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2015年7月15日 (水)

政治スト

毎日新聞に「安保法案:今こそ「伝家の宝刀」 労組、スト権確立続々と」という記事が載っていますが、

http://mainichi.jp/select/news/20150715k0000e040245000c.html

政府・与党が安全保障関連法案の成立を目指して突き進む中、労働組合で同法案に反対してストライキを構えようという動きが広がっている。ストライキは春闘の賃上げ交渉の手段にとどまらず、かつては日米安保条約改定などに反対する際にも「政治スト」として盛んに行われたが、1970年代半ばをピークに件数は減少の一途をたどってきた。だが、国民の間で安保法案への危機感が高まる中、「伝家の宝刀」が再び注目されている。【東海林智】

記事自体は事実を伝えているので別にいいのですが、最後の解説部分が大変ミスリーディングというか、間違った情報を伝えかねない危険性を感じます。

【ことば】ストライキ

 組合員が職場で一斉に仕事を放棄する行為。労働者の団結権や団体交渉権と共に労働者の権利として憲法28条で認められ、正式な手続きを踏めば会社からストを理由とした処分や損害賠償請求を受けない。春闘などで労働条件改善を目的に行われる「経済スト」に対し、政府の施策への抗議など政治に関連するものは「政治スト」と呼ばれ、以前盛んに行われた。

いや前半は法制の説明としてはそのとおりです。給料上げろでも、残業なくせでも、使用者ができることである限り、要求できるし、スト権もある。後半は政治史の説明としてはそのとおりです。かつては政治ストがいっぱいあった。ただし、ここが大事ですが、日本の判例通説は、政治ストは違法であり、労働組合法の保護を受けられないとしています。そこのところの一番大事なところを、どうもこの解説はわざと抜かしているように見えますが、もしこれを読んで、政治ストも現行法(判例)上認められていると思い込む人が出たりするとまずいので、ここはちゃんと注釈をつけるべきでしょう。

なお、労働法学者の中にはある種の政治ストは合法だという人もいます。労働法改正反対などの経済的政治ストと、労働者の経済的利益に関係しない純粋政治ストを区別し、前者は許されるという説です。ただしそのその説も判例通説ではありません。

しかし仮にその二分説にたったとしても、安全保障関連法案での政治ストは純粋政治ストですから、どうひっくりかえっても合法的にはなりえません。

ここは、最近集団的労使関係法の人気がなくなったために、あまりきちんと説明する人がいなくなっていて、ややブラックホール状態になっていますが、大事なポイントなので、誰か関係の人がきちんとそのリスクを説明しておくべきではないかと思います。

やや皮肉を言うと、社長に向かって直接スト権という刃を向けることもできないような労働組合が、社長の目の前で、しかし刃の向きはあっちの方のあらぬ方向に向けて、ストだストだと騒いでみて何の意味があるのか、真面目に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

そしてもっと深刻なのは、労働者の労働条件の向上という労働組合の本来の役割はあちらの方に放っておいて、政治団体か思想団体かと間違えられるようなことばかりがクローズアップされればされるほど、そういうけしからん政治活動ばかりやるような労働組合とか言う不逞の輩は抑圧しなければならないというような、とんでもない発想に一生懸命せっせと燃料を注ぐことになるのではないか、と、そういう懸念も少しはもってもらいたいものです。

(追記)

しかし、この記事へのツイートを見ていくといささか絶望的になります。

https://twitter.com/search?q=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Fselect%2Fnews%2F20150715k0000e040245000c.html

とにかく、本来の、労働条件の向上のためのストという、それであれば民事上の損害賠償も受けないし、刑事上の訴追も受けないストライキがほとんど絶滅危惧種になりつつある異常な世の中で、

ストを打たれてもその相手の経営者にはいかんともし難い高度な政治問題を掲げたストという、あえてやれば民事上の損害賠償請求もまともに食らうし、場合によっては刑事上の訴追もあり得るようなリスクのある政治ストばかりが、観念的にネット上でもてはやされるという異様な事態に、少しは違和感を感じている人がいないのだろうかと、一生懸命探してもほとんど出てこない(ごくわずかはありますが)。

自分が政治ストの相手の経営者になったとして考えてみてください。

給料上げろとか残業なくせというのは、経営者が自分でやれること、それを理由にストを打たれて損害を出しても、それは経営者の責任というのが労働組合法の大原則。

安全保障法案を理由にストを打たれて、打たれた経営者は何をどうしろというのか、こういう現場感覚に即した発想が雲散霧消してしまった廃墟に、空中浮遊するかのような政治スト礼賛論ばかりがはびこるということに、もう少し危機感を持って欲しいなあ、と。

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コメント

>安全保障法案を理由にストを打たれて、打たれた経営者は何をどうしろというのか、

日頃、法人税下げろなどいろいろ政府に物申しているのですから、経営者団体通じて圧力をかけるなどやりようはいくらでもあるのでは。

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