ジョブ型・メンバーシップ型に関する労働者の意識調査結果@みずほ情報総研
みずほ情報総研が、「ジョブ型・メンバーシップ型に関する労働者の意識調査結果」というのを発表しています。
http://www.mizuho-ir.co.jp/company/release/2015/hrm0610.html
http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2015/pdf/hrm0610.pdf
みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、社長:西澤 順一)は、2015年2月および4月に、大卒正社員の労働者1,030人と、企業の人事担当者429人を対象に、「ジョブ型・メンバーシップ型に関する意識調査」を行い、このたび調査報告書としてまとめましたのでご案内いたします。
近年、我が国では少子高齢化、労働力人口の減少といった状況下において産業競争力の強化が求められており、政策面ならびに企業のマネジメント面において、創造性と高い生産性を発揮できる労働環境の構築が重要視されています。特に、人事分野においては、非正規雇用問題、解雇規制の見直し、生涯現役社会の実現、ワークライフバランスの向上、ダイバーシティの推進、世代間の公平等が重要なテーマとなっています。
一方で、これらのテーマは、我が国固有の「メンバーシップ型(*1)」の雇用慣行と深く関わっており、これを諸外国で一般的な「ジョブ型(*2)」に変えていこうという議論があります(*3)。しかしながら、それは企業・労働者双方に大きな変化を求めるものであり、実現に向けた課題は多いものとされています。労働者が自分の仕事を「ジョブ」としてどのくらい意識しているのか、現在の雇用慣行や管理施策についてどう感じているのかを知ることが、この課題解決に必要と考えられますが、この点について正面から取り組んだ調査はあまりありません。
このような背景から、みずほ情報総研では、「ジョブ型」および「メンバーシップ型」に対する労働者の意識を、(1)ジョブ(業界)型、(2)ジョブ(職種)型、(3)メンバーシップ(就社)型、(4)とにかく社会人(就職)型の4類型(*4)で捉えたアンケート調査を実施しました。今回の調査から、労働者の仕事の全体満足は、「ジョブ(職種)型」が最も高く、企業の人事担当者は「ジョブ(職種)型」の採用を重視する傾向にあることがわかりました。また、企業規模が大きいほど、「ジョブ(職種)型」の意識は弱まり、「メンバーシップ(就社)型」の意識が強まる傾向が見られました。主な調査結果は以下のとおりです。
「自分はジョブ(職種)型」であるという意識を持つ人が最も多い
ジョブ(職種)型:1.75、ジョブ(業界)型:1.48、メンバーシップ(就社)型:1.42、とにかく社会人(就職)型:1.35
年代別に見ると、「自分はジョブ(職種)型」であるという意識は、20代と比べ、30代以上の年代で強くなる
20代:1.63、 30代:1.77、 40代:1.72、 50代:1.77、 60代以上:1.92
企業規模で見ると、「自分はジョブ(職種)型」であるという意識は、企業規模が小さいほど強くなる
3,000人以上:1.69、 300~3,000人未満:1.74、 30~300人未満:1.75、 30人未満:1.88
一方、企業規模が大きいほど「自分はメンバーシップ(就社)型」であるという意識が強くなる
3,000人以上:1.63、 300~3,000人未満:1.44、 30~300人未満:1.37、30人未満:1.21
*上記4項目はすべて、1位選択を3点、2位選択を2点、3位選択を1点、4位選択を0点として得点換算し、平均値を算出
仕事の全体満足度は「ジョブ(職種)型」が高く、「とにかく社会人(就職)型」は、満足度が低い
ジョブ(職種)型:3.62、メンバーシップ(就社)型:3.57、ジョブ(業界)型:3.48、とにかく社会人(就職)型:3.18
*上記項目は、「当てはまる」を5点、「当てはまらない」を1点などに得点換算し、平均値を算出
企業の人事担当者は、「ジョブ(職種)型」の意識を持った人材を今後採用したいと考えている
[新卒採用] ジョブ(職種)型:34.5%、ジョブ(業界)型:28.2%、メンバーシップ(就社)型:25.4%、とにかく社会人型:11.9%
[中途採用] ジョブ(職種)型:39.4%、ジョブ(業界)型:26.8%、メンバーシップ(就社)型:24.2%、とにかく社会人型:9.6%
日本における正社員の雇用は、雇用期間や勤務場所、職務を限定しない、いわゆるメンバーシップ型雇用慣行が主流となっているが、ある程度の仕事経験をもつ労働者は、「自分の職務(仕事)の範囲」を意識して働いているのではないかと考えられる。今回の調査においても、「ジョブ(職種)型」の意識は30代以上の年代で強くなる傾向があったことは、この考えを支持するものである。「ジョブ(職種)型」の意識は、年代、企業規模によらず全体で高くなっており、ジョブ型志向が明示的な意識とはなっていない可能性はあるが、比較的浸透してきていると考えられる。
また、人事担当者の調査結果にあるように、新卒採用に関して、今後職種意識の高い人材を採用していく動きが高まるとすれば、大学や高等専門学校等の高等教育においても職業教育がもっと必要ではないかという議論がありうる。また、社会が若者をジョブ型スタイルで受け入れる方がよいのか、あるいはメンバーシップ型の方がよいのかといった検討もすべき段階にきているのではないか。
詳しくは上のリンク先参照ですが、もちろんジョブ型にせよ、メンバーシップ型にせよ、社会システムの問題であり、単なる意識の問題ではないので、それは頭に置いて読む必要はあります。
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