外国人技能実習生に集団的労使関係を!?
『労働法律旬報』8月上旬号には、びっくりするような論文が載っていました。
http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/1016?osCsid=fht3bf4ke3satb2ies74gs82f6
といっても、編集部企画の特集「労働者派遣法改正のゆくえ」ではありません。
[特集]労働者派遣法改正のゆくえ
2015年労働者派遣法改正案の問題点
―衆議院における国会審議で明らかになった点を中心として=沼田雅之・・・07
「直接雇用申込みみなし」規定の分析=塩見卓也・・・19
派遣法「改正」の経過と背景=北 健一・・・27
どちらかというと、これらがわりと(少なくとも労働業界人にとっては)毎度おなじみの議論であるのに対して、今まで指摘されたことのない切り口で外国人技能実習生の問題に切り込んでいるのが
[研究]外国人実習生の法的保護のあり方=田中恒行・・・33
です。「はじめに」に、その問題意識が明確に書かれています。
・・・そして、技能実習生がたとえ高い志を持っていたとしても、技能実習制度には事実上「労働移動の自由」がないために、心無い使用者の職場に実習に行くことになってしまった場合には、途中帰国、すなわち実習を断念する以外にその場から逃れる術はない。労使の力関係を見たとき、技能実習生は圧倒的に不利な立場に立たされている。
・・・そして残念ながら、現行の技能実習制度の枠組みの中で、この構造的問題を解決する仕組みは存在しない。
本論文は、技能実習制度に存在するこの構造的な問題を解決するための方策として、技能実習制度における集団的労使関係の可能性について検討することを目的とする。ここで集団的労使関係とは、技能実習生による労働組合と、使用者による労働条件の交渉・協議のためのメカニズムと規定する。
そう、問題を抱えた実習生が外部のユニオンに駆け込んで・・・という事後的個別的な対応ではなく、本来的な集団的労使関係システムによって実習生を保護するメカニズムを確立しようという壮大な構想なのです。
といえば、それは近年非正規労働者について議論され始めた話の応用版か?と思われるでしょう。まさにそうで、私もそういう議論をしてきましたし、それこそ、たとえば連合総研なども今年に入って
http://rengo-soken.or.jp/kenkyu/2015/04/post-43.html(派遣労働における集団的労使関係に関する調査研究)
といった取り組みを始めていますが、さすがに外国人実習生にもそれを適用しようという議論は今までのところ見当たりませんでした。それは田中氏も言うように、
・・・技能実習制度における集団的労使関係について正面から論じた研究はこれまでほとんど存在しない。
その理由としては、技能実習生が日本国内で団結し、団体交渉を行うという発想が、「非現実的」と思われていることがあげられよう。
ということでしょう。しかし、
しかし、労働者が労働者としての権利を実現しようとする姿勢を、「非現実的」であると考えるのであれば、それは日本国憲法に規定されている労働基本権を無視した発想といわざるを得ない。それは日本人労働者に対してのみならず、技能実習生に対しても同様であろう。
まったくそのとおりです。ぐうのねもでない正論。
詳しくはぜひ同誌の論文を読んでほしいと思います。注目すべきポイントとしては、
第1に「使用者」として、実際に実習を行う実習実施機関のみならず、監理団体を含める必要性を提起・・・
第3に労使交渉・協議の付議事項として、技能実習制度の趣旨を実現するために必要と思われる就業請求権、「就労価値」、キャリア権について検討
といった点があります。
とにかく、外国人労働問題についての議論を間違いなく一歩進めた重要な論文です。
ところで・・・、この論文の筆者の田中恒行さん、「放送大学大学院」としか肩書きが書かれていないのですが、私の知る限り、経団連に同名の方がいらしたと思うのですが、もしかしてご本人なのでしょうか?
(雑記)
ちなみに、上記論文とは関係ないのですが、この論文が始まる33ページの直前の32ページに、北健一さんのルポの最終ページがあって、そこに、ヒューコムエンジニアリングの出井智将さんのインタビューが丸々1ページ載っています。
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