有期契約労働者の育児休業取得権
本日、厚生労働省の「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」に、報告書素案が提示されたようです。
メインのテーマは介護休業の拡充なんですが、育児休業の方で興味深い提起がされています。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000091340.pdf
(2)有期契約労働者にかかる育児休業の取得要件
(現行制度の状況等)
○ 有期契約労働者については、平成 16 年の法改正により、一定の要件の下で休業 取得の対象とされた。一方で、平成 16 年の法改正時及び前回平成 21 年の法改正時 の国会での附帯決議において、有期契約労働者への制度の適用範囲の在り方につい て引き続き検討することを求められている。
○ この点、平成 16 年の法改正の施行から 10 年を経過したが、有期契約労働者の育 児休業取得率は 69.8%と、女性全体が 83.0%であるのに比べ低い割合となってい ることや、パート・派遣については、育児休業を取得して就業を継続する割合は 4.0%で、正規の職員の 43.1%に比べ低水準にとどまるとの調査結果もあり、有期 契約労働者への制度の適用範囲について、見直しを含めて検討する必要がある。
○ 有期契約労働者への適用範囲は、申出時点において次の要件のいずれも満たして いる者に限られている。 ①同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること ②子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること (③子が1歳に達する日から1年を経過する日までの間に、労働契約期間が満了し、 かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)
○ このような要件が設けられた趣旨は、育児・介護休業法の目的が労働者の雇用の 継続にあるところ、労働契約の更新を繰り返して継続して雇用される者も多くいる ことから、相当期間雇用の継続が見込まれると考えられる者について育児休業や介 護休業を認めることにある。
(今後の対応の方向性)
○ 上記の要件のうち、②の要件について、特に1年未満の契約を繰り返し更新して いる場合など、申出時点で将来の雇用継続の見込みがあるかどうかを有期契約労働 者が判断することは困難であるとの意見や、労働者側と事業主側とで判断が分かれ るところであり、紛争の原因になりかねないといった意見等があった。
○ 現行の②の要件では子が1歳に達した時点で引き続き雇用されているかが不明 18 な場合が特に問題になることから、②の要件や③の要件をなくし、少なくとも育児 休業の申出時点から当該雇用契約の終了までの期間については育児休業の取得が 可能となるようすべき、との意見や、②の要件を、子が1歳に達する日までの間に、 労働契約期間が満了し、かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者のみ育 児休業が取得できないこととすべき、との意見があった。
○ 要件の見直しを検討するにあたっては、雇用の継続という育児・介護休業法の目 的に加え、事業主の雇用管理上の負担を十分に考慮し、また不利益取扱いの考え方 等を整理しつつ、さらに検討を深める必要がある。また、労働契約法の改正により、 有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、 無期労働契約に転換できるようになったことも踏まえるべきであるとの指摘もあ った。
○ なお、産前産後休業を取得した有期契約労働者のうち、育児休業を取得した割合 は 83%である一方、産前産後休業や育児休業は法律上の要件を満たせば事業所に制 度がなくても取得できることを知っていた有期契約労働者は 33.6%と低い割合とな っていること(平成 27 年)から、そもそも産前産後休業を取得できることを知ら ないために、育児休業の取得率も上がらない可能性がある。そこで、有期契約労働 者でも産前産後休業・育児休業制度等を利用できることについて、引き続き周知す ることが重要である。その際、自治体が独自に育児休業について母子健康手帳に記 載している例のように、個人に向けた情報提供が有効であることに留意すべきであ る。
有期契約の将来の見込みという要件は、今問題になっている派遣事業における特定派遣の要件が「全員常用」なんだけど、これが有期を反復更新する見込みでいい、というインチキ要件になってしまっている例でもわかるように、予定は未定にして決定にあらずなのにそれで前もって決めてしまうという矛盾をどうしてもはらんでしまうのですね。
なんにせよ、これが報告書になって、その後さらに三者構成の労政審での審議を経て法制化という段取りですから、もう少し事態の推移を見ていきたいと思います。
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