大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラム
世間では依然として、メンバーシップ型雇用にどっぷり漬かった感覚のままのレリバンスの欠如した議論がはびこっていますが、今後少子化が進む中で(年功賃金で親が授業料を払ってくれる)若い世代のお客さんがどんどん減っていくことを真剣に考えているサイドの方は、別の財源でもって大学の生き残りの道を模索しているようです。
「L型大学」と違って(笑)世間的にはほとんど話題にならなかったようですが、先月文部科学省は、大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラムに関する検討会の報告を公表しています。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/05/12/1357739_1.pdf
リンク先をざっと読んでいただければわかるように、このプログラムの対象は社会人です。つまり、大学、大学院、短期大学、高等専門学校において、社会人や企業のニーズに応じた魅力的なプログラムを提供し、社会人がその受講を通じて職業に必要な能力を取得することを促進するため、そうしたプログラムを文部科学省が認定する制度です。
認定基準のうち注目すべき点を拾うと、総授業時数の一定以上を、実務家教員や実務家による授業、双方向・多方向の討論、実地の体験活動、企業と連携した授業などが占めていることとされています。また、対象職業分野を明確に設定公表していること、プログラムで習得可能な能力を具体的かつ明確に設定公表していることが求められており、つまり職業的レリバンスを示せと言うことです。
大変興味深いのは、最後のところで、
○今後、本制度を土台とし、文部科学省における社会人の学び直し関係施策や、厚生労働省における労働者への教育訓練にかかる支援制度等各省の政策との連携など、社会人の学び直しを促進していくために必要な施策が合わせて行われることにより、さらなる効果を期待するものである。
と、雇用保険の教育訓練給付制度を財源として使いたいという趣旨がにじみ出ていることです。
レリバンスのない大学教育を、子供の教育費込みの親の年功賃金でまかなうというビジネスモデルが徐々に崩れていき、本人の稼いだお金プラス雇用保険の教育訓練給付でもって大学の授業料をまかなうというモデルに移行しようという文部科学省の下心が、見え見えに透けて見えるところが興味深いというべきでしょうか
大学とは教育機関であり、教育費を誰がどういう形で負担するかが最大の問題であるという真実から目を背けていたい人々にとっては、レリバントではない話なのでしょうけど。
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