労働法の教科書に書いてないことが一番大事
ブラックバイト問題について、あるいはそれにとどまらずブラック企業問題について、実は一番重要な指摘は、前からPOSSEの人たちが指摘してきた
https://twitter.com/magazine_posse/status/620545592381456384
もう何回もつぶやいてるけど、ブラックバイトユニオンに寄せられた600件の労働相談で一番多いのは「辞められない」。サービス産業の学生バイト依存が背景。低賃金のアルバイトに店を任せ、過剰な責任と業務を負わせる。それでも辞めようとすれば「仕事をなめるな」「自分勝手だな」と責任感を煽る。
という点にあるのだと思う。
そして、皮肉なことに、この点は「だから若者に労働法の知識が大事!」という意識の中にはなかなか入ってこないのだ。なぜなら、これは民法の原則そのものであって、それを修正してできた「労働法」じゃないから。
若者に必要なのは、民法を修正してできた労働法よりもその前の民法そのものであり、労使は対等じゃないから労働者を保護しなくてはいけないという理屈で作られた労働法である以前に、労使は対等なんだから辞めたければ辞めていいんだよ、という市民法の原則であるという皮肉を、どこまで関係者の皆さんが的確に理解しているかという問題でもある。
というようなことを昨年も書いた記憶が・・・
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-632c.html (労働法教育の前にまず民法を)
てなことをいうと、一世代か二世代くらい昔であれば、せっかくブルジョワ市民法原理を克服する労働法を確立したのに、元に戻れというのか?と怒り心頭に発したおしかりを各方面から受けることになったに違いありませんが、いやいや昨今の労働者の相談なるものをみていくと、そんな先走ったあれこれの労働者の権利なんてものに行く前のもっともっと前の段階で、それこそブルジョワ市民法原理をもちっとしっかりと身につけてもらわんことには、どうしようもないという姿が浮かび上がってくるわけでごぜえますだよ。・・・・・
・・・・まさに「働くことに関する基本的な知識が労使双方で不足」には違いないのですが、ここで問題なのはそれがいわゆる近代市民法を修正してできた現代労働法に属する部分における「知識の不足」じゃないということです。
それよりも、もっと根源的なというか、中世封建社会を否定してできた近代市民社会(そう言いたければブルジョワ社会とでも何とでも言えば良いが)の基本原理自体が、労使双方にしかと認識されておらず、ご主人様が駄目だと言ったら召使いは勝手に辞めることも許されないのが当たり前みたいな感覚があるらしいことです。未だに主従法の世界か!?
私もここ数年来、いろんな人々の驥尾に付して労働法教育が必要だの何だのと言ってきてますけど、なんだか事態はもう少し深刻で、いわゆる労働法学で教えているような労働法以前の、民法の雇用規定それ自体を改めてしっかりと教えておかなければいけないような状況なのかもしれないな、と感じる次第です。
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