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2015年7月24日 (金)

労使コミュニケーション@『JIL雑誌』

New『日本労働研究雑誌』8月号は、「労使コミュニケーション」が特集です。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/08/index.html

総論担当は、久本憲夫さんと荒木尚志さんというそれぞれの分野の二大巨頭が、淡々としかし細部まで行き届いたまさにいい意味での教科書的な叙述で、社会政策と労働法両面から、この問題を論じようとするなら頭に置いておくべき事柄を説き聞かせています。

それを受けて、禹宗杬さんと細川良さんが、各論として終戦直後の経営協議会の話と、フランスにおける労使対話促進法政策について、ブリリアントな筆致で書いています。

さらに、これは特集に合わせたのかどうか分かりませんが、労働政策の展望に小池和男さんが登場し、ヨーロッパ型の従業員代表の経営参加を主張しています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/08/tenbou.html

その記述で興味深かったのは、労使コミュニケーション調査では、1977年と1984年に企業の役員会への従業員代表の参加の可否という項目があったのに、その後はそれはなくなったという記述です。

これは、1970年代後半に、イギリスも含めて当時のヨーロッパ諸国で経営参加が政策の焦点になっていたことから、日本でもかなりの注目を集めていたことが背景にあります。同盟が監査役会への参加を打ち出したのもこの時期です。

しかしその後、そんなヨーロッパのような経営参加制度を設けなくても、日本の職場では現に事実上の参加が進んでいるではないかという声がとりわけ経営側から強く、そうした事実上の参加こそが日本の競争力の源泉という考え方が主流となり、結果として制度的な経営参加への関心は縮小していき、労使コミュニケーション調査でも今さらあえて取り上げる必要はないということで、その項目が落ちていったのでしょう。

ある意味で皮肉だと思うのは、そういう事実上の職場レベルの参加の意義を高く評価する研究の代表が小池和男さんであったことです。その小池さんがヨーロッパ型参加システムを高く評価するようになったことは、裏側から言えば職場レベルの労使コミュニケーションがかつてほどうまく回らなくなったことを物語っているのかも知れません。

従業員代表制への関心は、その後とりわけ1990年代以降労働法学の世界で次第に高まっていきますが、今日まで法政策に結実するところには至っていません。

いずれにせよ、この分野の思想史のような形で、一度誰かがきちんとまとめておく必要があるような気がします。

最後に書評欄。JILPTの仲琦さんがデイヴィッド・ウェイルの『分断された職場』(Fissured Workplace)を書評しています。下請、フランチャイズ、サプライチェーンといった手法を駆使して進められるアウトソーシングが働く場とそこで働く人々に与える影響を描き出した名著を簡潔に紹介しています。

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