フォト
2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 45歳まで産める! これだけの理由@『プレジデントウーマン』 | トップページ | オワハラ時代の大学と就活@『エコノミスト』 »

2015年8月13日 (木)

女性社員の多数派 “一般職”の未来は描けるか@『Works 』Vol.131

W131_0リクルートワークス研究所の『Works 』Vol.131をお送りいただきました。

http://www.works-i.com/publication/works/

メイン特集は「バーチャルリアリティが人と組織を変える日」ですが、ここでは第2特集の「女性社員の多数派 “一般職”の未来は描けるか」を取り上げます。

全文がここで読めます。

http://www.works-i.com/pdf/w131_2toku.pdf

さて、この特集は一般職の歴史を振り返るところから始めるのですが、残念ながらそれはそれまで一般職という名で呼ばれてこなかったものに「一般職」というラベルが貼られたところから始まってます。男女均等法施行で、「女」という区分ができなくなったので、ほぼそのままそれに「一般職」という名前をつけた30年前です。

でも、一般職問題というのは、その名前がつく前にも存在し、そしてその時代の感覚に基づいて「解決」がされ、その解決があまりにもあまりだから、そういうわけにはいかなくなった、そういう問題なんです。

抽象的でよくわからない?

この特集のはじめの方に出てくる「企業の言い分」というのを並べてみましょうか。

問題1 給与の高さと業務内容が不一致

「40代の一般職には、処遇は高いのにパワーポイントやエクセルが使えないという人もいる。でも、社内の人や仕組みに精通していたりするので、誰も文句が言えません」(40代 男性)

「一般職の給与テーブルは年功的要素の強い工場の技能職と同じものを使っていたため、入社以来ずっと定型業務に従事しているにもかかわらず、給与が高くなっています」(50代 男性)

41mvhocvl拙著『日本の雇用と中高年』(ちくま新書)を読まれた方は軽いデジャビュを感じたのではないでしょうか。

第5章の2「中高年女性の居場所」で引用した結婚退職制が問題になった住友セメント事件(東京地判昭41.12.20)における「企業の言い分」です。

被告は、昭和33年4月、爾後採用する女子職員のみにつき次の制度を採用した。すなわち、女子職員を、専らタイプライターによる印書、電話交換業務のほか、比較的軽度の経験技能をもつて処理することができ高度の判断力を必要としない補助的事務のみに従事させることとした。ここに補助的事務とは、文書の発受信、コピーの作成、事務用品の配布、使い走り、来客の取りつぎ、清掃、お茶汲み、その他男子職員の指示による計算、文書の浄書整理、電話連絡等の事務を指称し、業務計画立案、調査、研究報告、物品保管受払等の事務を含まない。そして、後者は男子職員のみが取扱うものとした。よつて、被告は、それ以後職員に関して採用資格につき、男子は大学又は高校卒、女子は原則として高校卒に限り、採用手続につき、男子は本社採用、女子は事業場において欠員の生じた都度採用とし、採用後の身分につき、男子は当初最下級の雇員であるが以後逐次昇進して幹部従業員となり得、他の事業場へ配置転換され得る。女子は結婚までの腰かけ的勤務であるから雇員以上に昇進せず、他の事業場へ配置転換されないと定めるなど、男子職員と女子職員との差異を明確にした。特に、被告は右時点以降、女子職員の採用に当り、「結婚又は満35才に達したときは退職する」ことを労働契約の内容とする旨定めて、その旨の念書をこれらの者から提出させ、もつて被告はこれらの者が結婚したとき解雇し得ることとした。

わが国においては、一般に賃金は男女の別によりかなりの格差があり、とくに高年層において顕著であるが、被告は男女同一賃金の原則に徹し、高校卒の職員については、初任給、爾後の昇給とも、成績査定により生ずる差を除けば、年令を問わず男女同一の賃金を支給してきた。その根拠は次のとおりである。被告において大多数の女子職員は、前述の補助的事務に限り従事せしめられるが、男子職員は前述のように女子職員に比し責任の重いかつ企業に対する貢献度の高い事務に従事せしめられるのであるから、むしろ男子職員の賃金を女子職員のそれより高くすることが合理的である。しかし、結婚前の女子は、既婚女子に比して家事等に煩わされず、したがつて、被告の業務に寄与する程度が比較的高いので、被告はこの点を考慮して、労働に対する対価のほか結婚準備金の意味も含めて、女子職員の賃金を男子職員のそれと同額と定めていたわけである。
 ところで、これらの女子職員は、補助的事務に従事する場合であつても、細かい注意力、根気、正確性を必要とするのに、結婚後において、託児施設その他結婚後も勤務を継続する諸条件が整つていないため、家庭本位となり、欠勤がふえ、前示の適格性を欠き、その他労働能率が低下するのである。それにも拘らず前記賃金制度のため、これら長期勤続の女子職員は、これよりも責任ある地位に就いている男子職員(ことに大学卒業者)に比しより高額の賃金を給せられるという不合理が生ずるに至つた。そこで、被告の男子職員らの多数から、この不合理の是正を求める要望が強まつていた。
 この要望に対処して、なお男女職員の実質的平等を実現するには、女子職員の賃金体系を男子のそれと均衡のとれるように低下させ、女子が他社なみの低賃金で永く勤められるようにするか、女子職員の賃金体系をそのままにして雇入条件につき男子のそれと別異の定めをなし、女子を高賃金で結婚までの短期間に限り特定の職種につき雇うかの二方法が考えられる。被告は、女子職員を比較的労働能率の高い結婚前のみ雇傭して企業経営の効率的運用に寄与させる方針の下に、原則として後者の方法を選ぶこととした。
 これは女子職員にとつてもその間他社に比し高い賃金を得ることとなり有利である。
 このほか、組合が昭和35年において男女別の年令別最低基本給及び昭和38年において男女別の中途採用者(学校卒業時たる大学卒22才、高校卒18才等を過ぎてから採用されたものをいう。)の初任給に関し、女子の基本給及び初任給を男子のそれの約70%にするよう提案し、被告もこれを承諾したのは、男子職員の右要望に副つたものである。

