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2015年7月24日 (金)

「労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」@『労基旬報』2015年7月25日号

『労基旬報』2015年7月25日号に「労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」を寄稿しました。

 去る6月15日、筆者らが行った調査研究の報告書『労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析』が公表されました。これは、「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)において、労働紛争解決手段として活用されている都道府県労働局のあっせん、労働審判の調停・審判及び民事訴訟の和解について、事例の分析・整理を平成26年度中に行う旨が明記されたことを踏まえ、厚生労働省からの依頼を受け、裁判所の協力を得て、独立行政法人労働政策研究・研修機構において実施したものです。研究担当者は筆者と高橋陽子研究員です。

 労働局あっせんについては既に筆者らによる全数調査型の研究が行われ報告書にまとめられていますし、労働審判についても東大社会科学研究所のグループによるアンケート調査型の研究が行われ報告書にまとめられています。しかし今回の研究の特徴は、政府の方針で研究の実施が決定されたため、裁判所の協力を得て労働審判や裁判上の和解についても全数調査型の研究を行えた点にあります。具体的には、①都道府県労働局のあっせん事案(以下「あっせん」):2012年度に4労働局で受理した個別労働関係紛争事案853件、②労働審判の調停・審判事案(以下「労働審判」):2013年に4地方裁判所で調停または審判で終結した労働審判事案452件、③民事訴訟の和解事案(以下「和解」):2013年に4地方裁判所で和解で終結した労働関係民事訴訟事案193件の関係資料から必要なデータを収集し、統計分析しました。

 その事実発見の一部を以下に示しますが、これら3種類の個別労働紛争解決システムの性質の違いがくっきりと浮かび上がっていて、大変興味深いところです。

1.性別:あっせんは男性53.6%、女性46.4%、労働審判は男性68.6%、女性31.4%、和解は男性77.2%、女性22.8%と、後者ほど男性の比率が高い。

2.雇用形態:あっせんは正社員47.1%、直用非正規38.1%、労働審判は正社員75.7%、直用非正規21.0%、和解は正社員79.8%、直用非正規19.2%と、後者ほど正社員の比率が高い。

3.勤続年数:中央値で見ると、あっせんは1.7年、労働審判は2.5年、和解は4.3年であり、後者ほど長期勤続の労働者が利用している。

4.役職:役職者の比率は、あっせんは4.9%、労働審判は12.4%、和解は22.8%であり、後者ほど役職者の利用が多い。

5.賃金月額:中央値で見ると、あっせんは191,000円、労働審判は264,222円、和解は300,894円であり、後者ほど高給の労働者が利用している。

6.企業規模(従業員数):労働審判と和解についてはデータが得られないものが多く厳密な分析ではない(小規模企業ほど従業員数を拾いやすいことによるバイアスがある。)が、中央値で見るとあっせんが40人、労働審判が30人、和解が50人である。

7.制度利用にかかる期間:中央値で見ると、あっせん期間(解決事案のみ)は1.4月、労働審判期間は2.1月、訴訟(和解)期間は9.3月であり、訴訟が長期間かかっている。

8.解決に要した期間:事案発生日から解決までの期間を中央値で見ると、あっせんは2.1月、労働審判は5.1月、和解は14.1月であり、後者ほど長期間かかっている。

9.弁護士等の利用:弁護士の利用を見ると、あっせんでは労使双方なしが95.0%(労働者側の利用は0.7%)であるのに対し、労働審判では労使双方ありが88.9%、和解では95.3%と、対照的な状況である。なおあっせんでは社会保険労務士の利用が可能だが、やはり労使双方なしが94.0%である。

10.請求金額:中央値で見ると、あっせんは600,000円、労働審判は2,600,000円、和解は5,286,333円であり、後者ほど高額である。

11.解決内容:(以下、あっせんについては合意が成立した事案に限る。)金銭解決の比率が、あっせんは96.6%、労働審判は96.0%、和解は90.2%であり、いずれも金銭解決が圧倒的大部分を占めている。

12.解決金額:中央値で見ると、あっせんは156,400円、労働審判は1,100,000円、和解は2,301,357円であり、後者ほど高額であるが、いずれも散らばりが大きくなっている。

13.月収表示の解決金額:解決金額を賃金月額で除した数値を中央値で見ると、あっせんは1.1か月分、労働審判は4.4か月分、和解は6.8か月分であり、後者ほど高くなっているが、いずれも散らばりが大きくなっている。

 本調査研究を行うもととなった「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)においては、あっせん、労働審判及び和解の事例分析を行うことと並んで、「分析結果を踏まえ、活用可能なツールを1年以内に整備する」とされています。本調査研究結果をもとに、厚生労働省はこのツールを開発し、一般の利用に供することを予定しています。

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