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2015年8月26日 (水)

実定法と生ける法有給休暇編

これまたネット上で騒ぎになっているようですが、

http://doda.jp/careercompass/compassnews/20150814-13385.html(会社を休む理由、これってセーフorアウト!? マナーの専門家に聞きました)

https://news.careerconnection.jp/?p=15436(有給休暇に「マナー」は必要? 識者の指摘に「だから取得率が上がらない」とネット疑問視)

「マナーの専門家」が「識者」かどうかはともかく、労働基準法で労働者の権利、使用者の義務として規定されている有給休暇の話をなんでマナーの話にするんだとお怒りの方々が多いようですが、いやいやこれこそ六法全書に書かれている実定法と、現実の職場社会を支配する「生ける法」のずれというものであってですね。

112050118六法全書上の有給休暇とはひと味違うその実例を、『日本の雇用終了』からいくつか・・・・。

(1) 年次有給休暇、育児休業の取得を理由とする雇用終了

 労働者としての権利行使に係る雇用終了のうち最も典型的なものは、法律で認められた年次有給休暇や育児休業の権利を行使した(あるいはしようとした)ことを理由とする雇用終了であり、6件ある。

・10185(非女)普通解雇(25万円で解決)(不明、不明)

 会社側は「個性が強く、店のスタッフとの関係も不仲で、口論が絶えない」こと、他のパート従業員から「このままではここで働けない、やめる」との話が再燃したため、「店舗の運営を第一と考え」「不協和音を理由に」解雇を通告したと主張。本人側は「私が・・・労働基準監督署に対して申告したこと等を理由に解雇されたと判断」している。
 本人の申立によると、「有休は付与されるはずですけどもと聞いたら、次長がパートには有休はありませんとはっきり言われた」、「時間外労働手当のことを聞いたら言ってる意味が分からないといわれた」、「本部に問い合わせしたところ、雇用契約書および労働契約書は社員にはありますが、パートさんにはありませんといわれた」ため、監督署に相談し、次長が呼び出され、指導してもらった。
 これは、日常の「態度」と「発言」が交錯するケースであるが、むしろ労働法上の権利を主張するような「個性の強さ」が同僚との関係を悪化させる「態度」の悪さとして捉えられ、権利を主張しないことが「職場の和」となるという職場の姿が現れている。

・10220(正男)普通解雇(不参加)(不明、無)
 身内の不幸で有休を申し出たら、店長が「うちには有休はない。今まで使った人もいない。いきなり言われても困る。自分に聞かれても分からない」等と不明瞭な回答をし、そののち有休を取得したが、そののち解雇通告されたもの。
 会社側は「有休の取得と解雇は関係ない」、「労働意欲がなく、何度注意しても改善せず、就業に適さない。他の子に悪影響を及ぼす」のが解雇理由だとしている。なお、「店長は経験が浅く、労働法について詳しく理解していなかったのでこじれた」と説明している。
 会社側不参加のため詳細不明だが、有休と解雇がまったく無関係とも思われず、「有休=労働意欲の欠如」という認識があるようにも見える。

・30017(正女)普通解雇(打切り)(3名、無)
 社長に有休を願い出、了解を取ったにもかかわらず、その初日に「会長が大変怒っておられる。2週間も有休を取るような無責任な人は、うちには要らない」と連絡され、有休後出勤すると、会長から「要らないとは解雇の意味である」と通告。
 会社側は「通常の勤務態度や得意先の態度に当社の信用を失墜させるような行動が多々あり、その都度注意したものの一向に改善が見られないことによるもの」と説明。有休はきっかけで、本質はむしろ本人の勤務態度への認識にあるようで、「我々と社長の仕事上の指示も選り好みでものによると『こんなん私いやや社長やってえなあ』と馴れ馴れしく拒否するようになった」といった態度が許し難かったらしい。
 態度を理由とする解雇が権利行使をきっかけに噴出したケースといえよう。

・30204(非女)普通解雇(12万円で解決)(40名、無)
 会社側によれば、当日の朝「子どもが病気なので休む」と連絡があったが、当日パチンコ店にはいるのを目撃したため、勤務態度不良として解雇したもの。そもそも事前に休暇届を出しておらず、「有休とは認め難い」「単なる欠勤」との認識である。
 本来有休の利用目的は自由であり、パチンコに費やしたからといって不利益取扱いが許されるわけではないが、使用者には時季変更権があり、それが行使不可能な申請には問題がある。実際には、本当に子どもが病気であれば看護休暇の代替として認容するのが普通であろうが、実はパチンコに興じていたことで、「態度」への怒りが噴出したとみられる。

・30264(非女)普通解雇(6万円で解決)(25名、無)

 有休の権利を主張したら、社長から「うちにはない。パートにはない」と30分口論になり、実際に休んだのち、社長の叔父から「これ何や。景気が悪いから有休は出せない」と1時間説教され、さらにそののち有休を取ったら、社長から「今から仕事しなくてもよい」「首ということか?」「そうだ」「有休のことを言ったからか」「違う、休むからだ、困るからだ」とやりとり。会社側は、「零細企業においては、現実には有給休暇なんてないよねという暗黙の了解があって、これまではあまり請求もされなかったのは事実ではあるが、拒否したことはない」と述べている。
 これも権利行使が「態度」の問題となるケースだが、会社側が「零細企業の現実」を率直に語っている点が興味深い。

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