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2015年6月 1日 (月)

『現代先進諸国の労働協約システム―フランスの企業別協約』

HosokawaJILPTの細川良研究員による『現代先進諸国の労働協約システム―フランスの企業別協約』がアップされました。

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2015/0178.html

前の『現代先進諸国の労働協約システム―ドイツ・フランスの産業別協約(フランス編』に引き続き、企業別協約について詳しく検討しています。

下に要約を転記しておきますが、政府が立法によってしゃかりきに進めようとしている割にはそれほどにはなっていないというところでしょうか。

1.フランスにおいては、歴史的に労使当事者の間での対話の伝統が存在せず、法律による規律が非常に強かったという点があげられる。このことは、労働組合の組織力の脆弱性による側面も大きく作用しており、現実に、フランスにおいては1968年以前においては、企業内に組合支部を設置することができない状況にあった。1968年以前においても、企業レベルでの交渉は国営企業(および大企業)を中心に存在してはいたものの、それはあくまでも従業員代表者との協議であって、そこで締結される協定は、法律上の労働協約としての性質を有するものではなかった。
2.フランスにおける企業レベルでの交渉は、法律による交渉事項の義務付けという手法を通じて活性化の途をたどることとなった。すなわち、1982年のオルー法は、賃金、労働時間等の基本的な労働条件について、年次交渉事項として毎年の交渉を義務付ける制度を確立し、これを契機として企業レベルでの交渉および協定の締結は大幅に増加することとなった。現に1980年代前半においては年に5,000件ほどしか存在しなかった企業別協定は、現在では35,000から40,000件にまで増加している。このように、立法政策の支援のもとで、企業レベルでの交渉および協定の締結の活性化がなされてきたということが、フランスにおける企業レベルでの交渉および協定についての重要な特徴の1つである。
3.フランスにおける伝統的な有利原則を前提に、企業別協定は、法律および「職業の法」としての産業別協約による規範を前提に、これに労働条件の上積みをすることがその基本的な機能として予定されている。他方、1980~90年代における経済状況、賃金決定の個別化の進展と言った要因により、従来は個別の労働条件決定に対して一定の直接的な影響力を有していた、産業レベルでの交渉および協約の役割が、労働条件の最低基準の確保としての色彩をより強くしていき、企業レベルでの交渉が十分に機能するだけの労使交渉の基盤を有する企業‐すなわち、労働組合が企業内に十分な組織的基盤を有している、主として大企業‐においては、産業レベルの交渉および協約によって定められる条件を大きく上回る労働条件が、企業レベルでの交渉および協定によって定められていくこととなった。
4.2004年にフィヨン法による有利原則の廃止が行なわれたものの、同法によってその可能性が大幅に拡大された(一般的に可能となった)、企業別協定による産業別協約の適用除外制度は、実際にはあまり使われていないのが実情である。その背景には、フランスにおける企業レベルの交渉は、一部の大企業を除き、あくまでもオルー法以降の立法政策による、義務的交渉事項を中心とした立法政策の主導のもとで拡大したものであって、企業レベルにおける労使の自治的な対話は、それほど拡大していないことが要因であることが指摘できる。他方で、このような労使対話の基盤が確立している(巨)大企業にあっては、そもそも産業別労働協約が定める(最低条件としての)基準とは大きく異なる労働条件が、フィヨン法の以前から企業レベルでの交渉および協定を通じて決定される状況が既に確立している。結果、適用除外交渉が可能となるような労使の基盤が存在する大企業にあっても、適用除外協定の締結そのものが必要とされない状況が形成されている。かくして、2004年法による適用除外制度の拡大による有利原則の撤廃は、産業別最低賃金等の公序に属する事項についての例外規定という立法的な手当、また閉鎖条項による適用除外協定の封印という手法とあわせ、法律および産業別労働協約を中心とした、労働条件の最低基準の確保という観点からの、フランスの伝統的は規範設定システムを覆す状況はもたらすものとはなっていないといえる。
5.もっとも、フランスにおいても産業レベルの労使、産業レベルでの交渉および協約の影響が、徐々に低下している状況自体は存在している。
すなわち、まず上述した大企業を中心とした2004年法以前からの企業レベルの交渉および協定による(主として賃金についての)労働条件決定の確立は、裏返せば、労働条件の一部についてとはいえ、もはや産業レベルでの交渉および協定が、これらの企業および労働者にとっては、強い影響力を及ぼすことができなくなっているという事実を示していることになる。また、その結果としての産業内における大企業の労動者と中小規模の企業の労働者との労働条件の格差の拡大は、労使双方における組織内の利害対立を生み出すこととなり、産業レベルでの交渉の機能を低下させる危険性をはらんでいる。

6.最後に、労働条件決定以外の領域における企業内における決定権限の拡大という点を指摘する必要がある。すなわち、近年、企業委員会等の従業員代表機関が果たす役割が、伝統的に認められてきた福利厚生に関する事項にとどまらず、企業の経営状況に関するさまざまな情報提供、協議の実施という機能を果たすようになってきている。
企業委員会等の委員の選出のプロセスから、その多くは企業内組合支部の組合員によって占められているのが実態であり、従業員代表期間が労働組合(企業内組合支部)にその役割を取って代わるということは、通常は想定されにくい。しかし、こうした企業委員会等の権限の拡大によって、企業内における重要な経営・決定事項に関する企業内組合の役割が拡大されることとなり、そのことは結果として産業レベルの労使、および彼らによる交渉のプレゼンスを相対的に引き下げる可能性は想定されるところである。

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