのなら、タレント当人から申し出て契約を解除すればよいだけの話。事務所側が契約解除を拒否したのなら、そこではじめて「公序良俗違反」なり「魂を売る契約」なりといった批判が妥当するでしょうね。いつでも自由にタレントを辞められるのなら、交際禁止条項それ自体は違法性はないでしょう。

意味もなく契約に交際禁止条項を含めて、それに反した責任を追及したというなら問題で、「合理性」というのはそういうことですね。ただ、ここでいう「合理性」を要するというのは、どちらかといえば、契約の目的とは無関係の条項を契約に入れておいて、相手の無用心を利用して踏ませる、といった行為を禁止するのが目的です。

投稿: IG | 2015年9月21日 (月) 14時10分

「交際禁止条項」に意味があるということなのでしょうか。たとえ事務所的には意味があったとしても、それが社会通念上、つまり、法的な合理性が認められるとする根拠は何なのでしょうか?
また、そのような禁止を約する法律行為が、契約自由原則や、結社の自由とかで認められるのか、それとも一般的自由という範疇に入ってくるのか、何れなのでしょうか?

何を言いたいのかと言うと、契約が護られている場合には、契約でもワガママでもそれは問題はないわけですが、しかし、本件は裁判になったわけです。態々、事務所がタレントに損害賠償を求めたんですね。裁判所という公の機関を使って争うわけです。
そうすると、当然、裁判官は何に拘束されることになるでしょうか? 労働者性があれば労基法やほかの労働法の範疇に入ってくるでしょう。どの程度の労働条件なら法が予定しているのかという判断もするでしょう。おそらく本件は、完全には労働者ではなくても、一部労働者性はあると思われます故。
そうであれば、人権一般の私人間適用の問題なのか?
仮にそのような問題の射程可能性があるのであれば、では「合理性の基準」なのか、「厳格な合理性の基準なのか」、「厳格な基準」なのか?

労働契約なら業務以外の私生活にも行動にも思想にもすべて介入できるとするほうが無理があるように思えます。
労働契約ではない請負(個人事業主)の契約なら、なおさら、労務提供以外の私生活は請負人(個人事業主)の全くの裁量です。その代りに、法的責任は全て当該請負人が負うわけですね。
一々規則でもって縛られていたのでは、当該個人が法的責任を負うことは不可能になってきます。タレントに交際させたくないのなら、生まれたときからずっと一生そのタレントの面倒を見るべきでしょう。人のを将来どうするのかという保障もないままに、タレントとして活動させたい時期だけ私生活の行動を制限できると考えるのは、法外なワガママだと思います。タレント同士の制限も同じだと思います。

ファンの妄想は自由ですけど、裁判所がこれにつき合う必要はないでしょう。

投稿: endou | 2015年9月21日 (月) 22時51分

追記させてください。

上述の補足ですが、例えば佐藤幸治氏(1995『憲法 第三版』)が言うような「幸福追求権」なのではなかろうかと思います。ただお断りしておきたいのは、むやみに私人間の問題について、無理矢理に憲法の人権規定を直接適用できるなどということは思ってはおりません。寧ろ、そういうふうには国家が介入はすべきでないと思っております。

ただ、同氏が言うように・・・「幸福追求権」は、人格的自律性を基本的特性としつつ、各種の権利・自由を包摂する包括性を備えているものであって、「基幹的な人格的自律権」とでも称しうる性質のものである。それは、人間の一人ひとりが“自らの生の作者である”ことに本質的価値を認めて、それに必要不可欠な権利・自由の保障を一般的に宣言したものである」・・・と理解すれば(私はそう理解していますので)、それこそ、人権の本来的性質からすれば、それは、対公権力であるか、対私人であるかを問わず妥当すべきものであることは間違いないと思います。

況してや、未成年の労働(ないし労務提供)をその企業の収益目的として活用するのであれば、未成年者のそれにふさわしい人格的利益を考慮すべきであり、また、不幸にして争いとなったときには、挙証責任の配分の問題も、裁判所はちゃんと考慮すべきだと思います。

投稿: endou | 2015年9月22日 (火) 20時51分

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