同書では男女別定年制が問題となった東急機関工業事件(東京地判昭44.7.1)も引用しましたが、それは省略します。

それが男女均等法でどうなったか。これまた大変率直に「企業の言い分」を語ったものを同書から引用します。

男女雇用機会均等法の・・・最大の影響は、女性なり社会の意識変化を引き起こすだろうということです。今でも女性の職場進出が目立っていますが、・・・今でも辞めなくなっている女の人が一層辞めなくなるということです。
 ところが困ったことに、銀行の人事管理には建前と本音がいろいろあります。・・・給与システムとか退職金システム等も、ある一定年齢で女性が辞めてくれることを前提にして制度ができています。従って女性が長く居続けたら、システムは崩れてしまいます。ですから将来を考えた場合、女の人が辞めなくなることを前提としたシステムを構築しないと対応できなくなります。
 これまでの銀行の賃金システムはどうなっていたのかと言いますと、男子の処遇を念頭に置いて職能資格制度を導入していましたから、入社後、年齢とともに経験も積み、努力もし、能力も上がっていくということで賃金も右上がりに上がってゆくようになっていました。・・・
 一例として、A君とB子さんの二人がいて、学校の成績もほぼ同じぐらいで似たような能力であり、共にいい仕事をしているとしますと、当然、賃金は同じカーブで上がってゆきます。
 ところがB子さんが数年後に結婚したとしますと、日本の場合、家事責任はB子さんに掛かってきます。しかも子供が生まれれば、当然、事務処理能力のダウン、銀行に対する貢献度のダウンは避けられません。ある時点で賃金が下がるというシステムを入れざるを得ないと思います。
 ところが・・・職能資格制度の本質は、総て上がる哲学しかないのです。・・・横這いになるとか下がるという考え方は一つも入っていないのです。そういう制度の中で、家事の面倒を見なければなりません。赤ちゃんの面倒も見なければなりません。従って銀行で働く分はちょっと落ちますという女性を総てが上がる職能資格制度の中に入れていた矛盾が何故これまで破綻しなかったかと言いますと、大体25,6歳で女性が辞めていたからです。
 しかし、今後、女子が若年で退職しなくなるとすれば、このシステムを再設計しない限り問題の発生を防ぐことはできません。そこで考え出されてきたのが・・・「コース別管理制度」です。

こういう一般職の「前史」を見ると、実は問題の本質は変わっていないのではないか、という気すらします。

後ろの方に、矢島洋子さんの言葉を引きながら、こう述べている部分がありますが、結局「一般職」問題とは「総合職」という特殊な(少なくとも世界の普通の労働者のあり方としては特殊な)働き方がかつては男性のデフォルト、今では(建前上)男女共通のデフォルトになっているという問題の裏返しの問題であるということなのでしょう。

そして、最近採用された一般職については、「彼女たちの多くは、仕事を“ 腰かけ” と思っているのではありません。ちゃんと働き続けたい、しかし、総合職として転勤も長時間労働も受け入れながら家庭を持つというのは、あまりにハードルが高い。そういう人たちが現実的な選択として一般職を選んでいるのではないでしょうか」というのが矢島氏の見立てだ。これは、座談会に出席してくれた人々の主張とも一致する。
我々は、この、とても現実的でいわば地に足のついた彼女たちの選択を、あまり否定的に捉えるべきではない。彼女たちは、仕事の与え方や期待のかけ方を間違えず、多様な選択肢があることを示せば、大いに成長する可能性を秘めている。

« 45歳まで産める! これだけの理由@『プレジデントウーマン』 | トップページ | オワハラ時代の大学と就活@『エコノミスト』 »

コメント

いつも興味深く読んでおります。「彼女たちの多くは、仕事を“ 腰かけ” と思っているのではありません。ちゃんと働き続けたい、しかし、総合職として転勤も長時間労働も受け入れながら家庭を持つというのは、あまりにハードルが高い。そういう人たちが現実的な選択として一般職を選んでいる」という見立ても、前エントリーにおける分岐点についての考察も、働く自分や女友達の実感に近いです。そして、私個人は(仕事や出産について)悩んだ末に専門職として生きていくという道を選択して資格の勉強をしています。個人の選択としてはそれでいいのですが、全体として(女性の)仕事がどのように考えられて、今後法的にも各企業の制度としてもどうなっていくのか大きな絵が見えません。何か希望の持てるような将来像はあるのでしょうか。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 女性社員の多数派 “一般職”の未来は描けるか@『Works 』Vol.131:

« 45歳まで産める! これだけの理由@『プレジデントウーマン』 | トップページ | オワハラ時代の大学と就活@『エコノミスト』 »