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2015年7月 6日 (月)

ILO条約における「強制労働」

法律や条約に関わる領域を、通常の英語の常識だけで論じてはいけないという実例。

1930年のILO強制労働条約に曰く、

第 二 条

1 本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ
2 尤モ本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ左記ヲ包含セザルベシ
 (d) 緊急ノ場合即チ戦争ノ場合又ハ火災、洪水、飢饉、地震、猛烈ナル流行病若ハ家畜流行病、獣類、虫類若ハ植物ノ害物ノ侵入ノ如キ災厄ノ若ハ其ノ虞アル場合及一般ニ住民ノ全部又ハ一部ノ生存又ハ幸福ヲ危殆ナラシムル一切ノ事情ニ於テ強要セラルル労務

Article 2
  1. 1. For the purposes of this Convention the term forced or compulsory labour shall mean all work or service which is exacted from any person under the menace of any penalty and for which the said person has not offered himself voluntarily.
  2. 2. Nevertheless, for the purposes of this Convention, the term forced or compulsory labour shall not include-- 
    • (d) any work or service exacted in cases of emergency, that is to say, in the event of war or of a calamity or threatened calamity, such as fire, flood, famine, earthquake, violent epidemic or epizootic diseases, invasion by animal, insect or vegetable pests, and in general any circumstance that would endanger the existence or the well-being of the whole or part of the population;

つまり、日本が戦前に批准していたILO第29号条約の用語法においては、「緊急ノ場合即チ戦争ノ場合ニ於テ強要セラルル労務」(any work or service exacted in cases of emergency, that is to say, in the event of war)は、「強制労働」(forced or compulsory labour )ではない、という概念区分になっており、当然外務省の条約担当者はこういう経緯を知り尽くした上でものごとをやっているわけです。白馬が馬でないと言っているわけではないということですね。

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